181. 噛ませて呑む ( かませてのむ )
人に噛み砕かせたものを取りあげて呑む。
他人が骨を折った仕事の成果を、自分が苦労しないで手に入れる、という意味。
182. 噛み合う犬は呼び難し ( かみあういぬはよびがたし )
けんかしている犬はいくら呼んでも来ないように、自分のことで夢中になっている人は、
他から何を言われても耳には全く入らないこと。
183. 神様にも祝詞 ( かみさまにものりと )
神様にお願いをしたいことがあれば、改めて祈らなければ通じない。
わかっていることでも改めて頼まなければ通じない。
184. 裃を着た盗人 ( かみしもをきたぬすびと )
私利をむさぼり、私腹を肥やす悪徳役人。
185. 上清めば下濁らず ( かみすめばしもにごらず )
上の行なう政道が正しければ、下々の人民もまた不正を行なわない。
186. 剃刀の刃を渡る ( かみそりのはをわたる )
非常に危険な行為。刀の刃を渡るがごとし。
187. 上の好む所下これよりも甚だし
( かみのこのむところしもこれよりもはなはだし )
上に立つ人が好むことは、下部の者はさらに好んで流行となり、弊害が起こる。
188. 神は非礼を受けず ( かみはひれいをうけず )
神は道にはずれた礼を受けない。道にはずれたことをお願いすれば罰を下す。
189. 神は見通し ( かみはみとおし )
神様はどんな物事をもよく見ておられ、ごまかしを許さない。
【参考】 「天道様(てんとうさま)は見通し」ともいう。
190. 髪結いの亭主 ( かみゆいのていしゅ )
髪結いを女房にすると亭主はその稼ぎで遊んで暮らせる意から、女房の稼ぎで養われている男。俗に「ひも」とも。
191. 噛む馬はしまいまで噛む ( かむうまはしまいまでかむ )
人にかみつく癖のある馬は、死ぬまで人にかみつく。
悪い性質は容易には直らない、というたとえ。
【類句】 三つ子の魂百まで
192. 亀の甲より年の劫 ( かめのこうよりとしのこう )
「劫」は仏教で極めて長い時間の意で、長年の経験が大切である、ということ。
【参考】 現在は「年の功」とも書く。
【例】 「亀の甲より年の劫で、年寄りは色んな事を知っている」
193. 亀の年を鶴が羨む ( かめのとしをつるがうらやむ )
欲に限りのないことのたとえ。
鶴は千年亀は万年といわれているが、千年生きる鶴が万年の亀をうらやむ。
194. 鴨が葱を背負って来る ( かもがねぎをしょってくる )
鴨だけでなく葱までも、ということは、鴨鍋にするのに好適であるということ。
こんな都合のいいことはない。おあつらえ向きだ、という意味。
195. 鴨の水掻き ( かものみずかき )
水に浮かんだ鴨は、水面下では絶えず足で水を掻いている。
よそ目にはわからないが、苦労や心配の絶えないことをいう。
196. 下問を恥じず ( かもんをはじず )
目下の者にものを聞くとこを恥としないこと。
197. 粥腹も一時 ( かゆばらもいっとき )
かゆのように力にならぬものでも、食べておけば一時しのぎの役にたつことから、急場の間に合わせのたとえ。
198. 空馬に怪我なし ( からうまにけがなし )
一物を持たないものは損のしようがない、という意味。
空馬は人も荷物も乗せていない馬のこと。
199. 烏に反哺の考あり ( からすにはんぽのこうあり )
カラスは成長したら、親ガラスのために餌をくわえていて口に入れてやり養育の恩に報いるという。
親に孝行することのたとえ。
200. 烏百度洗っても鷺にはならぬ
( からすひゃくどあらってもさぎにはならぬ )
色の黒い者はいくら洗っても色白にはならない。
むだな骨折りはやめて特色を生かす工夫をしたほうがよい。
201. 烏を鷺 ( からすをさぎ )
正しいことを正しくない、正しくないことを正しい、と言いくるめること。
黒い烏を白い鷺、白を黒だと言い張る、不合理を押し通すこと。
202. 空世辞は馬鹿を嬉しがらせる ( からせじはばかをうれしがらせる )
愚か者は、口先だけのお世辞を言われても嬉しがる。
【参考】 Fair words make fools fain. の訳語。
203. 狩人罠に掛かる ( かりうどわなにかかる )
人をおとしいれようとしてしくんだ悪だくみによって、自分がひどい目にあうことをいう。
204. 借り着より洗い着 ( かりぎよりあらいぎ )
借りた美しい衣服よりも、洗いざらしでも自分の衣服がよい。
人にたよってぜいたくをするよりも、貧しくても自立するほうがよいことのたとえ。
人の物より自分の物がよいこと。
205. 借りた弱み ( かりたよわみ )
借金はつらいもの、借りたものは貸主には頭があがらない。
206. 画竜点睛 ( がりょうてんせい )
事を完成するために、最後に加える大切な仕上げのたとえ。
すぐれた絵師が竜を描いたが、睛(ひとみ)を入れると飛び去るといって入れなかった。
ところが人々がそれはでたらめだと言ったので、睛を入れたところ雷鳴電光と共に竜が天に上ったという故事による。
【参考】 注意として、「睛」は、ひとみで、「晴(はれ)」とは字が違う。
207. 画竜点睛を欠く ( がりょうてんせいをかく )
中国の張僧ヨウという人が竜を描いて最後にひとみをかき入れたら、その竜が天に昇って行ったという故事から、
最後の仕上げが不十分なため、せっかく作ったものの価値が下がってしまう様子。
また、物事の肝心な点が抜けてしまっている様子。
【例】 「すばらしい掛け軸ですが、保存方法が画竜点睛を欠いていますね」
208. 借りる時の地蔵顔済す時の閻魔顔
( かりるときのじぞうがおなすときのえんまがお )
金や物を借りる時にはにこにこと笑い顔をするが、返す時にはふきげんな顔をする。
借りる時は貰ったような気持ちになり、返す時はただ取られるような気分になるのが人情の常である。
209. 借りる八合済す一升 ( かりるはちごうなすいっしょう )
米を八合借りたら一升にして返せ。
借りた物には利息をつけるかお礼を添えて返すのが借りた人の心得だということ。
【参考】 「済す」は返済すること。
210. 枯れ木も山の賑わい ( かれきもやまのにぎわい )
枯れ木でも山の景観をにぎやかにするのに役立つ。
つまらない者でも数の中に加わると、座をにぎやかにし景気づけになるから、いないよりはましである。
人だけでなく物についてもいう。