181. 過ちを改めざるこれを過ちという
( あやまちをあらためざるこれをあやまちという )
過失はやむを得ないが、過失を犯しても改めようとしないことこそ、真の過失というものである。
182. 過ちを観て仁を知る ( あやまちをみてじんをしる )
人の犯した過失を見て、その人が仁者か不仁者かがわかる。
たとえば、まじめすぎたり寛大すぎたりしたために犯した過失であれば、
かえってその人が仁者であることがわかる、ということ。
183. 荒馬の轡は前から取れ ( あらうまのくつわはまえからとれ )
思いきって正面からくつわをとれば、あばれ馬もおとなしくなる。
困難なことには小細工をせずに、堂々と正面からぶつかるのがよいということ。
184. 嵐の前の静けさ ( あらしのまえのしずけさ )
嵐が来る直前、一時風雨がおさまって静かになることから、
有事の前の、不気味なまでに静かで緊迫した状態のたとえ。
【例】 「明日からゴールデンウイークなので、今の閑散とした状況は嵐の前の静けさだ」
185. 新たに沐する者は必ず冠を弾く
( あらたにもくするものはかならずかんむりをはじく )
清廉潔白な人ほど、他から汚されることをきらうものである。「沐」は髪を洗うこと。
髪を洗ったばかりの者は必ず冠をはじいて、ちりを払ってからかぶる。
186. 蟻集まって木揺がす ( ありあつまってきゆるがす )
アリのような弱小な虫でも、たくさん集まれば木を動かすようになる。無力な群集でも恐ろしい。
また、無力なアリが集まっても木を揺るがすことはできない。身分不相応な望みにもたとえる。
187. 蟻の穴から堤も崩れる ( ありのあなからつつみももれる )
堅固な堤も、蟻のあける小さな穴がもとでこわれる。ほんの小さな欠陥を見逃したために、
取り返しのつかない結果となる。ごくわずかな手ぬかりから大事が起こるたとえ。
188. 蟻の思いも天に届く ( ありのおもいもてんにとどく )
弱小な者でも、一念を貫いて求め続ければ、やがては望みを達成できる、という意味。
【参考】 「蟻の思いも天に昇る」ともいう。
【類句】 蚤の息も天に上がる
189. 有る手からこぼれる ( あるてからこぼれる )
無い袖は振れないが、持っている手からは自然にこぼれる。
金持ちは施す気はなくても、なにかの恩恵を与えているものだ。おこぼれがあるもの。
190. 有る時払いの催促無し ( あるときばらいのさいそくなし )
借金を都合が付いたときに返せばよく、その間催促もしないという約束。
【例】 「友人から、有る時払いの催促無しでお金を借りた」
191. 合わせ物は離れ物 ( あわせものははれもの )
集めたりくっつけたりして作ったものは、いつかまた離れるものだ。
夫婦はもともと他人であったのだから、性格が合わないために離縁することもあることにいう。
192. 慌てる蟹は穴に入れぬ ( あわてるかにはあなにはいれぬ )
あわてると、ふだん慣れていることでも失敗することがある。
危急の時ほど落ちつくことが肝心だという戒め。
【類句】 慌てる乞食は貰いが少ない
193. 慌てる乞食は貰いが少ない ( あわてるこじきはもらいがすくない )
あわてることは失敗のもとである。
古くから言いならわされた言葉で、せっかちな人を戒めるのに用いる。
【類句】 慌てる蟹は穴に入れぬ
194. 合わぬ蓋あれば合う蓋あり ( あわぬふたあればあうふたあり )
誰にでも合うというわけにはいかないが、必ずどこかに合うところがある。
男女の仲も一つの因縁で合わぬ男女もあるが、合う男女もある。
気長にさがせば適した人がみつかる。職業にもいえることである。
195. 鮟鱇の待ち喰い ( あんこうのまちぐい )
少しも働かないで、じっとしていてごちそうだけありつくこと。
アンコウは進んでえさを求めようとせず、じっとして小魚がそばに来るのを待って捕らえて食べる。
196. 安心立命 ( あんしんりつめい )
天命にまかせて心を安らかにし、名声や利欲などに心を動かさないこと。
仏教語としては「あんじんりゅうめい」と読む。
【類句】 安心決定(あんじんけつじょう)
197. 鞍上人なく鞍下馬なし ( あんじょうひとなくあんかうまなし )
速く巧みに馬を乗り回すさま。乗り手と馬とが一つになり、区別がつかないようす。
乗馬だけに限らず、広く巧みな操作ぶりをたたえるのに用いる。
198. 案じるより団子汁 ( あんじるよりだんごじる )
いくら頭をひねったって、どうなるものでもない。くよくよするより団子汁でもすすれという意味。
199. 案ずるより生むが易い ( あんずるよりうむがやすい )
あれこれと心配するけれども、お産はそれほど難しいものではない。
物事はいざ実行してみれば、前もって心配していたよりは、案外たやすくうまくゆくものである、という意味。
取り越し苦労の必要はないと慰める時に用いる語。
200. 暗中的を射る ( あんちゅうまとをいる )
あたるかあたらないか。うまくいくかいかないか、わからないこと。
201. 暗中模索 ( あんちゅうもさく )
くらやみの中で手探りに物を探す。手掛かりのない物事をいろいろと探し求める意。
【参考】 「摸作」とも書く。
【例】 「この分野はあまり研究されていないので、まだ暗中模索の段階だ」
202. 安に居て危を思う ( あんにいてきをおもう )
平穏無事な時も、危難の起こった場合を考えて、常にその心構えをしていることの大切さをいう言葉。
203. 暗夜に灯失う ( あんやにともしびうしなう )
これから先どうしたらよいか、途方にくれること。
たよりにしていたものを失うこと。
204. 安を偸む ( あんをぬすむ )
将来に備える考えもなく、だらだらとその時だけの安逸(あんいつ)に身を任せること。
【参考】 「偸」はかりそめの意。