33. 愚者の百行より智者の居眠り
( ぐしゃのひゃっこうよりちしゃのいねむり )
つまらない物はいくらあっても役に立たないから、よい物がごく少しでもあったほうがよいということ。
雀の千声より鶴の一声である。
34. 愚者も一得 ( ぐしゃもいっとく )
愚か者の考えにも、一つぐらいは良い考えがある。
35. 楠の木分限梅の木分限 ( くすのきぶんげんうめのきぶんげん )
楠の木のように成長がおそくて大木なった金持ちと、梅の木のように成長が早いにわか金持ち。
堅実な財産家とにわか成金とを比較したたとえ。
36. 薬九層倍 ( くすりくそうばい )
薬は原価に比べて、売価が非常に高く、暴利を得ている、ということ。
【類句】 呉服五層倍 / 百姓百層倍
37. 薬の灸は身にあつく毒な酒は甘い
( くすりのきゅうはみにあつくどくなさけはあまい )
薬になるお灸は熱く、毒になる酒はうまい。
ためになる忠言は聞きづらく、遊びの誘いやおべっかはうれしいものだから、つい身を誤る。
38. 薬人を殺さず薬師人を殺す
( くすりひとをころさずくすりしひとをころす )
薬が人を殺すのではなく、医者が人を殺すのである。
罪はその物にあるのではなく、それを運用する人にある、という意味。
【参考】 「薬師」は医者のこと。
39. 薬も過ぎれば毒となる ( くすりもすぎればどくとなる )
効くと言われて飲む薬も、その程度を過ごせばかえって害をもたらす。
【参考】 「過ぎたるは猶お及ばざるがごとし」と同じ。
40. 薬より養生 ( くすりよりようじょう )
病気になってから薬を飲むよりも、病気にならないように、平素の養生が大切である、という意味。
41. 屑も宝 ( くずもたから )
くずのようなものでも時に役立つことがある。
廃物も利用すれば役に立つ。
42. 癖ある馬に能あり ( くせあるうまにのうあり )
一癖ある者には、また一面では、何らかの取り柄があるものである。
【参考】 「癖ある馬に乗りあり」ともいう。
43. 糞船にも船頭 ( くそぶねにもせんどう )
糞尿を運ぶ船にも船頭がいる。
どんなつまらない仕事にもそれぞれ係が必要だということ。
44. 糞も味噌も一緒 ( くそもみそもいっしょ )
善悪・美醜・清濁の区別のないこと。
よい物悪い物の区別をしないこと。
45. 管の穴から天を覗く ( くだのあなからてんをのぞく )
管の穴から天を覗くように、狭い見識で広大な物事を見ても真相はわからないことから、見識の狭いことをいう。
【類句】 葦の髄から天のぞく / 管を以て天を窺う
46. 口あれば京へ上る ( くちあればきょうへのぼる )
わからないことでも人に聞けばやれる、その気になれば何事も出来るという意味。
47. 口が動けば手が止む ( くちがうごけばてがやむ )
話しに夢中になれば、仕事をする手は留守になる。黙って働け、ということ。
48. 朽ち木は柱にならぬ ( くちきははしらにならぬ )
腐った木は柱には使えない。根性の腐った者は使いものにならない、という意味。
【参考】 「朽木は雕る可からず」に同じ。
49. 口自慢の仕事下手 ( くちじまんのしごとべた )
口ばかり達者で、さっぱり仕事のできないこと。
50. 口で貶して心でほめる ( くちでけなしてこころでほめる )
表面では悪く言いながら、心の中では逆にほめていること。
51. 口では大坂の城も建つ ( くちではおおさかのしろもたつ )
口先では、どんなこともたやすくできるように言うことができる、という意味。
【参考】 明治四年に「大坂」を「大阪」と改めた。
52. 口と財布は緊めるが得 ( くちとさいふはしめるがとく )
多弁と浪費を慎め。おしゃべりとむだ使いはしないのが利益であるとのたとえ。
53. 口と虎は身を破る ( くちととらはみをやぶる )
ものの言い方が悪いために、身を滅ぼすような大事を招くことのたとえ。
54. 口と腹 ( くちとはら )
口で言うことと、腹で思っていることは別である。
55. 口に風邪をひかす ( くちにかぜをひかす )
むだなことをしゃべること。言ったことがむだになること。
56. 口に税金はかからない ( くちにぜいきんはかからない )
何にでも税金がかかってくる世の中だが、ただしゃべっているだけなら、
どんなもうけ話にも税金はかからない。言葉だけなら勝手なことが言えるという意味。
【参考】 「口に年貢はいらぬ」ともいう。
57. 口に入る物なら按摩の笛でも
( くちにはいるものならあんまのふえでも )
意地きたなくて、なんでも食うことのたとえ。食い意地がはっていること。
58. 口には関所がない ( くちにはせきしょがない )
人の口には、出してはいけないものを止める関所はない。何を言っても構わない。
59. 口に密あり腹に剣あり ( くちにみつありはらにけんあり )
見かけは柔和そうであるが、内心は非常に陰険な人のたとえ。
口では密のような甘い言葉を言っているが、腹の中には剣のような心を持っている。
口先ではうまいことを言いながら、心の中では人を害するたくらみを持つ、という意味。
【参考】 唐の玄宗(げんそう)の宰相、李林甫(りりんぽ)を評した語。
【類句】 笑中に刀あり
60. 口は口心は心 ( くちはくちこころはこころ )
口で言うことと、心に思うところが一致しない。
口と心が別々であること。裏腹なこと。
61. 口は重宝 ( くちはちょうほう )
口は便利なもので、口先では何とでも言える。
62. 口は閉じておけ目は開けておけ ( くちはとじておけめはあけておけ )
言葉を慎んで活眼を開け。沈黙を守ってよく観察せよ、という意味。
【参考】 Keep your mouth shut and your eyes open. の訳語。
63. 口は禍の門 ( くちはわざわいのかど )
禍の原因は口である。うっかり言った言葉から失敗を招くことがある。言葉は慎まなければならない、という戒めとして使う。
【参考】 「口は禍の本、舌は禍の根」や「口は禍の許」ともいう。
【類句】 病は口より入り禍は口より出づ
64. 唇亡びて歯寒し ( くちびるほろびてはさむし )
互いに助け合うものの一方が滅びれば、他の一方も危なくなるたとえ。
唇がなくなると歯が寒くなる。一国が滅びるとその隣国も危なくなるということ。
【類句】 唇歯輔車