61. 明けた日は暮れる ( あけたひはくれる )
朝がくれば必ず夜がくる。よい時はいつまでも続かない。
盛の次は衰、楽の次は苦であるから、よい時でも自重せよという戒め。
62. 開けて悔しき玉手箱 ( あけてくやしきたまてばこ )
浦島太郎が竜宮の乙姫からもらった玉手箱を開けてみたら、中から白い煙が出てたちまち老人になったという話から、
期待がはずれてガッカリする、というたとえ。
63. 上げ膳据え膳 ( あげぜんすえぜん )
食事の膳を上げ下げして、もてなすこと。
非常に優遇することのたとえ。
64. 阿漕が浦に引く網 ( あこぎがうらにひくあみ )
かくしごともたび重なれば知れわたることのたとえ。
阿漕が浦は三重県津市一帯の海岸で、伊勢神宮に供進する魚を捕るために禁漁地とされていたが、
平次という漁師が、老母の難病にきくといわれているヤガラという魚を、禁を犯してたびたび捕ったために、
捕らえられて簀巻きにされてこの浦に沈められたという伝説がある。
65. 顎で背中を掻くよう ( あごでせなかをかくよう )
できないことのたとえ。不可能なこと。
66. 顎で蠅を追う ( あごではえをおう )
病人が手で蠅を追い払うこともできないほど衰弱しきった様子。
また、精力の消耗した人をいう。
67. 朝雨は女の腕まくり ( あさあめはおんなのうでまくり )
朝雨はすぐやむし、女の腕まくりもこわくはない。ともに、恐れるに足りないという意味。
68. 浅い川も深く渡れ ( あさいかわもふかくわたれ )
浅い川だからといって油断すると危ない。
浅い川でも深い川と同じように用心して渡らなければならない、という油断を戒めた言葉。
69. 朝謡は貧乏の相 ( あさうたいはびんぼうのそう )
朝から謡などをうたって遊んでいるようでは、貧乏になるという戒め。
70. 朝神主の夕坊主 ( あさかんぬしのゆうぼうず )
朝は神主に会い、夕方は坊主に会う。会って縁起のよいもの。
71. 朝顔の花一時 ( あさがおのはなひととき )
「朝顔」の花は、むくげ(槿花)のこと。
【参考】 槿花一日の栄
72. 朝駈けの駄賃 ( あさがけのだちん )
朝のうちは馬は元気がよく荷物を少し多くしても苦にしないことから、朝は物事がたやすくできる。
また午前中は能率があがることのたとえ。
73. 朝酒は門田を売っても飲め ( あさざけはかどたをうってものめ )
朝酒はいちばんよい田を売っても飲む価値があると、朝酒のうまさを礼賛した言葉。
門田は家の前にあるよい田。
74. 浅瀬に仇浪 ( あさせにあだなみ )
川の浅瀬には波が立ち、深いところには波が立たない。
考えの浅い者ほど、口数多く騒ぎ立てる、という意味。
【類句】 空き樽は音が高い
75. 朝題目に宵念仏 ( あさだいもくによいねんぶつ )
朝は日蓮宗の題目「南無妙法蓮華経」を唱え、夕方は念仏宗の念仏「南無阿弥陀仏」を唱える。
ちゃんとした考えをもっていないことのたとえ。
【参考】 「朝題目に夕念仏」ともいう。
76. 朝茶は七里帰っても飲め ( あさちゃはしちりかえってものめ )
朝茶を飲めば福が来るとか、その日の災難をのがれるといわれているので、
朝茶を飲むのを忘れて旅立ったら、七里の道をもどっても飲めの意。
77. 朝でたちんばには追いつかぬ ( あさでたちんばにはおいつかぬ )
能力は劣っていても、つねに努力を続ければ、能力の優れている者よりも良い成績をあげられる、という意味。
78. 朝鳶に蓑を着よ夕鳶に笠をぬげ
( あさとびにみのをきよゆうとびにかさをぬげ )
朝トビの舞うのは雨、夕方トビの舞うのは晴れのしるし。
79. 朝虹は雨夕虹は晴 ( あさにじはあめゆうにじははれ )
朝虹が立ったら雨が降る、夕虹は晴れるという天候判断。
80. 朝寝坊の宵っ張り ( あさねぼうのよいっぱり )
朝寝坊をする人は、夜になると目がさえて眠れない。宵っ張りが朝寝坊になる、という意味。
81. 麻の中の蓬 ( あさのなかのよもぎ )
麻はまっすぐに伸びるから、曲がりやすい蓬もその中に生えれば、自然にまっすぐ伸びるようになる。
善良な友人と交われば、その感化で自然に善人になる、という意味。
【参考】 蓬麻中に生ずれば扶けずして直し
82. 朝の一時は晩の二時に当たる
( あさのひとときはばんのふたときにあたる )
朝は仕事がはかどるので、朝の一時間は夜業の二時間に当たる。
夜なべの倍の仕事ができる。
83. 朝跳ねの夕びっこ ( あさはねのゆうびっこ )
朝のうち元気にまかせてはねまわっていると、夕方には疲れてびっこを引くようになる。
仕事の経験のない者ははじめのうちは力にまかせてするので、しまいには疲れて終わりまでやり通せないこと。
84. 朝飯前のお茶漬け ( あさめしまえのおちゃづけ )
食事のうちで、一番かんたんなのは茶漬け。かんたんにできることをいう。
85. 薊の花も一盛り ( あざみのはなもひとさかり )
アザミのように人にすかれない花にも、花盛りがあって美しくなる。
容ぼうがよくなくても年ごろになれば魅力がでるもので、人間の運にも必ず盛りがあるものである。
86. 足寒うして心を痛む ( あしさむうしてしんをいたむ )
わざわいは下の者の不平から起きることのたとえ。
現在では、足を冷やすと心臓に悪いという意味に使う。
87. 朝に紅顔あって夕べに白骨となる
( あしたにこうがんあってゆうべにはっこつとなる )
世の中は無情で、人の生死が予測できないことをいう。
朝、元気で若々しい顔をしていた人が夕方には急死して、火葬にされて白骨になってしまうようなことがある。
88. 朝には富児の門を扣き暮には肥馬の塵に随う
( あしたにはふじのもんをたたきゆうべにはひばのちりにしたがう )
朝はごきげん伺いに金持ちの家を訪ね、夕方は肥えた馬に乗って外出する権勢のある人の後ろからほこりをあびてお供をする。
富貴権門にとりいろうとお追従するさまをいう。
89. 朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり
( あしたにみちをきかばゆうべにしすともかなり )
朝、道理を聞いて悟ることができたら、その晩に死んでもかまわない。人の道のいかに尊いかを説いたもの。
一説に、天下に道が行われ、社会の秩序が回復したと聞きさえしたら、死んでもよい、と解釈する。
90. 朝に夕べを謀らず ( あしたにゆうべをはからず )
朝には夕刻のことを考えない。長い先のことは考えていない、という意味。