31. 好事も無きに如かず ( こうじもなきにしかず )
人生は無事なのがよい。たとえよいことでも、あればそれだけ煩わしいから、いっそ何事もないほうがよい。
32. 好事門を出でず ( こうじもんをいでず )
よい行ないはとかく世間に知られないものである。
33. 後塵を拝す ( こうじんをはいす )
「後塵」は、人や車馬が通り過ぎたあとに立つほこりのことで、優れた人のあとからくっついて行く、追従(ついじゅう)すること。
また、人に先んじられて遅れをとること。
34. 後生畏るべし ( こうせいおそるべし )
「後生」は、あとから生まれた者、後輩、若輩の意で、年少の者は努力しだいで将来どのような人物に成長するかわからないので、
そのつもりで接しなければいけないし、また、自分もうかうかしてはいられないということ。
35. 孔席暖まらず墨突黔まず ( こうせきあたたまらずぼくとつくろまず )
道を伝えるために東奔西走(とうほんせいそう)すること。
孔子と墨子との二人は、どちらも自分の道を伝えるために、忙しく天下を歩きまわり自宅に落ちついていなかったから、
孔子の座席は暖まる暇がなく、墨子の家の煙突は煙で黒くなる暇がなかった。
【類句】 座暖まるに暇あらず
36. 黄泉の客 ( こうせんのかく )
死者をいう。「黄泉」は、地下にあるという泉で、死者の行くところとされている。
37. 浩然の気 ( こうぜんのき )
道義心にもとづいた強く大きい勇気。広々としてくったくのない気持ち。
38. 巧遅は拙速に如かず ( こうちはせっそくにしかず )
上手で遅いのよりは、たとえ下手でも早いほうがよい。
39. 荒唐無稽 ( こうとうむけい )
でたらめ。根拠のない、とりとめのない言説。
「荒唐」は、でたらめ、「無稽」は、考えによりどころがない意。
【参考】 『荘子』天下篇に「謬悠(びゅうゆう)の説、荒唐の言、端崖(たんがい)なきの辞を以て、時に恣縦(ししょう)にして儻(とう)せず」とある。
40. 狡兎死して走狗烹らる ( こうとししてそうくにらる )
利用価値がある間は使われるが、価値がなくなると捨てられるたとえ。
すばしこい兎がつかまれば、それを追いまわしていた猟犬は不用として煮て食われてしまう。
敵国が滅びると、戦功のあった知謀の臣は、じゃまにされて殺される。
41. 功成り名遂げて身退くは天の道なり
( こうなりなとげてみしりぞくはてんのみちなり )
手柄を立て名声を上げたならば、いつまでもその地位にとどまっていないで引退するのは、自然の道にかなったやり方である。
【参考】 『史記』蔡沢伝(さいたくでん)に「四時(しじ)の序、功を成す者は去る」とある。
42. 黄白 ( こうはく )
おかね。金銭。「黄」は黄色の金、「白」は白色の銀。
43. 考は百行の本 ( こうはひゃっこうのもと )
孝行はすべての善行の基本である。
44. 光風霽月 ( こうふうせいげつ )
心が清らかで、わだかまりがなくさっぱりしたさま。
もと、雨上がりの、明るいさわやかな風と光り輝く月という意味。
45. 好物に祟なし ( こうぶつにたたりなし )
好きな物は食べ過ぎても、案外からだに害はない、という意味。
【参考】 「好きな物に祟りなし」ともいう。
46. 弘法筆を選ばず ( こうぼうふでをえらばす )
書の名人である弘法大師は、字を書くのに筆を選り好みしない。
本当に物事に巧みな人は、道具や材料に文句を言わずにうまくやりこなす、という意味。
【参考】 「能書筆を選ばず」ともいう。
47. 弘法も筆の誤り ( こうぼうもふでのあやまり )
弘法大師のような能書家でも時には書き損じることがある、ということから、その道の達人でも失敗をすることがあることのたとえ。
【参考】 Even Homer sometimes nods.
【例】 「何年もやってきたことなのに失敗するなんて弘法も筆の誤りだね」
【類句】 河童の川流れ / 猿も木から落ちる
48. 槁木死灰 ( こうぼくしかい )
生気がなく意欲に乏しい様子のたとえ。
「槁木」は、枯れ木。「死灰」は、火の気がなく冷たくなった灰。
49. 子馬の朝勇み ( こうまのあさいさみ )
初めにあまり力を入れ過ぎて早く疲れてしまうことの例え。
子馬は、朝はたいそう元気で走りまわっているが、やがて疲れてしまうからいう。
【参考】 「子馬の朝駆(あさが)け」ともいう。
50. 高慢は出世の行き止まり ( こうまんはしゅっせのゆきどまり )
謙虚な心を忘れて自分の出世を自慢するようになったら、それ以上は出世も向上できない。
51. 功名を竹帛に垂る ( こうみょうをちくはくにたる )
手柄と名誉を歴史に残す。「竹」は竹簡、「帛」は絹布。
中国で、紙が発明される前の書写の材料。よって書物や歴史の意に用いる。
52. 蝙蝠も鳥のうち ( こうもりもとりのうち )
蝙蝠も空を飛ぶことからいえば、鳥の仲間に入れることができる。
取るに足らぬ人でもやはり人数のうちであるという意味。
53. 紺屋の明後日 ( こうやのあさって )
「紺屋」は染め物屋の意で、染め物屋は、布を乾かすのに天候に左右され、仕上げがとかく延びがちで、催促するといつも
「明後日にはできます」と、言い抜けてばかりいて当てにならない。当てにならない約束をいう意。
【参考】 「紺屋」は「こんや」ともいう。
54. 紺屋の白袴 ( こうやのしろばかま )
「紺屋」は染め物屋の意で、染め物屋でありながら、自分は染めない袴をはいていること。
他人のためにばかり忙しくしていて、自分のことをする暇がないことをいう。昔は紺屋は、普段、袴をはいていた。
【参考】 「紺屋」は「こんや」、「白袴」は「しらばかま」ともいう。
【類句】 髪結いの乱れ髪 / 医者の不養生
55. 膏梁の子弟 ( こうりょうのしてい )
富貴の家に生まれた者のこと。
「膏梁」は、肥えた肉とおいしいあわ、つまり美食のこと。
56. 剛毅木訥は仁に近し ( ごうきぼくとつはじんにちかし )
意志が強く、飾り気がなくて口べたな人は、仁者に近い美徳を持った人である。
【参考】 これに対しては「巧言令色鮮し仁」がある。
57. 郷に入っては郷に従え ( ごうにいってはごうにしたがえ )
田舎にはいったら、その田舎のやり方に従う。人は、住んでいる土地の風習に従うのがよろしい。
新しい環境に移ったら、それに逆らわないのが世渡りのコツである、という意味。
【参考】 Do in Rome as the Romans do.
58. 剛戻自ら用う ( ごうれいみずからもちう )
強情で自分の思うとおりにして、人の説を用いない。
「剛戻」は、強情でねじけたこと。
59. 声なきに聴き形なきに視る ( こえなきにききかたちなきにみる )
親に孝行するには、絶えず相手のことをひたすら考えて、相手の声のないところでもその声を聞き、
相手のいないところでもその姿を見ているようにしなければいけない。
子は、心して親に仕えなければいけないということ。
60. 声なくして人を呼ぶ ( こえなくしてひとをよぶ )
徳のある人のまわりには、自然に人が慕って集まるものである。