1. 蛇足 ( だそく )
余計なつけたし。無用のもの。
昔、楚(そ)の国で数名の者が酒を賭(かけ)にして、蛇(へび)を早く描(か)きあげる競争をした。
早くできた一人が得意になり、不必要な足まで描き加えたために、酒をもらいそこなったという故事。
2. 蛇に蛙 ( へびにかえる )
恐ろしいものや苦手の前に出て、身がすくんでても足も出なくなってしまうことのたとえ。
【参考】 「蛇ににらまれた蛙」ともいう。
3. 蛇の生殺し ( へびのなまごろし )
完全に生命が絶たれたわけではないが、回復の見込みもない状態に放っておかれること。
【例】 「人事異動で部署が変わり、蛇の生殺しにあったような状態だ」
4. 蛇の道は蛇 ( じゃのみちはへび )
大蛇の通る道は、蛇ならばおのずからわかるはずだ。
同じ仲間のことはその道の者にはすぐわかる。同類のものは互いにその事情に通じている、という意味。
【参考】 「蛇の道はくちなわが知る」ともいう。
5. 蛇ににらまれた蛙 ( へびににらまれたかえる )
圧倒的に強い相手の前で、恐ろしさのあまり体がすくんで動けなくなる様子。
【例】 「世界チャンピオンの前では、蛇ににらまれた蛙のように、いつもの実力が出せなかった」
【参考】 「蛇に見込まれた蛙」ともいう。
6. 蛇の足より人の足 ( へびのあしよりひとのあし )
足もとに気をつけよということ。
7. 蛇は寸にして人を呑む ( じゃはすんにしてひとをのむ )
大蛇は一寸くらいの小さいころから、自分よりはるかに大きな人間を呑むほどの勢いがある。
偉人や英雄は幼少の頃から常人と違った気概があるというたとえ。
【参考】 牛を食らうの気
8. 蛇に噛まれて朽縄におじる ( へびにかまれてくちなわにおじる )
蛇に噛みつかれてから、腐った縄を見ても怖がる、ということから、
危険な経験によって恐怖から病的になって、すっかり臆病になってしまうことをいう。
【類句】 羮に懲りて膾を吹く
9. 蛇は竹の筒に入れても真っすぐにならぬ
( へびはたけのつつにいれてもまっすぐにならぬ )
生まれつき精神の曲がっているものは、どんなにしても治しにくいこと。
10. 盲蛇に怖じず ( めくらへびにおじず )
盲人は、それが蛇だということがわからないから、ちっとも恐ろしがらない、ということから、
無知な者はどんなことにも恐れないで、向こう見ずなことを平気でやる、という意味。
【参考】 Fools rush in where angels fear to tread.
11. 竜頭蛇尾 ( りゅうとうだび )
頭は竜で尾は蛇、ということから、始めは勢いが盛んであるが、終わりは振るわないこと。
【例】 「始めた頃は頑張っていたが、次第にやらなくなり竜頭蛇尾となった」
【類句】 頭でっかちの尻すぼみ
12. 常山の蛇勢 ( じょうざんのじゃせい )
昔、中国の常山という山に卒然という蛇がいて、その頭を打てば尾が力を合わせてこれを防ぎ、
尾を打てば頭が加勢にき、胴を打てば頭と尾が一緒になってこれを防いだということから、
首尾相応じて攻防し、敵の乗ずるすきがないようにする陣法。
また文章が首尾照応して、各部分の関係が緊密で一貫しているものにもたとえる。
13. 杯中の蛇影 ( はいちゅうのだえい )
壁にかけてある角に彩色をして蛇の模様にしたものが、杯の中にうつったのを見て本物の蛇だと思い、
神経を病んで病気となったが、説明を聞いて納得し治った、という故事から、気に病むことのたとえ。
【類句】 疑心暗鬼を生ず
14. 草を打って蛇を驚かす ( くさをうってへびをおどろかす )
ある一人を懲らして、関係する他人の人を戒めること。また、何気なくなくしたことが意外な結果を招くたとえ。
15. 灰吹きから蛇が出る ( はいふきからじゃがでる )
意外な所から意外なものが出るたとえ。また小事から大事が生ずるたとえ。
道理上あり得ないことのたとえ。「灰吹き」はたばこのすいがらを入れる筒のこと。
16. 鬼が出るか蛇が出るか ( おにがでるかじゃがでるか )
次にどんな恐ろしい事態が起こるか予想がつかない。
17. 藪をつついて蛇を出す ( やぶをつついてへびをだす )
わざわざ藪をつついて蛇を追い出し、それに噛まれるような愚かなことをする、ということから、
余計なことをして、思わぬ災いを受けることをいう。
【参考】 「やぶへび」ともいう。
【例】 「それ以上言うと、藪をつついて蛇を出すことになるぞ」