97. 土台より二代 ( どだいよりにだい )
大事な仕事をはじめた初代の人は、人目にははなやかに見るが、二代目の人は、そのかげにかくれて目立たない。
新たに仕事を始めるよりも、それをもりたてていくほうが難しいということ。
98. 塗炭の苦しみ ( とたんのくるしみ )
「塗」は泥、「炭」は火をあらわし、火に焼かれるような非常な苦しみ。
天災・戦火・悪政などによって受ける非常な苦しみのたとえ。
99. 魚の真似する目高 ( ととのまねするめだか )
力量のない者が力量のある者の真似をすること。
100. 隣り小舅はやかましい ( となりこじゅうとはやかましい )
隣り近所の者が、いらない事にまで口出しして、いろいろ批判する悪いくせをいう。
101. 隣の家の宝を数える ( となりのいえのたからをかぞえる )
やたらに他人の財産を数える意から、何の役にも立たないこと。
【類句】 人の宝を数える
102. 隣の馬も借りたら一日 ( となりのうまもかりたらいちにち )
借りたら借りついでに思う存分使って返すことで、借り得だということ。
103. 隣の白飯より内の粟飯 ( となりのしろめしよりうちのあわめし )
自分の家が一番よいということ。
104. 隣の花は赤い ( となりのはなはあかい )
他人の物はよく見えてうらやましく思うのが人の常である、という意味。
【類句】 隣の薔薇(ばら)は赤い / 隣の芝生は青く見える
105. 隣の貧乏は鴨の味 ( となりのびんぼうはかものあじ )
隣の家が貧乏なのは、鴨の肉を味わうように快い。
他人の不幸は自分の優越感を満足させるものであるからである。
【参考】 「隣の貧乏雁の味」ともいう。
106. 図南の翼 ( となんのつばさ )
大志をいだいて大事業を計画すること。
想像上の大きな鳥である大鵬(たいほう)が、壮大な翼を広げて、南の海に向かって飛び立つという話から出た語。
【参考】 「図南の鵬翼(ほうよく)」ともいう。
107. 戸にも口がある ( とにもくちがある )
どんなにかくしておいたことでも広まってしまうということ。
108. 殿の犬には喰われ損 ( とののいぬにはくわれぞん )
勢いの強い者やったことは、たとえ道理にはずれていることであっても泣き寝入りするしかない、という意味。
109. 怒髪冠を衝く ( どはつかんをつく )
非常に怒ったようす。はげしい怒りのために髪の毛がさかだち、かぶっている冠をつきあげる、という意味。
110. 怒髪天を衝く ( どはつてんをつく )
『史記』の言葉から、怒りで髪の毛が逆立つ意で、激怒する様子のたとえ。
【参考】 「怒髪冠を衝く」ともいう。
111. 駑馬十駕 ( どばじゅうが )
才能の劣った者も、努力を続けるならば、賢人に追いつくことができるというたとえ。
「十駕」は、十日間馬に乗って走らせること。のろまな馬も十日の日程をかければ、一日に千里を走る名馬に追いつくことができる、という意味。
112. 駑馬に鞭打つ ( どばにむちうつ )
「駑馬」は歩くのがのろい馬のことで、能力の無い者に無理に力以上のことをさせるという意で、
苦労をいとわず何かを行なう意の謙遜(けんそん)した言い方。
113. 鳶が鷹を生む ( とびがたかをうむ )
平凡な親から傑出した子供が生まれること。
【参考】 「とび」は「とんび」とも。「瓜の蔓に茄子はならぬ」「蛙の子は蛙」に対する言葉。
【例】 「鳶が鷹を生んだと言っては失礼だが、彼の息子は一流大学へ行ったそうだ、」
114. 鳶の子は鷹にならず ( とびのこはたかにならず )
とびとたかとは姿も大きさも似ているが、しょせんとびの子はとびで、たかにはならない。
