91. 朝に夕べを慮られず ( あしたにゆうべをはかられず )
朝には夕方どうなるか考える事ができない。
いつどんな変化が起こるかわからず、生命が旦夕(たんせき)に迫っていることをいう。
92. 明日は明日の風が吹く ( あしたはあしたのかぜがふく )
明日は、今日の風とは違った明日の風が吹く。
明日には明日の運命があるから将来のことは気にしないで、現在を十分楽しむほうがよい、という意味。
【例】 「いつまでも失敗したことを考えていてもしかたがない。『明日は明日の風が吹く』だ」
93. 朝夕べに及ばず ( あしたゆうべにおよばず )
朝に夕方まで待っていられない。事柄が非常に切迫した状態をいう。
94. 足の裏の飯粒 ( あしのうらのめしつぶ )
足の裏にはりついた飯粒はなかなかとれない。じゃまでわずらわしいもののたとえ。
95. 足下から鳥が立つ ( あしもとからとりがたつ )
突然、身近なところに意外な事件が起こるたとえ。
また、急に思いついたように物事を始めるたとえにもいう。
96. 足下を見られる ( あしもとをみられる )
弱点を見抜かれてつけ込まれる。弱みをにぎられる。
【参考】 「足下を見る」ともいう。
【例】 「人気商品だということから、足下を見られて値引きしてくれなかった」
97. 足を知らずして靴を為る ( あしをしらずしてくつをつくる )
同じ種類のものは性質も共通する、という意味。
人の足の大きさには大差がないから、いちいち足の大きさを知らなくとも、靴を造ることができる。
98. 阿闍梨死して事欠けず ( あじゃりししてことかけず )
高僧が死んでも葬式に不自由はない。
高い地位にある人が死んでも、実際の仕事には影響のないこと。
99. 網代の魚 ( あじろのさかな )
自由を失うこと。捕らわれの身のたとえ。
網代は冬、川の瀬に竹や木を編んで立て、そのはしに簀をあてて下がってきた魚が簀の中に入るようにしたもの。
100. 明日ありと思う心の仇桜 ( あすありとおもうこころのあだざくら )
桜は明日もまだ美しく咲いているだろうと安心していると、その夜中に強い風が吹いて散ってしまうかもしれない。
人生もそれと同じで、明日にはどうなるかわからないから、頼みにしてはいけない、という世の無常を説いた戒め。
【参考】 下の句は「夜半(よわ)に嵐の吹かぬものかは」。親鸞上人(しんらんしょうにん)の作といわれる和歌。
101. 飛鳥川の淵瀬 ( あすかがわのふちせ )
飛鳥川(奈良県の中部を流れて、大和川に合流する小さな川)は、水流の変化がはなはだしく、
そのため深い所(淵)と、浅い所(瀬)とが変わりやすいことから、
世の中や人情が絶えず移り変わって、無情なさまをいう。
【参考】 『古今集』雑下の「世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬になる」という歌に基づく。
102. 明日知らぬ身 ( あすしらぬみ )
明日はどうなるかわからない無情のからだ。
103. 明日知らぬ世 ( あすしらぬよ )
世の中は遠い未来ばかりではなく、すぐ明日のこともどうなるかわからない。世の中の無情をいう語。
【類句】 明日ありと思う心の仇桜
104. 明日のことは明日案じよ ( あすのことはあすあんじよ )
この世の中のことは予想通りにならないのが常であるから、明日のことは今日あれこれと考えるより、明日になってから心配せよ。
将来の事を考えるよりは、現在をより充実させることが大切である、という意味。
105. 明日の百より今日の五十 ( あすのひゃくよりきょうのごじゅう )
明日になればくれるという百文の銭より、今日くれる五十文のほうがありがたい。わずかでも、差し迫っている今、もらうほうがよい。
また、明日はどうなるか分らないから、わずかでも、今、確実に手に入るほうがよいということ。
【類句】 後の百より今五十
106. 明日は我が身 ( あすはわがみ )
他人の苦しみや不幸を見て、自分もいつそのような境遇になるか分らないと思い、身につまされるという気持ちを表わす言葉。
【例】 「彼の家に泥棒が入ったらしいが、明日は我が身で、戸締まりはしっかりしておこう」
107. 小豆の豆腐 ( あずきのとうふ )
あるはずのないもの。ありえないもののたとえ。
小豆では豆腐はできない。空論などを戒める言葉。
108. 東男に京女 ( あずまおとこにきょうおんな )
男女のとりあわせは、男は関東、女は京都がよいという語。
威勢がよくて粋な江戸っ子に、美しくやさしい京女をとりあわせた。
109. 与えるは受けるより幸いなり ( あたえるはうけるよりさいわいなり )
人から恩恵を受ける境遇にあるよりは、人に恩恵を与えることのできる境遇にいることの方が幸福である。
【参考】 It is more blessed to give than to recieve. の訳語。
110. 当たった者の符の悪さ ( あたったもののふのわるさ )
当たった者が運が悪かったという意で、悪い事をしたのは大勢だったのに、
そのうちから少数が罰せられることなど、運の悪い場合をいう。
111. 頭隠して尻隠さず ( あたまかくしてしりかくさず )
雉は、首を草むらの中に隠しさえすれば、尾が丸見えでも平気でいる、ということから、
悪事や欠点を、自分では完全に隠したつもりでいても、その一部分が現れているのを知らないでいることをいう。
112. 頭剃るより心を剃れ ( あたまそるよりこころをそれ )
形式よりも精神が大切だということ。髪を剃り墨染めの衣を着て形ばかり僧侶になっても、
心に道心がなくてはなんにもならない。衣を染めるより心を染めよ。
113. 頭でっかち尻つぼみ ( あたまでっかちしりつぼみ )
初めは大きいが終わりは小さいこと。初めは威勢がいいが、終わりはだらしなくなること。
【類句】 竜頭蛇尾
114. 頭の上の蠅も追われぬ ( あたまのうえのはえもおわれぬ )
自分一身の始末もできないことをいう。
115. 頭の上の蠅を追え ( あたまのうえのはえをおえ )
人のおせっかいを焼くよりまず自分自身の始末をする方が大切であるということ。
【例】 「人のことはいいから、まず自分の頭の上の蠅を追え」
116. 頭の黒い鼠 ( あたまのくろいねずみ )
髪が黒いことから人間を鼠にたとえたもので、物がなくなった時などに、その家の関係者が盗んだのだという意を表わす。
【例】 「今回のことは、頭の黒い鼠のしわざだと思う」
117. 頭禿げても浮気はやまぬ ( あたまはげてもうわきはやまぬ )
いくら年をとっても道楽の癖はなおらない、という意味。
118. 新しい酒は新しい革袋に
( あたらしいさけはあたらしいかわぶくろに )
新しい考えや新しい内容は、新しい形式で表現することが必要であるという意味。
【参考】 「新しい酒」は、キリスト教の教え。「新しい革袋」は、腐敗した心を聖霊によって一新された信者の心。新約聖書にある言葉。
119. 中らずと雖も遠からず ( あたらずといえどもとおからず )
的中していないとはいえ、大した違いはない。ほぼ推測通りである。
120. 当たるも八卦当たらぬも八卦 ( あたるもはっけあたらぬもはっけ )
占いは当たる場合もあるし、当たらない場合もある。その当たり外れを必ずしも気にする必要はない、ということ。
ためしに試してみよ、という意にも使われる。