90. 枝を切って根を枯らす ( えだをきってねをからす )
木を枯らそうとするには、まずその枝を切り落として坊主にする、ということから、
敵を倒すのに、始末しやすい末端を攻撃し、自然に敵の本拠が衰えるのを待つ、というやり方のことをいう。
【類句】 葉を截ちて根を枯らす
91. 枝本より大なれば必ず披く ( えだもとよりだいなればかならずひらく )
木の枝が幹より太い場合には、その木は折れなければ必ず裂ける。
本が弱くて末がはびこれば危険であるというたとえ。
92. 枝葉のしげりは実少し ( えだはのしげりはみすこし )
木に枝や葉があまりしげるものは実が少ない。
人もことばの多いものは誠意や実行することが少ない、という意味。
93. 枝は枯れても根は残る ( えだはかれてもねはのこる )
災いや悪事の根を絶つことは難しい、というたとえ。
94. 連枝 ( れんし )
枝を連ね幹と同じくする、ということから、貴人の兄弟をいう。
95. 落下枝に上り難し破鏡再び照らさず
( らっかえだにのぼりがたしはきょうふたたびてらさず )
散った花は咲いていた枝に返らず、割れた鏡は、二度と元のようにまとまってものを映さない、ということから、
一度別れた夫婦は、二度と元通りにならないことをいう。
【類句】 覆水盆に返らず
96. 吹く風枝を鳴らさず ( ふくかぜえだをならさず )
吹く風も静かで木の枝も動かない、ということから、世の中がよく治まっていて太平無事なことをいう。
97. 曲れる枝には曲れる影あり ( まがれるえだにはまがれるかげあり )
形が正しければ影も正しく、形が曲がっていれば影も曲がっているということで、
悪い結果はすべて悪い原因から生じるものだということ。
98. 鳩に三枝の礼あり烏に反哺の考あり
( はとにさんしのれいありからすにはんぽのこうあり )
鳩は親鳥から三本下の枝に止まる。烏は養われた恩を忘れずに、成育してからは親鳥の口にえさを含ませて恩を返す。
烏ですら子は親に礼儀を守り孝養を尽くしている、ということ。
99. 連理の枝 ( れんりのえだ )
根本は別々の二本の木の枝が、途中でくっついて、木目が連なった木のことで、男女の相思相愛の仲をいう。
100. 越鳥南枝に巣くう ( えっちょうなんしにすくう )
故郷が忘れがたいたとえ。
南方の揚子江の南、越の国から北国に飛んで来た渡り鳥は、故郷を慕って必ず南側の枝を選んで巣を作る。
101. 陰に居て枝を折る ( かげにいてえだをおる )
木の影で涼をとっていた者がその木の枝を折る。恩人に仇をすること。
【類句】 恩を仇で返す
102. 直き木に曲がる枝 ( なおききにまがるえだ )
まっすぐな木でさえ、曲がった枝がついている。正しい人にも欠点や短所があるということ。
103. 根浅ければ則ち末短く本傷るれば則ち枝枯る
( ねあさければすなわちすえみじかくもとやぶるればすなわちえだかる )
根ががっちりして強くなっていなければ枝葉も生長しない。
そして幹がいたんでは枝は枯れるのである。大台を固くせよというたとえ。
104. 人の女房と枯木の枝振り ( ひとのにょうぼうとかれきのえだふり )
良かろうが悪かろうがどうでもよいこと。
よその女房や枯木では、気にやんでみたところでしょうがない。
105. 天に在らば比翼の鳥地に在らば連理の枝
( てんにあらばひよくのとりちにあらばれんりのえだ )
玄宗と楊貴妃との交情のむつまじいさまをあらわした句で、夫婦の情愛の深いたとえ。
「比翼の鳥」は、伝説上の鳥で、雌雄各一目・一翼で、いつも一体となって飛ぶというもの。
また、翼を並べて飛ぶ鳥のこと。転じて、男女の契りの深いことにたとえる。
「連理の枝」は、一本の木の枝が、他の木の枝と連なって、一本になったもので、男女夫婦の契りのむつまじいのにたとえる。
106. 梅に鶯 ( うめにうぐいす )
よいとりあわせのたとえ。
107. 桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿 ( さくらきるばかうめきらぬばか )
桜と梅の剪定法を教える言葉。桜は枝や幹を切るとそこから腐りやすいので切ってはいけないが、
梅は切らないとむだな枝が伸びて翌年花が咲かなくなる。
108. 花は桜木人は武士 ( はなはさくらぎひとはぶし )
花の中では桜が最もすぐれているように、士農工商と言われる通り、人の中では武士が最もすぐれている。
【参考】 「花は三吉野人(みよしの)は武士」ともいう。
109. 桐一葉 ( きりひとは )
桐はほかの木よりも早く秋の気配を感じて落葉する、ということから、
一枚の桐の葉の落ちるのを見て、形勢の悪化、衰亡の兆しが現れたことの暗示とする。
【参考】 「一葉落ちて天下の秋を知る」と同じ。
110. 本木にまさる末木なし ( もときにまさるうらきなし )
最初に伸びた幹以上に太く育つ枝はない。色々振り返ってみても、初めに関係のあったものより、優れた物はない。
次々に妻を替えてみても、最初の配偶者が結局一番よい、という意味で使うことが多い。
111. 樹静かならんと欲すれども風止まず
( きしずかならんとほっすれどもかぜやまず )
風に吹かれている木はじっと静かになりたいと思っても、風のほうで吹くのをやめてくれない。ままにならぬことを嘆く言葉。
親孝行をしようと思っても、その時まで親が生きてくれないから、親の生存中に孝養を尽くすように心がけよ、という意味。
【参考】 「風樹(ふうじゅ)の嘆(たん)」ともいう。
【類句】 孝行のしたい時分に親はなし
112. 大樹の下に美草なし ( たいじゅのもとにびそうなし )
大木のかげになっているところには、よい草は生えない。
人材の進路のふさがっているところには、有能な人は寄ってこないというたとえ。
113. 一樹の陰一河の流れも他生の縁
( いちじゅのかげいちがのながれもたしょうのえん )
いっしょに同じ木の陰に宿り、いっしょに同じ川の水を飲むのも、すべて前世からの因縁である。
お互いに仲良くし、親切にすべきである、という仏教の精神。
【参考】 「他生」は「多生」とも書く。
【類句】 袖すり合うも他生の縁
114. ヒ蜉大樹を撼かす ( ひふたいじゅをうごかす )
身の程を知らないたとえ。「ヒ蜉」は大きな蟻。大蟻が自分の微力を考えずに、大木を動かそうとする。
【参考】 「ヒ」は、むしへんに「比」と書く。
【類句】 蟷螂の斧
115. 寄らば大樹の蔭 ( よらばたいじゅのかげ )
木の下に身を寄せるならば、小さい木より大木の下のほうがよい。
勢力のある者を頼るほうが、安全でもあり利益も多い、という意味。
【参考】 「立ち寄らば大樹の陰」ともいう。
116. 立ち寄らば大樹の陰 ( たちよらばおおきのかげ )
身を寄せるならば、小さい木よりも大きい木のほうが安心である。
人に頼るならば、勢力のある人のほうが安全で頼りになるという意味。
【類句】 寄らば大樹の陰
117. 山高きが故に貴からず樹有るを以て貴しとなす
( やまたかきがゆえにたっとからずきあるをもってたっとしとなす )
山は高いからといって貴いわけではなく、そこに木が生えているから貴いのである。
人も見かけが立派だからといって貴いのではなく、人格・知恵など内容が伴って初めて立派だといえるのである、という意味。