凡庸の人の子はやはり凡庸で、これを非凡な人物にしてあげようとしても、それは出来ない相談である。
115. 鳶も居ずまいから鷹に見える ( とびもいずまいからたかにみえる )
鳶も威厳をもった態度・動作をしていれば、鷹に見える。
起居・動作が正しければ、身分が低い者でも身分が高く見える、という意味。
116. 飛ぶ鳥の献立 ( とぶとりのこんだて )
その時になってみなければあてにならないもののたとえ。
117. 吐哺握髪 ( とほあくはつ )
人材を求めるのに熱心なこと。食事中に人が来訪すれば、一度口に入れた食べ物を吐き出してすぐに会い、
髪を洗っている時に人が来訪すれば、ぬれた髪を握ったまま、すぐさま出迎えたという周公(しゅうこう)の故事。
【参考】 『史記』は、「吐哺捉髪(そくはつ)」であるが、『韓詩外伝(かんしげでん)』巻三と『十八史略』巻一とには「吐哺握髪」とある。
118. 土崩瓦解 ( どほうがかい )
物事が崩れて、手のつけようがないこと。土が崩れ、瓦(かわら)が崩れ落ちるという意味。
119. 富は一生の宝智は万代の宝
( とみはいっしょうのたからちはばんだいのたから )
富はその人一代だけの宝で、その人が死ねばそれまでだが、知恵は自分だけにとどまるものではなく、後々の人のためにも長く役立つものである。
120. 富は屋を潤し徳は身を潤す
( とみはおくをうるおしとくはみをうるおす )
富んで財産が多くなれば自然と家の中がゆったりしてくるし、りっぱな徳を積めば自然とその徳があらわれ身が尊くなる。
121. 朋有り遠方自り来る ( ともありえんぽうよりきたる )
志を同じくする友達が遠方からやって来る。人生の楽しみの一つ。
122. 土用布子に寒帷子 ( どようぬのこにかんかたびら )
夏の土用に綿入れ、寒中に単衣。時節に役に立たないもの、物事が転倒していることの意。
123. 虎狼より人の口畏ろし ( とらおおかみよりひとのくちおそろし )
凶暴な虎や狼よりも、うわさや悪口を言う人間の口のほうがこわい。悪口から身を守ることの難しさをいう。
【類句】 衆口金を鑠す
124. 取らずの大関 ( とらずのおおぜき )
実際の力を見せたことのない大関ということで、見かけはよいが、少しも力量を示したこともないのに、一人えらぶっている人のたとえ。
125. 虎に描いて狗に類す ( とらにえがいていぬにるいす )
物事を学んで失敗するたとえ。素質のない者が優れた人の真似をすると、かえって軽薄になる、という意味。
126. 虎に翼 ( とらにつばさ )
強い虎に翼をつけるように、勢力を振るう者に更に勢いを添えるたとえ。
【参考】 「鬼に金棒」と同じ。
127. 捕らぬ狸の皮算用 ( とらぬたぬきのかわざんよう )
まだ狸を捕まえないうちから皮を売ってもうける計算をする。
不確実な事柄に期待して、それを元にいろいろ計画を立てる、という意味。
【参考】 単に「皮算用」ともいう。「儲けぬ前の胸算用」と同じ。
【参考】 Don't count your chickens before they are hatched.
128. 虎の威を仮る狐 ( とらのいをかるきつね )
有力者の権勢をかさに着て威張る者のたとえ。
虎が多くのけものを捕らえて食べ、ある時、狐を捕まえた。狐は虎に「天の神が私を百獣の長にしたのである。だから私を食べると天の神の命令に背くことになりますよ。
うそだと思ったら、私のあとについて来て見てごらんなさい。百獣は私を見てみな逃げますよ」と言った。
虎が狐のあとについて行くと、けものたちはみな逃げて行った。虎は、けものたちが自分を恐れて逃げたのには気づかず、
狐を恐れたものと思った、という故事による。