33. 刀筆の吏 ( とうひつのり )
小役人。書記。昔は竹の札に筆で書き、誤りがあれば小刀で削って書き直したので、文字を書き写すだけの役人、という意味。
34. 同病相憐れむ ( どうびょうあいあわれむ )
同じ病気にかかっている者同士は、互いに同情し合う、ということから、苦労を同じくしている者は互いに助け合う、という意味。
35. 豆腐に鎹 ( とうふにかすがい )
豆腐に鎹を打ち込む、という意味から、どんなに意見をしても、少しも効き目がないこと。
【類句】 糠に釘 / 暖簾に腕押し
36. 道傍の苦李 ( どうほうのくり )
おいしい李がたやすく手にはいると思うのが間違い。
いくらあっても誰も取る者がないようなつまらぬもののこと。
37. 陶冶 ( とうや )
人の性質や才能を、完全なものに造りあげる。
陶工が陶器を造り、鍛冶屋(かじや)が鋳物を造るように育てあげる意。
38. 桃李言わざれども下自ら蹊を成す
( とうりものいわざれどもしたおのずからけいをなす )
桃や李は花も実も美しいので、招かなくとも自然に人が集まってきて、下に小道が出来上がる、ということから、
立派な人格者の周囲には、招かなくとも沢山の人が寄り集まってくるたとえ。
【参考】 「蹊」は小道の意。
39. 桃李門に満つ ( とうりもんにみつ )
英才がその門下に多く集まることをいう。
40. 登竜門 ( とうりゅうもん )
立身出世の関門のこと。
黄河の上流にある竜門は、流れが非常に急で、鯉がここを登ることができると、化して竜になるという伝説がある。
【例】 「このオーディションが、役者への登竜門となっている」
41. 棟梁の器 ( とうりょうのうつわ )
国家の重任にあたることのできる人物。棟木(むなぎ)や梁(はり)が屋根を支えているように重い責務に任ずる人物。
42. 蟷螂の斧 ( とうろうのおの )
「蟷螂」はかまきりのことで、どんな相手にも斧のような前足をふり立てて向かうことから、
自分の力の弱さを顧みずに大敵に向かうこと。はかない抵抗。向こうみず。
【例】 「税金値上げに反対したが、蟷螂の斧に過ぎなかった」
43. 道理に向かう刃なし ( どうりにむかうやいばなし )
どのような無法者でも道理には勝てないということ。
44. 十日の菊六日の菖蒲 ( とおかのきくむいかのあやめ )
五月六日の菖蒲と九月十日の菊。五月五日の端午の節句に飾るべき菖蒲、九月九日重陽の節句に供えるべき菊、
いずれも、その翌日では時期に遅れて役に立たないことをいう。
【参考】 「六日の菖蒲十日の菊」「六菖十菊」ともいう。
45. 十日の月の入るまで二十日の月の出るまで
( とおかのつきのいるまではつかのつきのでるまで )
待つ間のずいぶん長いこと。また、よく励んでいるさま。
十日目の月は明け方近く西に入るし、二十日目の月は夜半にならないと東から出ないことから。
46. 遠き慮り無き者は必ず近き憂いあり
( とおきおもんばかりなきものはかならずちかきうれいあり )
遠い遠来のことを考えず、目先にばかりとらわれているようでは、必ず近い将来に心配事が起こるものである。
軽率に事をなしてはならないということのたとえ。
47. 遠きに行くは必ず邇きよりす ( とおきにゆくはかならずちかきよりす )
遠くに行くには、まず近いところから歩き始める。
それと同様に、物事を行なうにはそれ相当な順序を追って、手近なところから堅実に進めなければならない。
一度に無理をすれば失敗する。
48. 遠きは花の香 ( とおきははなのか )
身近なものは、なれてしまうとあまり立派に見えなくなり、遠くに離れたものは、
離れてにおう花の香がゆかしいように、立派に思われるものである。
49. 遠きを知りて近きを知らず ( とおきをしりてちかきをしらず )
他人のことはよく見えるが、自分のことはさっぱりわからないものである。
また遠大な構想はもっているが、身近な事についてはなんにもわからないこと。
50. 遠くて近きは男女の仲 ( とおくてちかきはだんじょのなか )
間が遠いようでいて案外近いのは男女の間柄である、ということ。
【参考】 『枕草子』一六七段に「遠くて近きもの、極楽。舟の道。人の中」とある。
51. 遠くの親類より近くの他人 ( とおくのしんるいよりちかくのたにん )
遠く離れた親類よりも近くに住む他人のほうがいざという時、かえって頼りになる、ということ。
【類句】 遠水近火を救わず
52. 十のことは十に言え ( とおのことはとおにいえ )
思うところを理解されるには、順序立てて落ちなく話すようにしなければならない。
53. とかく村には事勿れ ( とかくむらにはことなかれ )
自分の村には何はともあれもめ事だけはないように、ということ。
54. 磨がずに鍛冶を恨むな ( とがずにかじをうらむな )
努力をしないで生まれつきをうらんでもしょうがない。
つまり一生懸命に努力せよということ。
55. とがめてこれに効う ( とがめてこれにならう )
他人の犯した罪についてはとがめながら、自分がそれと同じ悪事を犯すこと。
56. どか儲けすればどか損する ( どかもうけすればどかぞんする )
一度に沢山もうければ、一度にどっと損するようなときもくるということ。
【類句】 にわか長者はにわか乞食
57. 斎にも非時にも外れる ( ときにもひじにもはずれる )
斎とは仏家における食事。非時とは午後に食べる食事。あれもこれもうまくいかないたとえ。
58. 時の代官日の奉行 ( ときのだいかんひのぶぎょう )
その時代その時代の権力者に従っていくのが、処世の法であるということ。
【参考】 「時の役人日の奉行」ともいう。
59. 時の花を挿頭にせよ ( ときのはなをかんざしにせよ )
季節の花を頭髪の飾りにせよということで、その時その時の流行や権威に従って、繁栄して暮らせという意味。
60. 時の用には鼻をそげ ( ときのようにははなをそげ )
目の前の急な用件を果たすためには、手段を選ばず、鼻をそぐようなことまで行え、ということ。
【参考】 「時の用には鼻」ともいう。
61. 時は得がたく失い易い ( ときはえがたくうしないやすい )
よい機会というものはなかなか得がたいものであり、たとえ得たとしても、また失いやすいものである。
また、時を有効に使うことのむずかしさをいう。
62. 時は金なり ( ときはかねなり )
時間は貴重で金銭と同様な価値があるから、むだに使わないで、よく励み努めるべきである、という意味。
【参考】 Time is money. の訳語。
63. 読書百遍義自ら見る ( どくしょひゃっぺんぎおのずからあらわる )
どんなむずかしい書も、何度も繰り返して読んでいれば、意味が自然にわかってくる。
【参考】 「読書百遍意自ら通ず」ともいう。
64. 徳孤ならず ( とくこならず )
人格者は必ず人に親しまれる。有徳者は孤立することなく、多くの人が寄ってくる。
【参考】 『易経(えききょう)』坤卦(こんか)に「敬義立ちて徳孤ならず」とある。