28. 江戸からも立ち序 ( えどからもたちついで )
よい時機を見はからうこと。チャンスを待つ。
江戸から地方へ旅立つにも、なにかのよいついでを待って、時機を見はからって出かけることをいう。
29. 江戸っ子の往き大名、還り乞食
( えどっこのゆきだいみょう、かえりこじき )
江戸っ子が旅をするときは、行くときはあと先の考えもなく大名のようにぜいたくをし、
そのため帰りにはすっからかんの一文なしになって、こじきのようにみじめな姿でかえってくることから、
後の考えもなく気前よく金を使うことのたとえ。
30. 江戸っ子は五月の鯉の吹き流し
( えどっこはさつきのこいのふきながし )
江戸っ子は言葉使いは荒っぽいが、腹の中はさっぱりしていて悪気がない。
31. 江戸っ子は宵越しの銭は使わぬ
( えどっこはよいごしのぜにはつかわぬ )
江戸の者には金離れがよく,その日にもうけた金はその日のうちに使ってしまって、翌日に繰り越して使わない。
【参考】 「江戸っ子は宵越しの金は持たない」ともいう。
32. 江戸の敵を長崎で討つ ( えどのかたきをながさきでうつ )
江戸で恨みを受けた相手を長崎で敵討ちする、ということから、意外なところで、あるいは筋違いのことで仕返しをする、という意味。
33. 江戸の八百八町、大阪の八百ハ橋
( えどのはっぴゃくやちょう、おおさかのはっぴゃくやばし )
江戸と大阪の広いことをいったもの。
江戸には町の数が多く、大阪には川や掘割にかかった橋が多かったことから。
34. 江戸べらぼうと京どすえ ( えどべらぼうときょうどすえ )
江戸と京都の方言の特色をいったもの。また、江戸者と京者との性格を言ったもの。
江戸者は気が短くて、口が荒くて、すぐ人をばか、あほうなどとののしる。
京者は気が長く優しく、ですか、ですよ、とおっとりいう。
35. 絵にかいた餅 ( えにかいたもち )
絵に描いた餅は食べられない、ということから、観念的・空想的なものは役に立たない、という意味。
【参考】 「画餅」に同じ。
36. 柄のない所に柄をすげる ( えのないところにえをすげる )
理屈のないところに無理に理屈をこじつけるたとえ。
37. 衣鉢を伝う ( えはつをつたう )
本来は仏語で、師僧が門下に袈裟と鉄鉢を伝える、奥義を伝えることをいったが、
後には、いはつと読んで、仏法に限らず、師からその道の奥義を伝えられることをいうようになった。
38. 蝦踊れども川を出でず ( えびおどれどもかわをいでず )
エビはどんなにはねても一生川から出られない。
物にはそれぞれ天が与えた運命が定まっているということ。
39. 蝦で鯛を釣る ( えびでたいをつる )
わずかな元手で大きな利益を得る。略して、「えびたい」ともいう。
【例】 「彼女に花を贈ったら付き合うことが出来た、海老で鯛を釣った気分だ」
【参考】 「えび」の部分は「海老」「エビ」とも書く。
40. 烏帽子を着せる ( えぼしをきせる )
尾ひれをつける。へんに誇張したり妙な飾りをつける。
41. 笑みの中の刀 ( えみのなかのかたな )
うわべはおとなしく見えるが、内心は腹黒く陰険なこと。
42. 栄耀の餅の皮 ( えようのもちのかわ )
ぜいたくに慣れると、餅の皮までもむいて、あんばかり食べるようになる、ということから、
不必要なぜいたくをする、という意味。
43. 選んで粕を掴む ( えらんでかすをつかむ )
えり好みもいいかげんにしないと、かえってまずいものをつかむ結果になる。
44. 襟元につく ( えりもとにつく )
権勢のある人にこびつくこと。
45. 縁あれば千里 ( えんあればせんり )
まことに「縁は異なもの」で、千里も遠く隔てた土地の人と夫婦になったり、
すぐ近くにいても縁がなければ口もきかない。
【参考】 「縁あれば千里も逢い易く、縁なければ対面も見がたし」の略。
46. 鴛鴦の契り ( えんおうのちぎり )
鴛鴦(おしどり)は、いつも雌雄一緒にいて離れない習性があるところから、夫婦仲のむつまじいたとえ。
47. 煙霞の痼疾 ( えんかのこしつ )
山水の美しい景色を愛する心が非常に強いこと。転じて旅行好きなことにもいう。
「煙」は、かすみ・もや。「霞」は、朝焼け・夕焼けの美しい雲。「痼疾」は、なかなか治らない病気。
自然を愛することが病みつきになっているという意味。
【参考】 「煙霞の癖」ともいう。
48. 遠交近攻 ( えんこうきんこう )
利害の衝突しない遠い国とは親しくしておいて、近い国を攻める政策。
中国の戦国時代に范雎(はんしょ)の唱えた外交政策。秦はこれによって諸国を征服した。
49. 猿猴月を取る ( えんこうつきをとる )
欲のために命をすてること。
また、分に過ぎたことを望んで命をなくすることのたとえ。
猿が水に映った月を見て、これを取ろうとして枝にぶらさがったが、枝が折れて水におぼれた故事。
50. 塩車の憾 ( えんしゃのかん )
身の不運をうらむこと。千里を走る駿馬が駄馬といっしょに塩を運ぶ車をひいているように、
すぐれた才能をもっている人が、つまらない仕事ばかりさせられて、
うだつの上がらないことをなげくことのたとえ。
51. 吮疽の仁 ( えんしょのじん )
部下をいたわることをいう。
楚の兵法家の呉子が部下の兵の疽(悪性のできもの)の血膿(ちうみ)を吸ってやった故事。
52. 燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや
( えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや )
凡人などに大人物の遠大な心がわかるはずがない。
燕や雀のような小さい鳥には、鴻(おおとり)や鵠(白鳥)のような大きな鳥の心はわからない。
秦末に陳渉が言った有名な言葉。
53. 遠水近火を救わず ( えんすいきんかをすくわず )
遠いところにいくら沢山水があっても、隣の火事を消すには間に合わないことから、遠いものは急場の役に立たないたとえ。
【類句】 遠くの親類より近くの他人
54. 淵中の魚を知る者は不祥なり
( えんちゅうのさかなをしるものはふしょうなり )
秘密を知ることは身のためにならないことがあること。
また、政治を行なうのに重箱のすみまでほじくるように、小さなことまで干渉するやり方はよくない、ということのたとえ。