1. 秋財布に春袋 ( あきざいふにはるぶくろ )
秋に財布を縫うのは空き(から)に通じてよくない、春は張る(みちる)だから、春縫う袋は縁起がよい。
2. 一場の春夢 ( いちじょうのしゅんむ )
「一場」は、その場だけの意で、人生のはかないことのたとえ。
人間の栄枯盛衰は、春の夜の夢のように極めてはかないものである、という意味。
3. けい蛄春秋を知らず ( けいこしゅんじゅうをしらず )
ひぐらしは夏の間だけ生きている短い命だから、春や秋の季節を知らないということから、
生命のきわめて短いことのたとえ。また、世間知らずのたとえ。けいこは夏ぜみ、むぎわらぜみ。ひぐらし。
4. 春宵一刻値千金 ( しゅんしょういっこくあたいせんきん )
春の夜は何ともいえぬよいものであって、その興趣(きょうしゅ)は短い時間が一千金にも相当する。「宵」は夜の意味。
5. 春秋に富む ( しゅんじゅうにとむ )
年が若いこと。将来が長いこと。
これから先の春秋(年月の意味)がたくさんあるという意。
【参考】 「春秋鼎(まさ)に盛んなり」ともいう。
6. 春秋の筆法 ( しゅんじゅうのひっぽう )
孔子が編纂(へんさん)したといわれる『春秋』に見られる独特な論理に基づいた歴史批判から、
間接の原因としかなり得ない些細(ささい)なことも大事に結びつく直接の原因として述べる表現形式。
また、そのような表現形式を通して示される厳正な批判。
7. 春氷を渉る ( しゅんひょうをわたる )
春先の氷はいつ割れるかわからない。
その上をわたるのは、危険千万だ。非常に危険なことのたとえ。
8. 春風の中に坐するが如し ( しゅんぷうのなかにざするがごとし )
慈愛あふれる良師の感化を受けること。
9. 春眠暁を覚えず ( しゅんみんあかつきをおぼえず )
春の夜は寝心地がよく、夜明けも知らず眠り続ける。
10. 春蘭秋菊ともに廃すべからず
( しゅんらんしゅうきくともにはいすべからず )
両者ともにすぐれていて、どちらも捨てがたいことをいう。
春の蘭と、秋の菊とどちらも優劣をつけがたいことから。
11. 年寄りの達者は春の雪 ( としよりのたっしゃははるのゆき )
年寄りの丈夫なのは、春の雪の消えやすいのと同じで、あてにならないことをいう。
12. 花咲く春にあう ( はなさくはるにあう )
時にめぐりあって世に出ること。
今まで認められなかったものがようやく世に出て手腕を発揮するようになること。
13. 春植えざれば秋実らず ( はるうえざればあきみのらず )
なんにもしないのによい報いを期待してもだめである。春には必ず種をまくのは鉄則である。
原因のないところに結果があるはずがない。
14. 一人娘と春の日はくれそうでくれぬ
( ひとりむすめとはるのひはくれそうでくれぬ )
ひとり娘は親が惜しがってなかなか嫁にやらないということ。
15. 冬来たりなば春遠からじ ( ふゆきたりなばはるとおからじ )
暗い冬のあとに、やがて明るい春が来るのは天地の理である。
現在は不幸でも、前途には明るい希望が見えているから元気を出そう、という励ましの意に使う。
【参考】 英国の詩人シェリーの「西風に寄する歌」に、If Winter comes, can Spring be far behind? とある。
16. 我が世の春 ( わがよのはる )
物事がすべて順調にいき、得意の絶頂にある時期。
【例】 「高校生の頃が今にして思えば我が世の春だったなあ」
17. 明日ありと思う心の仇桜 ( あすありとおもうこころのあだざくら )
桜は明日もまだ美しく咲いているだろうと安心していると、その夜中に強い風が吹いて散ってしまうかもしれない。
人生もそれと同じで、明日にはどうなるかわからないから、頼みにしてはいけない、という世の無常を説いた戒め。
【参考】 下の句は「夜半(よわ)に嵐の吹かぬものかは」。親鸞上人(しんらんしょうにん)の作といわれる和歌。
18. 桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿 ( さくらきるばかうめきらぬばか )
桜と梅の剪定法を教える言葉。桜は枝や幹を切るとそこから腐りやすいので切ってはいけないが、
梅は切らないとむだな枝が伸びて翌年花が咲かなくなる。
19. 花は桜木人は武士 ( はなはさくらぎひとはぶし )
花の中では桜が最もすぐれているように、士農工商と言われる通り、人の中では武士が最もすぐれている。
【参考】 「花は三吉野人(みよしの)は武士」ともいう。
20. 三日見ぬ間の桜 ( みっかみぬまのさくら )
たった三日間見ない間に、つぼみであった桜は満開になってしまい、満開の桜は散ってしまう。
物事の状態がわずかな間にどんどん変化する。また、この世のはかないことをいう。