211. 彼も人なり我も人なり ( かれもひとなりわれもひとなり )
彼にできることが自分にできないはずがない。
彼も同じ人間であるから努力すればできるはずである、と自らを励まして発奮させる言葉。
212. 彼を知り己を知れば百戦殆からず
( かれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず )
敵と味方との実力をはっきりと知った上で戦えば、何度戦っても負けることがない。有名な兵法家、孫子の言葉。
213. 家老と雪隠は行かねばならぬ
( かろうとせっちんはいかねばならぬ )
雪隠は便所のことで、一日に何度かは行かなければならない、どうしても行かなければならない。
214. 夏炉冬扇 ( かろとうせん )
夏の囲炉裏と冬の扇(おうぎ)のこと。
時節に合わない無用の長物のたとえ。役に立たない言論や才能をいう。
【参考】 芭蕉の「柴門(さいもん)の辞(じ)」に「予が風雅は夏炉冬扇のごとし。衆にさかいて用うる所なし」とある。
215. 可愛い子には旅をさせよ ( かわいいこにはたびをさせよ )
可愛い子には苦労の多い旅をさせて、世の中の苦しみやつらさを経験させたほうが、その子の将来のためになる。
昔の旅行は今と違って交通不便でつらいものであったのでいう。
216. 可愛いは憎いの裏 ( かわいいはにくいのうら )
実際は憎く思っているものを、口先だけは可愛いということ。
217. 可愛さ余って憎さ百倍 ( かわいさあまってにくさひゃくばい )
今までいとおしい、大事にしたいと思っていた相手に対する気持ちが何かの拍子に憎しみに変わると、
それまでの愛情が強かっただけに憎む気持ちも一段と増すということ。
218. 川口で船を破る ( かわぐちでふねをわる )
もう少しで成功するというところで、失敗してしまうこと。
航海を終えて川口の近くまで来て船をこわすということから。
219. 川越して宿をとれ ( かわこしてやどをとれ )
難しいことは先にやれということ。
昔は大きな川には橋がなかったので、川を渡ることは大仕事であった。
もし川の手前で宿をとっていたら、その夜大雨が降ると川止めになって渡ることができないから、川を渡って宿をとれ。
220. 川だちは川で果てる ( かわだちはかわではてる )
川に育ち川になれた者は川で命をおとす。
得意の技や慣れたことは油断して失敗するものであるから、油断してはならないというたとえ。
221. 川中には立てど人中には立たれず
( かわなかにはたてどひとなかにはたたれず )
世渡りの困難なことのたとえ。
222. 川向かいの火事 ( かわむかいのかじ )
自分に少しの関係もないこと。
自分に利害関係がない、なんの心配もないこと。
【類句】 対岸の火事
223. 瓦も磨けば玉となる ( かわらもみがけばたまとなる )
生まれつき愚かな者でも努力して学べば優れた人になれる。「
氏より育ち」である。
また、「
玉磨かざれば光なし」で、教育することは大切である。
224. 皮を切らせて肉を切り肉を切らせて骨を切る
( かわをきらせてにくをきりにくをきらせてほねをきる )
敵に自分の皮を切らせて自分は敵の肉を切る。敵に自分の肉を切らせて自分は敵の骨を切る。
本来は剣道の極意の言葉であるが、実力が伯仲する場合、自分のほうも少しは傷つく覚悟でなければ、
相手をやっつけることはできない、という意味に使う。
225. 蚊をして山を負わしむ ( かをしてやまをおわしむ )
力のない者に大きな仕事をさせることで、とてもその任にたえないことのたとえ。
226. 可を見て進み難を知りて退く
( かをみてすすみなんをしりてしりぞく )
情勢に応じて進んだり退いたりする。機を見て進退すること。進むばかりが能ではないこと。
227. 干戈を箱に入れ弓を袋に入れる
