121. 寇に兵を藉し盗に糧を齎す
( あだにへいをかしとうにかてをもたらす )
敵に武器を供給したり、盗賊に食料を持って行ったりしてやる。敵側に利益になるように図ること。利敵行為。
転じて、悪人が悪事を行うのに都合のよい口実を与えてやる意にも使われる。
【参考】 これは、秦で他国出身者を放逐する法令を出そうとした時、楚国出身の李斯(りし)が、
それは優秀な人材を敵国に行かせる利敵行為になるといって反対した時の言葉。
122. 徒花に実は成らぬ ( あだばなにみはならぬ )
雄花に実は成らない。着実生を欠く計画は成功しない。
見掛けがよくても真の値打ちのないものは、立派な成果を上げることはできない、という意味。
123. 仇も情けも我が身より出る ( あだもなさけもわがみよりでる )
人から憎まれたり愛されたり尊敬されたりするのも、それはすべて自分の心がけや行いから出たもので、
みずからが招いたものであるということ。
124. 仇を恩にして報ずる ( あだをおんにしてほうずる )
うらむべき相手に対して、かえって情をかける。
【参考】 「恩を仇で返す」はこの反対。
125. 彼方立てれば此方が立たぬ ( あちらたてればこちらがたたぬ )
一方をよいようにすれば他方には悪く、両方同時によいことはない。
物事は両立しにくい、という意味。
126. 悪貨は良貨を駆逐する ( あっかはりょうかをくちくする )
良質の通貨は一度手に入ると手離さず、支払いには悪質の貨幣だけが使われる。
したがっていくら良貨を発行しても流通せず、悪貨だけが市場に出まわるようになる。
【参考】 有名なグレシャムの法則。
127. 圧巻 ( あっかん )
書物や催し物、あるいは広く物事などの中で、最もすぐれている部分をいう。
昔、官吏登用試験(科挙)の時、最優秀の答案を、他の答案の一番上に載せた。
つまり他の巻を圧することから出た語。
128. 会ったときは笠を脱げ ( あったときはかさをぬげ )
道で知っている人に会ったら、笠を脱いであいさつせよ。
うまくつかんだ機会は逃さないようにせよ、という意味。
129. 有っても苦労無くても苦労 ( あってもくろうなくてもくろう )
金と子供とはあればあるで苦労の種であるし無ければ無いでまた苦労する。
130. 暑さ寒さも彼岸まで ( あつささむさもひがんまで )
暑さも秋の彼岸になれば衰え、寒さも春の彼岸になれば薄らぎ、やがて穏やかな気候になる、ということ。
131. 暑さ忘れれば陰忘れる ( あつさわすれればかげわすれる )
暑さが去るとともに、日陰を作ってくれるもののありがたみを忘れる。
受けた恩を忘れることは早いものである、という意味。
【類句】 雨霽れて傘を忘れる
132. 集めて大成す ( あつめてたいせいす )
多くの物を広く集めて、一つのものにまとめあげること。また、まとめあげたもの。
【参考】 もとは音楽上の言葉で、多くの楽器の音をうまく調和させて合奏する意。「集大成」ともいう。
133. 羮に懲りて膾を吹く ( あつものにこりてなますをふく )
「羮」はスープの類、「膾」は生肉を細かく切った刺身の類。
熱い汁で口にやけどをしたのに懲りて、刺身までも吹いて食べることから、
一度失敗したのに懲りて、用心し過ぎるたとえ。
【類句】 蛇に噛まれて朽ち縄におじる
134. 当て事は向こうから外れる ( あてごとはむこうからはずれる )
「当て事」は、頼みにしていることで、こちらが当てにしたことは、無効の都合で外れることが多い。
【参考】 「当て事と越中褌(えっちゅうふんどし)は向こうから外れる」ともいう。
135. 後から剥げる正月言葉 ( あとからはげるしょうがつことば )
よそ行きのおせじや、うわべだけを飾ったおべっかは、あとからすぐ正体がばれるということ。
正月言葉は礼儀正しい、いつも使いつけない言葉。
136. 後の雁が先になる ( あとのかりがさきになる )
雁が列をなして飛んでいく時、後を飛んでいた雁が先の雁を追い越すこと。
後から送れてきたものが先のものを追い越す。油断すれば後から来るものに追い越される、という意味。
また、若い者が先に死ぬことなどについてもいう。
137. 後の喧嘩はゆっくりとせよ ( あとのけんかはゆっくりとせよ )
こまかいことは後まわしにして、まず大事なことを決めて着手せよ。
事前に細事について論議していたのでは事がはこばない。
138. 後は野となれ山となれ ( あとはのとなれやまとなれ )
当面の問題さえうまく処理がつけば、後のことはどうなってもかまわないということ。
【参考】 「末は野となれ山となれ」ともいう。
【例】 「とりあえずこれを完成させてしまえば、後は野となれ山となれだ」
139. 後腹が病める ( あとばらがやめる )
出産したあとの腹痛。物事が済んだ後でも、何かと障害があって苦しむことにいう。
140. 阿堵物 ( あとぶつ )
銭をいう。「阿堵」は六朝(りくちょう)時代の俗語で、「この」という意味。
晋の王衍(おうえん)は銭という言葉を口にせず、「阿堵物(このもの)」といった故事に基づく。
141. 後へも先へも行かぬ ( あとへもさきへもいかぬ )
進むことも退くこともできない、進退きわまること。
にっちもさっちも行かぬ。万策尽きる。
142. 穴蔵で雷聞く ( あなぐらでかみなりきく )
おかしいほど用心することのたとえ。
143. 穴の狢を値段する ( あなのむじなをねだんする )
まだつかまえもしない穴の中にいるムジナを捕えたように値段を相談して喜ぶこと。
あてにならぬことをあてにする愚かさを笑った言葉。
144. 穴を掘って言い入る ( あなをほっていいいる )
くやしいことや悲しいことなど、人に話せないようなことを土に穴を掘って、
人に聞かれないように思いきり言って気を晴らすこと。
145. 姉女房は身代の薬 ( あねにょうぼうはしんだいのくすり )
夫より年上の妻君は、夫より世間に通じているから、家政が上手で財産をふやすのでよいということ。
146. あの声で蜥蜴くらうか時鳥 ( あのこえでとかげくらうかほととぎす )
やさしい、あわれな声で鳴くホトトギスが、毛虫やトカゲなどの悪食をするとは?
人の容貌の美しさや性行などは、見かけによらないものだということ。
147. 痘痕も靨 ( あばたもえくぼ )
相手に惚れこんでしまうと、みにくい痘痕もかわいいえくぼに見えるように、欠点でも美点に見えるものである。
【参考】 「痘痕」は天然痘(てんねんとう)がなおって顔に残った跡。
148. 阿鼻叫喚 ( あびきょうかん )
非常にむごたらしい状態に陥って、救いを求めて叫び声をあげる形容。
もともと、仏教で八大地獄の一つである、阿鼻地獄に落ちた者があげる苦しみの叫び。
149. あぶない事は怪我のうち ( あぶないことはけがのうち )
あぶない事は怪我をするもとで、怪我と同じであるから、危険なことには近づかないほうが安全だ。
150. 危ない橋も一度は渡れ ( あぶないはしもいちどはわたれ )
何事も安全・慎重なだけではだめである。時には危険を冒すことも必要である。
【類句】 虎穴に入らずんば虎子を得ず