216. 駿河の富士と一里塚 ( するがのふじといちりづか )
比べものにならないこと。とうてい及ばないことのたとえ。
217. 産屋の風邪は一生つく ( うぶやのかぜはいっしょうつく )
赤ん坊のときに風邪をひかせると気管を悪くして、一生風邪をひきやすくなる。
幼い時についたくせはなかなかなおらないものであること。
218. 百日の説法屁一つ ( ひゃくにちのせっぽうへひとつ )
百日間の厳粛な説教が、説教者の漏らした一つのおならでぶちこわしになる。
長い間の苦心が、わずかなしくじりでだめになってしまう、という意味。
【類句】 九仞の功を一簣に虧く
219. 雀の千声鶴の一声 ( すずめのせんこえつるのひとこえ )
つまらぬ者の千言より、すぐれた人の一言の方がずっと価値があること。
中心人物が一言いえばおさまることのたとえ。
220. 百年の歓楽も一日にみつる
( ひゃくねんのかんらくもいちにちにみつる )
百年もの永い歓楽でも、たった一日で尽きてしまうということで、栄枯盛衰、世のならいをいったもの。
221. 人は十歳木は一丈 ( ひとはじゅっさいきはいちじょう )
人は十歳くらいになればその子の将来がだいたいわかるものでる。
木でも一丈(約3メートル)にもなれば、これからどんなに伸びるか見当がつく。
222. 心は二つ身は一つ ( こころはふたつみはひとつ )
あれこれと、二つのことを望んでいるが、体は一つで、どうにもならない。
【類句】 二兎を追う者は一兎をも得ず
223. 泣いて暮らすも一生 笑って暮らすも一生
( ないてくらすもいっしょう わらってくらすもいっしょう )
つらいことを泣き、楽しいことを笑うのは人情である。同じ一生を送るのに、
たとえつらい人生であっても、笑って過ごせるなら、泣いて暮らすよりは笑って暮らすほうがはるかによい。
224. 何処で暮らすも一生 ( どこでくらすもいっしょう )
どんな寂しい田舎で暮らすのも、にぎやかな都会で暮らすのも一生は一生である。
つまり同じことなら住みよい所に住むほうが得である。
225. 二兎を追う者は一兎をも得ず ( にとおうものはいっとをもえず )
二匹の兎を同時に捕まえようと追いかけても、結局一匹も捕まえられなくなる。
同時に異なった二つのことをしようと欲張っても、どちらもうまく行かないものである、という意味。
【参考】 ローマの古いことわざ。
【参考】 If you run after two hares, you will catch neither.
【類句】 虻蜂取らず
226. 借りる八合済す一升 ( かりるはちごうなすいっしょう )
米を八合借りたら一升にして返せ。
借りた物には利息をつけるかお礼を添えて返すのが借りた人の心得だということ。
【参考】 「済す」は返済すること。
227. 大山鳴動して鼠一匹 ( たいざんめいどうしてねずみいっぴき )
一大事だと前宣伝が大きく、あれこれ騒ぎ立てた割には、たいした結果にならなかった様子。
【参考】 「大山」は「泰山」とも書く。
【例】 「制作費数十億円といわれた映画も、大山鳴動して鼠一匹、興行収入は大したことなかった」
228. 三度の火事より一度の後家 ( さんどのかじよりいちどのごけ )
三度火事にあって家を失うよりも、一回だけでも配偶者に死なれるほうが、もっと不孝である。
229. 下手な鍛冶屋も一度は名剣 ( へたなかじやもいちどはめいけん )
沢山の中には、まぐれでよい物もできるということ。
230. 起きて半畳寝て一畳 ( おきてはんじょうねていちじょう )
どんなに立派な御殿に住んだところで、人ひとりが占める場所は、せいぜい半畳か一畳であることから、
貧乏暮らしだって同じこと、富貴を望んでもつまらない、という意味。
【参考】 「起きて三尺寝て六尺」ともいう。
231. 大廈の顛れんとするや一木の支うるところに非ず
( たいかのたおれんとするやいちぼくのささうるところにあらず )
国家が滅びそうになった時には、一人の力ではどうすることもできないたとえ。