( かんかをはこにいれゆみをふくろにいれる )
泰平の世のこと。武器をしまい込む。
【参考】 「干戈」は、たてとほこ。
228. 侃侃諤諤 ( かんかんがくがく )
きわめて剛直で、権勢に対しても遠慮なく正論を述べること。略して「侃諤(かんがく)」ともいう。
【参考】 注意として、大勢でやかましく議論をしたり、議論が沸騰するのを「カンカンガクガク」とか「ケンケンガクガク」というものが多いが、
誤りである。そういう場合には、「喧喧囂囂(けんけんごうごう)」というべきである。
229. 冠蓋相望む ( かんがいあいのぞむ )
車が道にひき続いて絶え間がないこと。
使者の冠と車上の大きなかさとが、前後に互いに見渡されること。
【参考】 『史記』信陵君伝には「平原君の使者、冠蓋魏に相属(あいしょく)す」とある。
230. 考える葦 ( かんがえるあし )
人間のことをいう。
フランスの思想家パスカルは、その著書パンセの中で「人間は一本の葦であり、自然のうち最も弱いものである。
しかし、それは考える葦である」と言った。
231. 勧学院の雀は蒙求を囀る
( かんがくいんのすずめはもうぎゅうをさえずる )
勧学院に巣を作っている雀は、学生が蒙求を朗読するのに聞き慣れて、囀るのにも蒙求の文句を囀るようになる。
【参考】 「勧学院」は、平安時代の藤原氏の子弟を教育するための学校。
『蒙求』は中国の古書で、有名な人の事跡を、唱しやすい四字句に編修したもの。
【類句】 門前の小僧習わぬ経を読む
232. 雁がたてば鳩もたつ ( がんがたてばはともたつ )
自分の能力も考えず、むやみに人の真似をすること。
233. 雁が飛べば石亀も地団太 ( がんがとべばいしがめもじだんだ )
雁が飛び立つと、それを見ていた石亀が、自分も空を飛ぼうと足をばたつかせる。
自分の分際を忘れて、むやみに他をまねようとする意。
234. 汗牛充棟 ( かんぎゅうじゅうとう )
蔵書が非常に多いたとえ。車に積めば、それを引く牛が汗を出すほどであり、
家の中に積み上げれば、棟木につかえるほどである、という意味。
235. 眼光紙背に徹する ( がんこうしはいにてっする )
紙の裏まで見通す意で、読書の際、単に字句の解釈にとどまらず、その内容を深く読み取ること。
236. 函谷関の鶏鳴 ( かんこくかんのけいめい )
奇策を用いて危機を脱出すること。
斉の孟嘗君は秦の昭王に招かれて行って計略のために幽閉されたが、狗盗(こそ泥)の働きによって助けられて脱出し、
国境の函谷関まできた。まだ夜は明けないし、ぐずぐずすると追手に捕えられる。
この関所の門は一番鶏が鳴くと開けられるので、鶏の鳴き声のまねの得意なものがいて、
鳴き声をまねたところ、近くの鶏がみんな鳴きだしたので、門は開かれて一行は脱出することができたという故事。
函谷関は戦国時代に秦が設けた関所で、今の河南省霊宝県の西南にあり、高原で地形が険しいので知られている。
【参考】 鶏鳴狗盗
237. 換骨奪胎 ( かんこつだったい )
古いものに、新しい工夫を凝らして再生する意。
もともと、古人の詩文の語句や構想に手を入れ、少し変えながら、その着想や形式などをまねて自分の詩文とすること。
骨をとり換え、胎(子ぶくろ)を奪い取るの意味。焼き直しの意に用いるのは誤り。
238. 閑古鳥が鳴く ( かんこどりがなく )
人影がなく寂しいようす。非常に寂れたようす。商売などがはやらないことにいう。
239. 癇癪持ちの事破り ( かんしゃくもちのことやぶり )
せっかくまとまりかけた話や仕事も、短気をおこしてこわしてしまうこと。
240. 雁書 ( がんしょ )
手紙のこと。漢の蘇武(そぶ)が匈奴(きょうど)に使者として行き、十九年間も捕えられていた時、
雁の足に手紙を結びつけて音信を漢朝に送ったという故事による。
【参考】 「雁信」「雁のたまずさ」「雁のおとずれ」ともいう。