35. 海濶くして魚の踊るに委す ( うみひろくしてさかなのおどるにまかす )
大海が広いように細かいことにくよくよしないこと。寛容の徳。
36. 木に縁りて魚を求む ( きによりてうおをもとむ )
木によじ登って魚を取ろうとすることから、手段を誤っては、求めようとしても得られない、という意味。
【類句】 畑にはまぐり
37. 水積もりて魚集まる ( みずつもりてうおあつまる )
水の深く豊かな所には、自然に魚が沢山集まってくるように、
利益のある所には、人も自然に集まってくるものである、というたとえ。
38. 水清ければ魚棲まず ( みずきよければうおすまず )
あまりに清廉潔白すぎると、人に親しまれないたとえ。水があまり清らかに澄みすぎていると魚が住みつかない。
人も潔白厳格にすぎて人を許さないと、人が寄りつかないで孤立する、という意味。
【類句】 水清くて大魚なし
39. 水広ければ魚大なり ( みずひろければうおだいなり )
水が広ければ魚は大きく、山が高ければ木は高くなる。
人も成功するためには、働く場所がよくなければならない。
上に立つ者の度量が大きくなければ、すぐれた部下は集まらない。
40. 釣り落とした魚は大きい ( つりおとしたさかなはおおきい )
釣り落として逃がした魚は、実物より大きく思える。
手に入れかけて失ったもの、逃がしたチャンスなどを惜しむことなどに使う。
【参考】 「逃がした魚は大きい」ともいう。
41. 網にかかった魚 ( あみにかかったうお )
いくらもがいても逃げ出せないことのたとえ。
42. 不善人といる飽魚の肆に入るがごとし
( ふぜんにんといるほうぎょのしにいるがごとし )
「飽魚」はひもの、また塩漬けの魚。悪人といっしょにいるのは、魚屋の店に入るようなもので、はじめは魚くさいが、
しばらくいると、いつの間にか魚のにおいが感じられなくなるように、いつかは悪になれさせられてしまうものである。
43. 香餌の下必ず死魚あり ( こうじのもとかならずしぎょあり )
利欲のために迷わされて、身を滅ぼすことのたとえ。
「香餌」は、よいにおいのするえさ。
44. 蟹の念仏 ( かにのねんぶつ )
口の中で何かわからぬことをぶつぶつ言うこと。
45. 蟹の横這い ( かにのよこばい )
蟹の歩き方のように、他から見ると不自由のようでも、当人にとっては自然なことのたとえ。
46. 蟹は甲羅に似せて穴を掘る ( かにはこうらににせてあなをほる )
人はそれぞれ自分に釣り合った考えや行動をするものである、という意味。
47. 慌てる蟹は穴に入れぬ ( あわてるかにはあなにはいれぬ )
あわてると、ふだん慣れていることでも失敗することがある。
危急の時ほど落ちつくことが肝心だという戒め。
【類句】 慌てる乞食は貰いが少ない
48. 月夜の蟹 ( つきよのかに )
月夜のかにには身が少ないというところから、頭の足らない人のことをいう。
49. 河豚は喰いたし命は惜しい ( ふぐはくいたしいのちはおしい )
河豚料理は、おいしいから食べたいが、中毒の危険があるから食べるのをためらう、ということから、
快楽は得たいけれど、あとのたたりがこわくてためらう、という意味。
【類句】 蜜は甘いが蜂が刺す
50. 河豚食う馬鹿食わぬ馬鹿 ( ふぐくうばかくわぬばか )
ふぐはうまい魚だが猛毒がある。しかしいちがいに恐れて、こんなにうまいもののあることを知らないで過ごすのだからやはり馬鹿である。
51. 河豚にもあたれば鯛にもあたる
( ふぐにもあたればたいにもあたる )
どこでわざわいが起こるかわからないということ。運が悪いときは何を食べても害になることがある。
52. 鯛なくば狗母魚 ( たいなくばえそ )
