34. 武士は喰わねど高楊枝 ( ぶしはくわねどたかようじ )
武士は体面を重んじるので、たとえ食事をしなくとも、食べたあとのようにゆうゆうと楊枝を使う、ということから、
貧しい境遇にあっても気位を高く持つべきである、という意味。
35. 不肖 ( ふしょう )
父に肖(に)ない愚か者という意味。愚かなこと。また、自分のことを謙遜していう語。
36. 夫唱婦随 ( ふしょうふずい )
夫が言い出し、妻がそれに従うこと。夫婦がよく和合している意。
37. 不惜身命 ( ふじゃくしんみょう )
仏教でいう正法のためには身をこなにしても惜しまないということ。法義のためには身命を惜しまないということ。
38. 無精者の一時働き ( ぶしょうもののいっときばたらき )
ふだんなまけてばかりいる者が、急に思い立ってちょいとばかり働くこと。そんなに長続きしないことのたとえ。
39. 負薪の憂い ( ふしんのうれい )
自分の病気を謙遜(けんそん)していう語。薪(たきぎ)を背負った疲れによる病気。
また、病気で薪が背負えなくなった意。
【類句】 采薪の憂い
40. 不世出 ( ふせいしゅつ )
めったに世に現れないほど、すぐれていること。
41. 浮世夢の如し ( ふせいゆめのごとし )
人生ははかないものである。はかないこの世は夢のようである、という意味。
42. 布施だけの経を読む ( ふせだけのきょうをよむ )
報酬のぶんだけしか仕事をしないということ。現金な仕事をこういう。
43. 符節を合するが如し ( ふせつをがっするがごとし )
「符節」は、竹や木の札の上に文字を書き、二つに割って、二人がその一つを持ち、同一かどうかの証拠としたことから、
ぴったりと一致すること。割り符。割り符を合わせたように、ぴったりと一致する、という意味。
44. 布施ない経に袈裟をおとす ( ふせないきょうにけさをおとす )
僧侶は布施をくれない時には、袈裟をつけずにお経を読むが、このことから転じて、
人がその報酬の多い、少ないによって労働を出し惜しみすることをいう。
45. 伏せる牛に芥 ( ふせるうしにあくた )
ねている牛にごみをかけるように、弱い者や死んでしまった者に、これ幸いと罪をなすりつけること。
46. 不善人といる飽魚の肆に入るがごとし
( ふぜんにんといるほうぎょのしにいるがごとし )
「飽魚」はひもの、また塩漬けの魚。悪人といっしょにいるのは、魚屋の店に入るようなもので、はじめは魚くさいが、
しばらくいると、いつの間にか魚のにおいが感じられなくなるように、いつかは悪になれさせられてしまうものである。
47. 扶桑 ( ふそう )
日本をさしていう。もと、東海の日の出る所にあるという神木、また、その土地の意。
48. 不足奉公は両方の損 ( ふそくぼうこうはりょうほうのそん )
不平を抱きながら奉公するのは、主人も奉公人も共に損であるという意。
【参考】 「述懐奉公身を持たず」ともいう。
49. 不退転 ( ふたいてん )
へこたれずにがんばること。もと、仏道の修行を積んで、退くことがなくなる意。
【参考】 「不退転の決意を固める」と使う。
50. 豚に念仏猫に経 ( ぶたにねんぶつねこにきょう )
理解できないものに、どんな有り難い教えを説いても無駄である。
【類句】 馬の耳に念仏
51. 豚に真珠 ( ぶたにしんじゅ )
高価なものでも、その価値を知らない者には役に立たないことのたとえ。
【参考】 新約聖書に、To cast pearls before swine. とある。
【類句】 猫に小判
52. 二葉にして絶たざれば斧を用うるに至る
( ふたばにしてたたざればおのをもちうるにいたる )
何事も初めのうちに処置しておかないと、のちには大事になって、処置に困るようになる。
53. 二人は伴侶三人は仲間割れ
( ふたりははんりょさんにんはなかまわれ )
二人なら仲良くやっていけるが、三人になると、とかく一人が仲間はずれになってうまく行かなくなることが多い、という意味。
【参考】 Two is company, but three is none. の訳語。
54. 豚を盗んで骨を施す ( ぶたをぬすんでほねをほどこす )
大悪を犯しながらわずかな慈善を施すこと。
55. 淵に臨みて魚を羨むは退いて網を結ぶに如かず
( ふちにのぞみてうおをうらやむはしりぞいてあみをむすぶにしかず )
淵に面して魚を欲しいと思ってただみているよりは、帰って魚を取る網を編んだほうがよい、ということから、
他人の幸福をうらやむよりは、自分で幸福を得る工夫をすべきである、という教訓。
56. 淵は瀬となる ( ふちはせとなる )
世の中の移り変わりや、人の浮き沈みのはげしいことのたとえ。
【類句】 飛鳥川の淵瀬
57. 釜中魚を生ず ( ふちゅううおをしょうず )
久しい間飯を炊かないで、釜の中に魚が生じるの意。つまりきわめて貧しいこと。
貧しくて、煮て食べるものが何もないこと。
58. 釜中の魚 ( ふちゅうのうお )
危険が、目前に迫っている境遇にあるたとえ。
魚がやがて煮られるのも知らないで、釜の中で泳いでいるという意味。
59. 物色 ( ぶっしょく )
あちこち捜し求めること。もと、人相書きによって人を捜し求める、という意味。
60. 仏法と藁屋の雨は出て聞け ( ぶっぽうとわらやのあめはでてきけ )
仏教の説教を聞かないでは何もわからない、とにかく耳をかたむけることである。
わらぶきの家の中では雨が降っても音がしないから、外に出て聞いてみなければならない。
61. 仏種は縁より起こる ( ぶつしゅはえんよりおこる )
「仏種」とは、仏果つまり仏を信仰することによって得られる結果、よいむくいを生ずる因種をいう。
仏道にはいるということはちょっとしたきっかけによる。
62. 筆を曲ぐ ( ふでをまぐ )
わざと事実を曲げて書くこと。
63. 不動の金縛り ( ふどうのかなしばり )
不動明王の威力によって、金のくさりでしばったように少しも動けなくする法。これは修験者の必法である。
64. 舟盗人を徒歩で追う ( ふなぬすびとをかちでおう )
舟を盗んでそれに乗って逃げる者を陸上を走って追いかけることで、むだな骨折りのたとえ。
やりかたが適当でないことのたとえ。目的を達する方法か手段を誤ること。
65. 鮒の仲間には鮒が王 ( ふなのなかまにはふながおう )
つまらないものの中では、つまらないものが大将になることで、つまらない人間の中には立派な人はいないということ。
66. 舟に刻みて剣を求む ( ふねにきざみてけんをもとむ )
時勢の移り変わりを知らずに、古い考えや習慣を固く守ることの愚かさのたとえ。
川を渡る途中で舟から落とした剣を捜すのに、落とした場所の舟べりに傷をつけ、
向こう岸に着いて、その印のところから水に入って剣を捜したが、見つからなかったという故事。
【類句】 株を守りて兎を待つ