65. 口も八挺手も八挺 ( くちもはっちょうてもはっちょう )
挺には「すぐれる・まさる」の意味があり、器用なことを八挺という。言うことも言うが、やることもやるという意味。
【参考】 「口も八丁手も八丁」「口八丁手八丁」ともいう。
【例】 「彼女は口も八挺手も八挺で、会社でどんどん昇進していった」
66. 口より出せば世間 ( くちよりだせばせけん )
いったん口をすべらせると、どんな秘密も世間に発表したのと同じである。
しゃべるのは慎重にしなければいけないことのたとえ。
67. 口を守る瓶の如くす ( くちをまもるかめのごとくす )
軽々しくしゃべらないこと。
かめの水を一度ひっくり返せば元に返らぬから、言葉を慎めという戒め。
68. 衢道を行く者は至らず ( くどうをいくものはいたらず )
わかれ道で迷っている者は目的地に到着しない。
一つのことに専心しないで、あれこれ目移りする者は成功しないことのたとえ。
【参考】 「衢道」は四方に通じる道。
69. 国に諫むる臣あればその国必ず安し
( くににいさむるしんあればそのくにかならずやすし )
君主の政治や行為を諫める臣下があれば、その国は安全である。
これは会社でも家でも同じである。
70. 国に盗人家に鼠 ( くににぬすびといえにねずみ )
国に盗賊がおり家に鼠がいるように、物事には必ずこれを害するものがある。
71. 国乱れて忠臣見る ( くにみだれてちゅうしんあらわる )
国が乱れると忠臣がはっきりする。国がよく治まっている時は、家来のだれが忠臣で誰が不忠の臣であるかわからないが、
国が乱れた時に、誠実な臣とそうでないものとの違いがはっきりする。
【参考】 『老子』十八には「国家昏乱(こんらん)して忠臣有り」とある。
72. 国破れて山河在り ( くにやぶれてさんがあり )
「国」は国都。戦乱などのために国都は破壊されても、自然の風物だけはもとのままである、という感慨の言葉。
【参考】 芭蕉の『奥の細道』で、平泉を訪れたところにこの句を引用している。
73. 九年面壁 ( くねんめんぺき )
一つのことに長い年月のあいだ心を集中することのたとえ。物事を根気よく続けてすること。
達磨大使が嵩山の少林寺で、絶壁に向かって九年間座禅して修業して悟ったという故事。
74. 愚の骨頂 ( ぐのこっちょう )
どんな点からみてもばかげていて、話しにならない様子。
75. 苦は楽の種 ( くはらくのたね )
今のうちに苦労するのは、先にいって楽をするための種をまくようなものである。
【参考】 「楽は苦の種、苦は楽の種」と使う。
76. 首くくりの足を引く ( くびくくりのあしをひく )
滅びかかっている者に、いっそう滅亡を早めるようなことをするたとえ。
77. 首根っこを押さえる ( くびねっこをおさえる )
相手の首筋を後ろから押さえて動けないようにすることから、相手の弱みなどを押さえ、有無を言わせないようにする。
78. 窪い所に水溜まる ( くぼいところにみずたまる )
くぼんだところに水がたまるように、集まるべきところに自然に寄り集まってくること。
善悪ともに使い、利益のあるところに人は寄り集まってくる、不良のとこには不良が寄り集まり、
事件が起きると刑事が寄ってくる。生活の苦しい者に、病気などほかの苦しみがついてくる。
79. 雲にかけ橋 ( くもにかけはし )
雲にはしごをかける、望んでみたとて、とても達しがたいことのたとえ。
80. 蜘蛛の子を散らすよう ( くものこをちらすよう )
大勢の人が一度にぱっと逃げて行くのにたとえる。
蜘蛛は袋の中に数百の卵を生むが、袋を破ると多くの子が四方に散るところからいう。
81. 雲は竜に従い虎は風に従う
( くもはりゅうにしたがいとらはかぜにしたがう )
性格気質を等しくし、類を同じくするものは互いに引き合うこと。
りっぱな君主のもとには立派な賢臣が出て君主を助けること。また同気相求めることをいう。
82. 雲を霞と ( くもをかすみと )
一目散に逃げて行って、姿をくらましてしまう様子。
83. 供養より施行 ( くようよりせぎょう )
死んだ人に物を供えて回向(えこう)するのもよいが、それにより困っている人にほどこすほうが意義があるということ。
信心もよいが現実を忘れたものではいけない、という意味。
84. 食らえどもその味わいを知らず ( くらえどもそのあじわいをしらず )
精神を集中してやらないと、何事も身につかないたとえ。
心が他の事に奪われている時は、何を食べてもその味がわからない。
85. 暗がりから牛 ( くらがりからうし )
物事の形や色の区別がはっきりしないさま。また、動作がのろく、はきはきしないさま。
【参考】 「暗がりの牛」「暗闇から牛を引き出す」ともいう。
86. 暗りから暗り ( くらがりからくらがり )
思案に迷って考えがつかないこと。わけのわからないさま。
87. 暗りに鬼つなぐ ( くらがりにおにつなぐ )
奥底が知れず気味の悪いたとえ。なにが出てくるかわからないこと。
88. 闇がりの犬の糞 ( くらがりのいぬのくそ )
闇がりでは犬の糞は見えないことから、人の気付かない失敗は知らんふりをする、という意味。
89. 水母の風向かい ( くらげのかぜむかい )
じたばたしても無駄なことのたとえ。
水面に浮いているようなくらげが、風上に向かって進もうとしてもできるわけがない。効果なし。
90. 暗闇から牛を牽き出す ( くらやみからうしをひきだす )
暗くて何が何だかよくわからないことをいう。
また、鈍重ではっきりしない人のたとえ。
【類句】 暗がりから牛
91. 暗闇の鉄砲 ( くらやみのてっぽう )
暗闇で目標もわからぬままに鉄砲を撃つ。向こう見ずに、やみくもに事を行う意。
【参考】 「暗がりの鉄砲」「闇夜に鉄砲」ともいう。
92. 苦しい時に親を出せ ( くるしいときのおやをだせ )
言いわけに困った時は、親の病気などを持ち出すと何とかなるものである。
93. 苦しい時の神頼み ( くるしいときのかみだのみ )
普段は信心を持たない者でも、窮地に立った時だけ神仏に救いを求めることから、
頼れるものには何にでもすがろうという気持ちを抱くこと。
【参考】 「切ない時の神頼み」「叶わぬ時の神頼み」などともいう。
【例】 「苦しい時の神頼みで、お守りを持ってきた」
94. 車は海へ船は山へ ( くるまはうみへふねはやまへ )
地位または用途がさかさまになっていることのたとえ。
物事があべこべになっていることをいう。
95. 紅は園生に植えても隠れなし
( くれないはそのうにうえてもかくれなし )
ベニバナは花のたくさん咲いている庭園に植えても人目を引くものである。
才能のすぐれた人はどこにいても自然と目立つものである、という意味。
96. 暮れぬ先の提灯 ( くれぬさきのちょうちん )
日が暮れる前から提灯にあかりをつけて歩く。必要もないのに手回しだけよい。
先回りしすぎてかえって間が抜けている、という意味。