1. 鶏肋 ( けいろく )
大して役には立たないが、捨てるには惜しいもの。
鶏のあばらの骨は食べるほどの肉はないが、捨ててしまうには惜しい気がする、ということ。
2. 鶏鳴狗盗 ( けいめいくとう )
いやしくつまらない者。鶏の鳴きまねをする人と、犬のようにこそこそと人の物を盗む人。
戦国時代に斉の孟嘗君(もうしょうくん)が、秦の昭王のとりことなった時、
すでに王に贈ってあった狐の白裘(はくきゅう。狐の腋の白毛皮で作ったかわごろも)を、
狗のまねをする食客に盗み出させて、王の寵姫(ちょうき)に献じて釈放され、逃げて函谷関(かんこくかん)に来たが、
深夜のため関は閉ざされていて、鶏が鳴かねば門は開かれなかった。従者の中に鶏の鳴きまねの上手な者がおり、
鶏の鳴きまねをすると、あたりの鶏どもが鳴き出したので、関門が開かれ、通過して脱出することが出来た、という故事。
3. 鶏群の一鶴 ( けいぐんのいっかく )
沢山の鶏の中に一羽の鶴がいると目立つことから、凡人の中に傑出した人が混じって、きわだって見えるたとえ。
【参考】 「野鶴の鶏群に在るが如し」ともいう。
4. 鶏口となる牛後となる勿れ ( けいこうとなるぎゅうごとなるなかれ )
大きな団体で、しりに付いているよりも、小さな団体でもその長となれという意味で、人に従属するよりも独立した方がよいというたとえ。
5. 鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん
( にわとりをさくにいずくんぞぎゅうとうをもちいん )
鶏を料理するのに、どうして牛を料理する大きな包丁などを用いる必要があろうか。
小さなことを処理するには大がかりな方法を用いる必要はない、という意味。
6. 鶏寒うして木に登り鴨寒うして水に入る
( にわとりさむうしてきにのぼりかもさむうしてみずにいる )
物によってはおのおの違う性質に基づいて行動するというたとえ。
7. 鶏をして夜を司らしめ狸をして鼠を執らしむ
( にわとりをしてよるをつかさどらしめりをしてねずみをとらしむ )
鶏にあしたの時を告げさせ、夜はねこにねずみを捕らせるということ。
才能に応じて人も使うほうがよいというたとえ。「狸」はねこの異名。
8. 家鶏を厭いて野雉を愛す ( かけいをいといてやちをあいす )
家に飼っている鶏をきらって、野生のきじを珍しがる。
よいものを粗末にして悪いものを大事にするたとえで、珍しい物を珍重する愚を戒めた言葉。
9. 牝鶏の晨す ( ひんけいのあしたす )
牝鶏(めんどり)が時をつくるのは、昔は、家や国家が滅びる前ぶれであり、不吉なこととした、
といういことから、女が勢力を振るうことのたとえ。
【参考】 「晨す」は、鶏が夜明けを告げて鳴くこと。
10. 函谷関の鶏鳴 ( かんこくかんのけいめい )
奇策を用いて危機を脱出すること。
斉の孟嘗君は秦の昭王に招かれて行って計略のために幽閉されたが、狗盗(こそ泥)の働きによって助けられて脱出し、
国境の函谷関まできた。まだ夜は明けないし、ぐずぐずすると追手に捕えられる。
この関所の門は一番鶏が鳴くと開けられるので、鶏の鳴き声のまねの得意なものがいて、
鳴き声をまねたところ、近くの鶏がみんな鳴きだしたので、門は開かれて一行は脱出することができたという故事。
函谷関は戦国時代に秦が設けた関所で、今の河南省霊宝県の西南にあり、高原で地形が険しいので知られている。
【参考】 鶏鳴狗盗