153. 虚仮の一念 ( こけのいちねん )
「虚仮」は愚かなことの意で、愚かな者でも一心にやれば成し遂げられるものだということ。
154. 知行合一 ( ちこうごういつ )
真に知ることは必ず実行が伴わなければならず、知と行とは表裏一体で、別ものではないということ。
【参考】 明の王陽明が唱えた学説。
155. 小坊主一人に天狗八人 ( こぼうずひとりにてんぐはちにん )
ひとりの弱い者に大勢の強い者が立ち向かうことで、力の釣り合いがとれないたとえ。
156. 愚者も一得 ( ぐしゃもいっとく )
愚か者の考えにも、一つぐらいは良い考えがある。
157. 貧者の一灯 ( ひんじゃのいっとう )
貧者が苦しい生活の中から真心をこめて供える一本の灯明の方が、世間に対する見栄でする長者の万灯よりも尊い、という意から、
寄付などで、わずかな金額でも真心がこもっていることが大切だということ。
【参考】 長者の万灯より貧者の一灯
【例】 「貧者の一灯に過ぎないが、福祉施設建設の一助になれば幸いだ」
158. 千慮の一得 ( せんりょのいっとく )
愚かな人でも多くの考えの中には一つや二つのよい考えがある。
159. 千里も一里 ( せんりもいちり )
恋しい人のところに会いに行く時は、どんな遠い所も短く感じられて苦にならない。
「惚れて通えば千里も一里、会わず帰ればまた千里」という俗謡による。
160. 百聞は一見にしかず ( ひゃくぶんはいっけんにしかず )
人の話を何度も聞くよりも、一度実際に自分の目で見たほうがよい、という意味。
【例】 「ここで説明するより、百聞は一見にしかずで、見に行けばわかるよ」
161. 粥腹も一時 ( かゆばらもいっとき )
かゆのように力にならぬものでも、食べておけば一時しのぎの役にたつことから、急場の間に合わせのたとえ。
162. 茶腹も一時 ( ちゃばらもいっとき )
お茶を飲んだだけでもしばらくは空腹をしのげる。
少しばかりのものでも、口に入れれば一時しのぎにはなる、ということ。
163. するは一時名は末代 ( するはいちじなはまつだい )
なすべき事はきちんとしなければならないということ。
事をなすための苦労は一時のことだが、しなかったための不名誉は永久に残る。
164. 猫の子一匹いない ( ねこのこいっぴきいない )
どこを探したってだれもいない様子。
【例】 「今日は大吹雪で、繁華街には猫の子一匹いない」
165. 騏驥も一躍十歩なる能わず ( ききもいちやくじっぽなるあたわず )
駿馬も一とびが十歩ではない、一歩は一歩である。
賢者でも学問をするには順序を追って進まなければならない。
166. 今日の一針明日の十針 ( きょうのひとはりあすのじゅっはり )
今日一針ですむほころびは、あすは十針も縫わなければならなくなる。
その時しておかないとあとで苦労すること。手遅れになると苦労することのたとえ。
167. 親子は一世 ( おやこはいっせ )
親子の関係は、この世代だけに限られるものである。
【参考】 「親子は一世、夫婦は二世、主従は三世」と使う。
168. 下種の一寸のろまの三寸馬鹿の明けっ放し
( げすのいっすんのろまのさんずんばかのあけっぱなし )
戸や障子をしめる時、下種は一寸ほど残し、のろまは三寸ほど残し、愚か者は明けっ放しにしたままにする。
それによって人の注意力や品格の劣っていることがわかる、という意味。
【参考】 「一寸」は約三センチ。「馬鹿の三寸間抜けの一寸」ともいう。
169. 役者が一枚上 ( やくしゃがいちまいうえ )
相手と比べて、身の処し方や駆け引きが一段と上手なこと。
【例】 「彼の方が役者が一枚上なので、いつもやられてばかりだ」
170. 明主は一顰一笑を愛しむ ( めいしゅはいっぴんいっしょうをおしむ )
臣下は主君の顔色をうかがって気に入ろうとつとめるものであるから、
明君たるものは顔をしかめたり、笑ったりするような、喜憂の色を軽々しく示さないこと。
韓の昭侯がやぶれた袴をしまっておいたのを、臣下がなぜそれを下賜されないかと尋ねたとき、
「明君は一顰一笑を愛しむというから弊袴といっても軽々しく与えることではできない。真に有功の者に与えよう」
と答えたという「韓非子」の故事による。
171. 百芸は一芸の精しきに如かず
( ひゃくげいはいちげいのくわしきにしかず )
いろいろな沢山の芸ができるよりも、たった一つでもよいから、名人芸をもったほうがよいということ。
172. 正直は一生の宝 ( しょうじきはいっしょうのたから )
正直にしていると他からの信用を得るのみならず、自ら精神的にも満ち足りるから、
正直という美徳は一生守るべき宝である。
【参考】 Honesty is the best policy.
173. 地獄の一丁目 ( じごくのいっちょうめ )
苦しみにおちいった第一歩。破滅に向かった矢先のこと。
174. 堪忍は一生の宝 ( かんにんはいっしょうのたから )
忍耐することは幸福の基で、その人の一生の宝である。
175. 老いの一徹 ( おいのいってつ )
老人の、一度思い定めたらどうしてもそれを通そうとする頑固な性質。
176. 直すは一時見るは末代 ( なおすはいっときみるはまつだい )
何事にもかかわらず、一時の苦労を惜しまず正しく直しておけば、人は永久にこれをほめるに違いないということ。
177. 滄海の一粟 ( そうかいのいちぞく )
大海中の一粒のあわの意から、広大なものの中の、きわめて小さいもの。
宇宙における人間の存在など、はかないことにたとえる。
178. 男子の一言金鉄の如し ( だんしのいちごんきんてつのごとし )
男が一たび口にした言葉や約束事は、金や鉄のように堅く、絶対に守らなければならない。
179. 蜉蝣の一期 ( ふゆうのいちご )
人の命のはかないことのたとえ。
「蜉蝣」はかげろうのことで、かげろうの一生は、朝生まれて夕方には死ぬほどのはかないものだが、人の一生もそれと選ぶところがない。
180. 頂門の一針 ( ちょうもんのいっしん )
頭の上に針をさす、ということから、人の痛い所をついた適切な忠告。
181. 謀計は一旦の利潤 ( ぼうけいはいったんのりじゅん )
計画をもってまどわして得た利益は一時的なもので、誠実による利益のように永続的なものではない。
182. 馬鹿の一念 ( ばかのいちねん )
愚か者でも一つ事に熱中すると、他のことに気をとられないから、すばらしいことを成し遂げるものである。
183. 丸くとも一かどあれや人心 ( まるくともひとかどあれやひとごころ )
人は心持ちの円満なのはよいが、ただそれだけではだめで、しっかりした面もありたいものである。
184. 天下は一人の天下にあらずすなわち天下の天下なり
( てんかはいちにんのてんかにあらずすなわちてんかのてんかなり )
天下は君主ひとりの専有地でなく、天下万民の共有物であるとの意。