タイがなければエソで間に合わせる。つまり、なければ代用品でがまんするより仕方がないの意。
エソは体長約40センチ、細くて、上等のかまぼこ材料。しかしタイは魚の王で、エソの及ぶところではない。
53. 鯛の尾より鰯の頭 ( たいのおよりいわしのかしら )
大きい団体で、人のしりにつき従うよりも、小さい団体でもよいから、その長になれとのたとえ。
54. 鯛も一人はうまからず ( たいもひとりはうまからず )
鯛のようにうまいものでも、一人でポツンとして食べたのではうまくない。
食事は大勢でいっしょに食べるのがよいということ。
55. 蝦で鯛を釣る ( えびでたいをつる )
わずかな元手で大きな利益を得る。略して、「えびたい」ともいう。
【例】 「彼女に花を贈ったら付き合うことが出来た、海老で鯛を釣った気分だ」
【参考】 「えび」の部分は「海老」「エビ」とも書く。
56. うちの鯛より隣の鰯 ( うちのたいよりとなりのいわし )
自分の持っているものより、他人の持っているものの方がよいものに見え、うらやましく思う、ということ。
57. 腐っても鯛 ( くさってもたい )
たとえ腐っても鯛は魚の王である、ということから、
よいものはどんなに悪くなっても、または落ちぶれても、それだけの価値は失わない、という意味。
【参考】 「驎驎も老いては駑馬に劣る」は、この反対。
58. 河豚にもあたれば鯛にもあたる
( ふぐにもあたればたいにもあたる )
どこでわざわいが起こるかわからないということ。運が悪いときは何を食べても害になることがある。
59. 鯉の滝登り ( こいのたきのぼり )
中国の黄河の上流にある竜門の急流を登った鯉は、化して竜となる、という伝説から、人の栄達、立身出世することにいう。
【参考】 登竜門
60. 俎の鯉 ( まないたのこい )
俎の上に載せられて料理されようとしている鯉は潔くじっとしているということから、
相手にされるがままになっているほかにしかたがないこと。
また、そうなって、いまさらじたばたしてもしかたがないと思う気持ち。
【参考】 「俎の上の鯉」ともいう。
【類句】 俎上の魚
61. 生簀の鯉 ( いけすのこい )
死ぬべき運命にある身のたとえ。いけすに飼われている鯉は、いずれ料理される運命にあるということ。
【参考】 「生簀の魚(うお)」ともいう。
62. 麦飯で鯉を釣る ( むぎいいでこいをつる )
ちょっとの元手で大もうけをすることのたとえ。
【類句】 蝦で鯛を釣る
63. 及ばぬ鯉の滝登り ( およばぬこいのたきのぼり )
多く鯉を恋にかけて、かなう望みのない恋についていう。
また、いくら望んでも、とても目的を達する見込みのないことをいう。
64. 五月の鯉の吹き流し ( さつきのこいのふきながし )
さっぱりとして心にわだかまりのないたとえ。
端午(たんご)の節供に立てる鯉幟(こいのぼり)には腸(はらわた)がないからいう。
65. 江戸っ子は五月の鯉の吹き流し
( えどっこはさつきのこいのふきながし )
江戸っ子は言葉使いは荒っぽいが、腹の中はさっぱりしていて悪気がない。
66. 鮒の仲間には鮒が王 ( ふなのなかまにはふながおう )
つまらないものの中では、つまらないものが大将になることで、つまらない人間の中には立派な人はいないということ。
67. 轍鮒の急 ( てっぷのきゅう )
危難が目前に迫っているたとえ。
車の轍(車輪が通った跡)に出来た水たまりにいる鮒が、今にも水がなくなって死にそう、という意味。
【類句】 焦眉の急 / 遠水近火を救わず
68. 泥に酔った鮒 ( どろによったふな )
泥水の中であっぷあっぷしているふなのことで、いまにも息がきれそうにあえいでいることのたとえ。