82. 猿知恵 ( さるぢえ )
一見、気が利いているようでも実は、浅はかな知恵をいう。
83. 猿の尻笑い ( さるのしりわらい )
猿が、同じ猿の尻が赤くておかしいといってそれを笑う。自分のことを顧みないで他人の欠点を笑うこと。
【類句】 目糞鼻糞を笑う
84. 猿に烏帽子 ( さるにえぼし )
猿に烏帽子をかぶせる。つまり、人柄に似合わない言動のたとえ。
85. 猿も木から落ちる ( さるもきからおちる )
木登りの巧みな猿でもたまには木から落ちることがある、ということから、その道の達人でも失敗することがあるものだということ。
【類句】 河童の川流れ / 弘法も筆の誤り
86. 猿の水練魚の木登り ( さるのすいれんうおのきのぼり )
やることが反対なのをいう。
87. 意馬心猿 ( いばしんえん )
暴れる馬や騒ぐ猿を、じっとさせておくことがむずかしいことにたとえて、煩悩や妄念や欲情が起こって、
どうにも抑えられないこと。心が騒いで、どうしても静められないことをいう。
88. 嫁と姑犬と猿 ( よめとしゅうといぬとさる )
きわめて仲の悪いことをいう。
【類句】 犬猿の仲
89. 木から落ちた猿 ( きからおちたさる )
頼るものを失ってどうすることもできないたとえ。
【類句】 木を離れた魚 / 陸に上がった河童
90. 狼藉 ( ろうぜき )
乱れ散らかったようす。乱雑なさま。狼が草をしいて寝たあとが、乱れ散らかっている、という意味。
【参考】 「狼藉をはたらく」と使う。「杯盤狼藉」と同じ意味。
91. 狼子野心 ( ろうしやしん )
おおかみの子は人に飼われても、いつまでも山野にいた時の猛悪な心を失わないで、飼い主になれないこと。
人になれず、ともすれば人を害しようとする心をいう。
92. 狼に衣 ( おおかみにころも )
表面は殊勝そうに見えて、内心はおそろしいことから、悪い人間が情け深そうに見せかけること。
また、オオカミが衣を着たようにだらしないかっこう、身に合わないさま。
93. 虎狼より人の口畏ろし ( とらおおかみよりひとのくちおそろし )
凶暴な虎や狼よりも、うわさや悪口を言う人間の口のほうがこわい。悪口から身を守ることの難しさをいう。
【類句】 衆口金を鑠す
94. 杯盤狼藉 ( はいばんろうぜき )
酒宴の席に、杯や盤(さら)などが、散乱しているようす。
「狼藉」は狼が草を籍(し)いて寝たあとの乱雑さから、物事がとり散らかしてあるようすをいう。
95. 前門の虎後門の狼 ( ぜんもんのとらこうもんのおおかみ )
一つの災いを逃れたかと思うと、さらにまたほかの災いに遭う。
前からも後ろからも危難が襲ってくるたとえ。表門で虎を防いだと思うと、裏門に狼が出てくること。
96. 獅子吼 ( ししく )
大いに雄弁を振るうこと。大演説。「獅子」はライオン。
もと仏教で、獅子がほえて百獣を恐れさせるように、威力をもって悪魔や外道を恐れ伏させ正しい道を明らかにする、仏の説法をいう。
97. 獅子の座 ( ししのざ )
仏が人中にあるのは、獅子が百獣の中にあるように、最も尊いものであるところから、仏の座席、高僧の座席をいう。
98. 獅子奮迅 ( ししふんじん )
ものすごい勢いで奮闘するようす。「獅子」はライオン。
獅子が暴れまわるように、猛烈な勢いで動きまわること。
99. 獅子の分け前 ( ししのわけまえ )
強い者が利益を独占することのたとえ。
強いライオンが弱い動物たちを働かせて、その成果を一人占めし、働いたものにはちっとも分け前を与えない。
【参考】 イソップの話から出たことば。
100. 獅子身中の虫 ( しししんちゅうのむし )
「獅子」はライオン。獅子の体内に寄生して恩恵を受けている虫が、かえって獅子を死に至らしめる、ということから、
内部から災いを起こすもの。味方でありながら味方を害するもの、のことをいう。
また、仏徒でありながら仏道を害するものにたとえる。
101. 獅子の子落とし ( ししのこおとし )
「獅子」はライオンのことで、獅子は子を産むと、その子の強弱を試すために、深い谷に投げ込み、自力で這い上がるものだけを育てると言い伝える。
自分の子に辛苦をなめさせてその力を試すことにいう。
102. 跖の狗尭に吠ゆ ( せきのいぬぎょうにほゆ )
人はそれぞれ主人のために忠義を尽くすたとえ。
大盗賊の盗跖(とうせき)に飼われている犬は、自分の主人でなければ聖人の尭にもほえる。
103. 鶏鳴狗盗 ( けいめいくとう )
いやしくつまらない者。鶏の鳴きまねをする人と、犬のようにこそこそと人の物を盗む人。
戦国時代に斉の孟嘗君(もうしょうくん)が、秦の昭王のとりことなった時、
すでに王に贈ってあった狐の白裘(はくきゅう。狐の腋の白毛皮で作ったかわごろも)を、
狗のまねをする食客に盗み出させて、王の寵姫(ちょうき)に献じて釈放され、逃げて函谷関(かんこくかん)に来たが、
深夜のため関は閉ざされていて、鶏が鳴かねば門は開かれなかった。従者の中に鶏の鳴きまねの上手な者がおり、
鶏の鳴きまねをすると、あたりの鶏どもが鳴き出したので、関門が開かれ、通過して脱出することが出来た、という故事。
104. 喪家の狗 ( そうかのいぬ )
葬式のあった家の犬は、食べ物を与えてかまってもらえないのでやせ衰える、ということから、元気がなくやせて衰えている人のたとえ。
一説に家を失った宿なし犬ともいう。
105. 虎に描いて狗に類す ( とらにえがいていぬにるいす )
物事を学んで失敗するたとえ。素質のない者が優れた人の真似をすると、かえって軽薄になる、という意味。
106. 狡兎死して走狗烹らる ( こうとししてそうくにらる )
利用価値がある間は使われるが、価値がなくなると捨てられるたとえ。
すばしこい兎がつかまれば、それを追いまわしていた猟犬は不用として煮て食われてしまう。
敵国が滅びると、戦功のあった知謀の臣は、じゃまにされて殺される。
107. 羊頭を懸けて狗肉を売る ( ようとうをかけてくにくをうる )
羊の頭を看板に出しておき、その実は狗(いぬ)の肉を売ることから、
見かけだけ立派にして、実質が伴わないたとえ。看板に偽りがあること。
【参考】 「羊頭狗肉」「羊頭を懸けて馬肉を売る」「牛首を懸けて馬肉を売る」ともいう。
【類句】 看板に偽りあり
108. 飛鳥尽きて良弓蔵れ狡兎死して走狗烹らる
( ひちょうつきてりょうきゅうかくれこうとししてそうくにらる )
空を飛びかける鳥がいなくなれば、用がないからよい弓もしまわれてしまう。
また悪がしこい兎がいなくなると、今までその猟に用いられていた犬も用がないので煮ころされるということ。
つまり事ある時にのみ用いられ、事がなくなると忘れられること。
敵国が滅びた後は、これまで味方のためにつくした功臣も不要視されてころされる。
役に立つ人も、その用がなくなればかえって罰せられることのたとえ。
「飛鳥」はとぶとり。「狡兎」はこすいうさぎ。「走狗」は猟犬のこと。