95. 立つより返事 ( たつよりへんじ )
人から呼ばれたら、立ち上がる前にまず返事をせよ。
96. 田作りも魚の中 ( たづくりもうおのうち )
小魚でも魚の仲間である。弱小の者でも味方に数えることができる、という意味。
【参考】 「田作り」はごまめともいい、ごく小さな鰯(いわし)を素干しにしたもの。
【類句】 蝙蝠も鳥のうち
97. 立て板に水 ( たていたにみず )
弁舌が、流れるようにすらすらとよどみのないたとえ。
立てかけた板に水を流すようである、という意味。
98. 盾の半面 ( たてのはんめん )
物事の一面だけを見て、隠れた半面に気付かないこと。
視野が狭く、一面的な見方で判断を下す態度を表わす。
99. 盾の両面を見よ ( たてのりょうめんをみよ )
盾は、その表側だけでなく裏側も見よ。栄光の裏には暴虐と汚辱があるものだ。
物事はその裏表をよく観察したうえで、その価値を判断することを心掛けよ、という意味。
【参考】 Look on both sides of the shield. の訳語。
【類句】 盾の半面
100. 立てば芍薬座れば牡丹 ( たてばしゃくやくすわればぼたん )
美しい女性の容姿を形容する言葉。
【参考】 「歩く姿は百合の花」と続けて言う。
101. 蓼食う虫も好き好き ( たでくうむしもすきずき )
苦い蓼の葉を食う虫があるように、人の好みはさまざまで、一般には理解しがたいような多面性を持っているものである、という意味。
【参考】 There is no accounting for taste.
102. 棚からぼた餅 ( たなからぼたもち )
棚の下に寝ていたらぼた餅が落ちてきて、ちょうど開いていた口へはいる、ということから、
何もしないでいて思いがけず意外なよい運に巡り合う、という意味。
【参考】 「たなぼた」「開いた口へ牡丹餅」ともいう。
103. 他人の疝気を頭痛に病む ( たにんのせんきをずつうにやむ )
他人の腹痛を心配同情して自分も頭痛になる。
直接自分に関係のないことに、余計な心配をする愚かしさをいう。
「疝気」は、漢方で大腸・小腸・腰部などの痛む病気。
【参考】 「人の(隣の)疝気を頭痛に病む」ともいう。
104. 他人の空似 ( たにんのそらに )
全く血のつながりがないのに、親子か兄弟のように顔つきなどがよく似ていること。
【例】 「他人の空似とはいえ、兄と間違えそうなほどそっくりだった」
105. 他人の飯を食わねば親の恩は知れぬ
( たにんのめしをくわねばおやのおんはしれぬ )
親元を離れて他人のところで生活して苦労してみないと、親の有り難みはわからない。
【参考】 「他人の飯には骨がある」という語がある。
106. 他人は食い寄り ( たにんはくいより )
不幸などのあった場合、他人は御馳走(ごちそう)になるのが目的で集まってくる。
【参考】 「親は泣き寄り他人は食い寄り」ともいう。
107. 狸の腹鼓 ( たぬきのはらづつみ )
月の夜に、たぬきが腹をたたいて楽しむという言い伝え。たぬきばやし。
108. 頼む木の下に雨漏る ( たのむきのしたにあめもる )
雨宿りを頼りに木の下にきたのに、雨が漏るということで、
せっかく頼みにしたのにそのかいがなく、途方にくれること。
109. 旅路の命は路用の金 ( たびじのいのちはろようのかね )
旅先では所持金が命と同じくらいに大切であるということ。
「路用」は旅行のための費用・旅費。
110. 旅の恥はかき捨て ( たびのはじはかきすて )
旅先では、知っている人も居ないし、そこに長く居るわけでもないから、平生ならはばかられるような恥ずかしいことをしてもかまわない、という意味で、
日常生活からの開放感も加わって、恥さらしな行動があまり気にならなくなる旅行者特有の気持ちを表わした言葉。
111. 旅は憂いもの辛いもの ( たびはういものつらいもの )
交通機関が発達していなかった昔の旅は歩かなければならず、知人も頼る所もなく、とかく思うようにならず、苦しく辛いものであったから。
112. 旅は道連れ世は情け ( たびはみちづれよはなさけ )
旅行をする時は道連れのあるのが楽しく頼もしく、世の中を渡るには互いに思いやり合い同情し合ってやっていけば、楽して暮らせる。
113. 多弁能なし ( たべんのうなし )
ふだんから口数の多い人ほど、いざという時には役に立たないものだ。
114. 卵を見て時夜を求む ( たまごをみてじやをもとむ )
早計にすぎる。早合点する。
115. 玉となって砕くとも瓦となって全からじ
( たまとなってくだくともかわらとなってまったからじ )
男子たるものは、義のために死ぬとも、あたらおめおめと生きのびて、つまらぬ生涯を送りたくないものだ。
116. 玉に瑕 ( たまにきず )
申し分のないほど完全に立派であるが、ほんのわずかの欠点があること。
【例】 「いつもは温厚な人だが、勝負事になると熱くなるのが玉に瑕だ」
【類句】 白璧の微瑕
117. 玉の輿に乗る ( たまのこしにのる )
恵まれない境遇にいた女性が、望まれて地位や財力のある人と結婚し、幸福を得る。
「玉の輿」は、本来、貴人の乗るりっぱな乗り物のこと。
118. 玉の巵当なきがごとし ( たまのさかずきそこなきがごとし )
見掛けは立派でも実際の役には立たないもののたとえ。
「巵」は杯、「当」は底。宝玉で作った立派な杯でも、底がなくてはなんの役にも立たない。
【参考】 『徒然草』第三段に「万にいみじくとも、色このまざらん男は、いとそうぞうしく、玉の巵の当なき心地ぞすべき」とあるのはこれに基づく。
119. 玉磨かざれば器を成さず ( たまみがかざればきをなさず )
どんなによい玉でも、加工して磨いて初めて価値のある宝の器物となる。
それと同じように、生まれつき素質のすぐれた人でも、学問・修養を積まなければ立派な人物になることはできない。
「器」はうつわ、道具。役に立つ立派な人物にたとえる。
120. 玉磨かざれば光なし ( たまみがかざればひかりなし )
どんなによい玉でも、磨かなければ輝く玉にはならないと同じように、生まれつき優れた才能を持っていても、
学問や教養で鍛えなければ立派な人物になることはむずかしい、という意味。
121. 璧を懐いて罪あり ( たまをいだいてつみあり )
身分不相応な宝を持つことは、災禍を招くもとになる。
122. 玉を転がすような ( たまをころがすような )
声が高く澄んだ調子で、非常に美しい様子。
【類句】 鈴を転がすような
123. 玉を衒いて石を売る ( たまをてらいていしをうる )
玉を見本に使って、実際には石を売りつけるというので、見本と全く違う粗悪なものを売ること。
124. 民の口を防ぐは水を防ぐよりも甚だし
( たみのくちをふせぐはみずをふせぐよりもはなはだし )
人民の言論を圧迫することは、川の氾濫(はんらん)を防ぎ止めるよりもむずかしい。
人民の憤りが爆発すると、堤防が決壊して洪水になるどころの騒ぎではない。
125. 民は之に由らしむ可しこれを知らしむ可からず
( たみはこれによらしむべしこれをしらしむべからず )
民は道理にくらいものであるから、指導して従わせることはできるが、その原理を理解させることはむずかしい。
【参考】 「後に、民はただ政治に従わせればよいのであって、その理由を知らせてはいけない」と解するのは、誤りである。