「大廈」は大きな建物。大きな家が倒れそうな時には、とても一本のつっかい棒で支えられるものではない、という意味。
232. 食い物と念仏は一口ずつ ( くいものとねんぶつはひとくちずつ )
念仏はみんなが一口ずつでも唱えるように、食べ物も一口ずつでもみんなでわけて食べるのがよい、ということ。
233. 千丈の堤も蟻の一穴から
( せんじょうのつつみもありのいっけつから )
一丈は十尺、一尺は三十センチ。ほんのちょっとしたことがもとで、とんでもない大事が起こる、という意味。
【参考】 「千丈の堤もろう蟻の穴を以て潰ゆ」ともいう。
【類句】 蟻の穴から堤も崩れる
234. 浮世の苦楽は壁一重 ( うきよのくらくはかべひとえ )
人生の苦楽は変転きわまりのないものであるから、悲観も楽観も禁物である。
235. 隣の馬も借りたら一日 ( となりのうまもかりたらいちにち )
借りたら借りついでに思う存分使って返すことで、借り得だということ。
236. 中流に舟を失えば一壺も千金
( ちゅうりゅうにふねをうしなえばいっこもせんきん )
流れの中央で舟が難破すると、日ごろはあまり値打ちのないつぼでさえ、浮き袋の代用となって、大事な人命を救うことができる。
つまらぬものでも、時と場合によっては、平素の何倍もの値打ちが出ること。
237. 誰でも自分の荷が一番重いと思う
( だれでもじぶんのにがいちばんおもいとおもう )
他人の仕事はみんな楽な仕事に見えるが、やってみれば案外自分の仕事よりむずかしいものだ。
【参考】 Every one thinks his sack heaviest. の訳語。
238. 人の十難より我が一難 ( ひとのじゅうなんよりわがいちなん )
他人の大難はさして気にもとめないが、自分のことだとわずかなことでも大問題としてさわぎたてる。
239. 夫の心と川の瀬は一夜に変わる
( おっとのこころとかわのせはいちやにかわる )
男の愛情の変わりやすいことのたとえ。
240. 下手な大工で飲み一丁 ( へたなだいくでのみいちょう )
酒を飲むだけが芸で、他に何も取り柄がない、ということ。「鑿(のみ)」を「飲み」にかけたしゃれ。
241. 君子は九度思いて一度言う ( くんしはくたびおもいていちどいう )
君子はよく考えてから言う。それで言うことは少ない。口数は少ない。
242. 人の命は万宝の第一 ( ひとのいのちはばんぽうのだいいち )
人の命より貴いものはない。
243. 門松は冥土の旅の一里塚
( かどまつはめいどのたびのいちりづか )
門松は正月を祝うめでたい印であるが、正月を迎えるごとに年を取って死に近づくともいえるので、
門松は死への一里塚のようなものである。「一里塚」は、昔、街道に一里(約四キロ)ごとに土を高く盛り、
榎(えのき)などを植えて里程の目標とした塚。
【参考】 一休和尚(いっきゅうおしょう)の狂歌で「めでたくもありめでたくもなし」と続く。
244. 千金を買う市あれど一文字を買う店なし
( せんきんをかういちあれどいちもんじをかうみせなし )
市にはなんでも売っていて、千金の買い物もできるが、文字を売っている店はない。
だから文字は、自分で学ぶよりほかない。
245. 惚れて通えば千里も一里 ( ほれてかよえばせんりもいちり )
恋人に逢いたい一心は、道の遠いことなどを問題にしない、ということから、
好きですることは、少しも苦労に感じない、というたとえ。
246. 長者の万灯より貧者の一灯
( ちょうじゃのまんとうよりひんじゃのいっとう )
長者のささげる万の灯明(とうみょう)よりも、貧乏人が精一杯にささげる、たった一つの灯明のほうを仏様はお喜びになる。
金持ちの儀礼的なたくさんのささげ物よりも、貧しい人の真心のこもったささげ物は、たとえわずかでも価値がある、という意味。
【参考】 「貧者の一灯」ともいう。
247. 親の意見と茄子の花は千に一つもむだはない
( おやのいけんとなすびのはなはせんにひとつもむだはない )
茄子にはむだ花がなく、花が咲くと必ず実がなるように、親が子にする意見には決してむだがない。
【類句】 冷や酒と親の意見は後できく