60. 大廈の材は一丘の木にあらず
( たいかのざいはいっきゅうのきにあらず )
大きい建物の用材は、一つの山から切り出した木だけではない。
大きな事業は、必ず大勢の力によるもので、決してひとりの力ではできないことのたとえ。
61. 下駄も阿弥陀も同じ木のきれ ( げたもあみだもおなじきのきれ )
足にはかれる下駄も人におがまれる仏像も、もとは同じ木からできたものである。
はじめ(もと)は同じでも、末には非常に違うことのたとえ。
62. 擂粉木で重箱洗う ( すりこぎでじゅうばこあらう )
すみずみまで行き届かないこと。大まかなことのたとえ。
63. 擂粉木に注運 ( すりこぎにしめ )
不似合いなこと。
64. 擂粉木に羽が生える ( すりこぎにはねがはえる )
あり得ないこと。
65. 擂粉木の年は後へよる ( すりこぎのとしはあとへよる )
すりこ木は古いほど短い。
66. 擂粉木を食わぬ者なし ( すりこぎをくわぬものなし )
身分の上下を問わず、みそ汁を食べない者はないということ。
みそをする時に、すりこ木のすり減ったものが入ってしまい、みそと一緒に食べてしまうことからこう言う。
67. 手足を擂粉木にする ( てあしをすりこぎにする )
手足をすり減らすほどに、一生懸命に奔走することの形容。
68. 女房は貸すとも擂木は貸すな
( にょうぼうはかすともすりこぎはかすな )
使うと減るものは貸すなということ。
69. 連木で重箱を洗う ( れんぎでじゅうばこをあらう )
極めて大ざっぱなこと。
すりこぎで重箱のすみずみまで洗えるはずはないから、いきおい大ざっぱになる。
70. 連木で腹を切る ( れんぎではらをきる )
実現不可能なことのたとえ。
【参考】 「連木」はすりこぎのこと。
71. 椋の木の下にて榎の実を拾う
( むくのきのしたにてえのきのみをひろう )
あくまで自分のいいだしたことを通そうとすること。
72. 楠の木分限梅の木分限 ( くすのきぶんげんうめのきぶんげん )
楠の木のように成長がおそくて大木なった金持ちと、梅の木のように成長が早いにわか金持ち。
堅実な財産家とにわか成金とを比較したたとえ。
73. 驚き桃の木山椒の木 ( おどろきもものきさんしょのき )
これは驚いた、というときに使う語。
「驚き」の「き」に「木」をかけて語呂合わせした語。
74. 日陰の桃の木 ( ひかげのもものき )
細くてひょろひょろしている人のたとえ。
75. 柳に風折なし ( やなぎにかざおれなし )
柳は風が吹いても、他の木のように折れることはない、ということから、
柔軟なものは剛直なものよりも、かえってよく事に耐えることができる、という意味で、
一見弱々しい人のほうが、重い試練に耐え抜くことが多いことをいう。
【参考】 「柳に雪折れなし」ともいう。
76. 柳に風 ( やなぎにかぜ )
柳が風になびくように、他人の文句などを、上手に受け流して逆らわない。
【参考】 「柳に風と受け流す」という。
【例】 「嫌味を言われたが、柳に風と受け流した」
77. 柳は緑花は紅 ( やなぎはみどりはなはくれない )
春の景色の美しさをいったことば。また、物にはそれぞれ、その物にふさわしい特性があるということ。
78. 柳暗花明 ( りゅうあんかめい )
柳の葉は茂って暗く、桃の花は明るく咲いている、ということから、春の景色の美しい形容。
79. 柳眉を逆立てる ( りゅうびをさかだてる )
「柳眉」は美人の眉のことで、美人が激しく怒る様子。
【例】 「約束の時間に遅れてしまい、彼女に柳眉を逆立てて怒られた」
80. いつも柳の下にどじょうはおらぬ
( いつもやなぎのしたにどじょうはおらぬ )
一度そこにいたからといって、いつも同じ柳の木の下にどじょうがいるわけではない。
そのことで一度味を占めたからといって、それをすればいつも同じようなうまいことがあるとは限らない、という意味。
81. 蒲柳の質 ( ほりゅうのしつ )
か弱い体質。からだが弱いこと。「蒲柳」は川柳(かわやなぎ)。松や柏(このてがしわ)に比して弱くしなやかであるところから。
【参考】 『晋書(しんじょ)』顧悦之(こえつし)伝には「蒲柳の常質」とある。
82. 猫にまたたび ( ねこにまたたび )
その人の大好物の意で、それをあてがえば機嫌がよくなるような場合に用いる言葉。
【参考】 「またたび」は、山中に自生するつる性の植物で、茎・葉・実ともに猫類の好物。
【例】 「猫にまたたびで、彼女にケーキをごちそうしたらすっかり機嫌が直った」
83. 猫にまたたびお女郎に小判 ( ねこにまたたびおじょろうにこばん )
猫にまたたびを、遊女に小判を与える。極めて効果があることをいう。
84. 藪の中のうばら ( やぶのなかのうばら )
うばらはとげのある小さな木のこと。交わる友が悪ければ、草やぶの中のばらが曲がったりからんだりして、
まっすぐに育たないように、よい人にはならないこと。
【類句】 朱に交われば赤くなる
85. 艪を押して柘は持たれぬ ( ろをおしてつげはもたれぬ )
一時に一人で両方はできないことをいう。
86. 栴檀は双葉より芳し ( せんだんはふたばよりかんばし )
栴檀という香木は芽ばえた時から既によい香気を発することから、
将来大成する人物は、子供の時から優れたところがある、というたとえ。
【参考】 双葉は「二葉」とも書く。
87. おうら山吹日陰の紅葉 ( おうらやまぶきひかげのもみじ )
おうらやましい、と人の身の上をうらやんで、我が身を日陰のもみじにという秀句。
88. 細くも樫の木 ( ほそくもかしのき )
性のよいものは小さくても丈夫だということ。
89. 奥山の杉のともずり ( おくやまのすぎのともずり )
自業自得のこと。奥山の杉の枝と枝とがすれ合って、自然発火して山火事を出すこと。