1. 創痍未だ癒えず ( そういいまだいえず )
戦後まだ日が浅いこと。
「創痍」は刀きず。傷がまだ治りきらないという意味で、戦争による痛手から十分に立ち直っていないこと。
2. 滄海の遺珠 ( そうかいのいしゅ )
大海に取り残された真珠のこと。世に知られずに、埋もれている賢者にたとえて言う。
【参考】 「滄海」は、あおうなばら、大海。
3. 滄海の一粟 ( そうかいのいちぞく )
大海中の一粒のあわの意から、広大なものの中の、きわめて小さいもの。
宇宙における人間の存在など、はかないことにたとえる。
4. 喪家の狗 ( そうかのいぬ )
葬式のあった家の犬は、食べ物を与えてかまってもらえないのでやせ衰える、ということから、元気がなくやせて衰えている人のたとえ。
一説に家を失った宿なし犬ともいう。
5. 創業は安く守成は難し ( そうぎょうはやすくしゅせいはかたし )
新たに事業を起こすことよりも、その事業を維持して衰えないようにすることは、いっそう難しいことである。
唐の太宗が臣下に対して、創業と守成とどちらが難しいかと尋ねたのに対し、房玄齢が創業が難しいと答えたのに対し、
魏徴が守成が難しいと反発したという故事。
6. 糟糠の妻は堂より下さず ( そうこうのつまはどうよりくださず )
貧しい時から連れ添って苦労を共にしてきた妻は、自分が立身出世した後も大切にして座敷からおろさず、
まして他の女性に心を動かすようなことなどはしない。粗末な食べ物を食べて、共に苦労をしてきた妻ということ。
後漢の光武帝が宋弘に富貴になったら妻をかえたらどうかといった時に、宋弘が答えた言葉。
【参考】 「糟糠」は酒のかすと糠で粗末な食べ物。「堂」は座敷。
7. 桑梓 ( そうし )
故郷。郷里。昔は家の宅地の中に桑と梓(あずさ)の木を植え、蚕を飼い、器具を作ったから、桑と梓とは故郷を思い出す種となった。
8. 曽参人を殺す ( そうしんひとをころす )
うそもたび重なれば、人が信じるようになるというたとえ。
孔子の弟子で、孝行をもって有名な曽参の一族が人を殺した。
あわて者が曽参の母のところに来て、「曽参が人を殺した」と告げたが、
母は曽参を信じているので、「わが子に限って人を殺すはずがない」と言ってきかなかった。
ところが、またほかの者がきて同じことを言った。それでも母は平然として機を織っていたが、
またほかの者がきて曽参の人殺しを告げた。三度目にはさすがの母も機を捨てて、垣根をこえて走り出したという故事による。
9. 宋襄の仁 ( そうじょうのじん )
無用のあわれみ。不必要な情けをかけること。春秋時代、宋の襄公が楚の国と戦った時、
公子は敵の陣が整わないうちにお撃ちなさいと勧めたが、襄公は君子は人が困っている時に苦しめることはしないものだと言って攻撃せず、
敵に十分の準備をさせてから戦って負けてしまったという故事。
10. 騒人 ( そうじん )
詩文を作る人。風流の士。「騒」は憂いの意味。心に憂いをいだく人。
11. 滄桑の変 ( そうそうのへん )
世の中の移り変わりの激しいことのたとえ。
「滄海変じて桑田となる」の意で、「滄海」は青々とした大海原が、変じて桑畑となる、という意味。
【参考】 「桑田変じて滄海となる」ともいう。
12. そうは問屋が卸さない ( そうはとんやがおろさない )
問屋は客の期待するような安値では卸してくれない、ということから、自分に好都合なことばかりを考えても、
物事はそううまく期待通りにはいかない、ということ。
【例】 「楽して儲けようだなんて、そうは問屋が卸さない」
13. 双璧 ( そうへき )
どちらかがすぐれているとも定めかねる、二つのすぐれたもの。
「壁」は、円形で中央に穴が開いているドーナツ型の宝玉。一対の立派な宝玉の意味。
14. 草莽の臣 ( そうもうのしん )
仕官しないで民間にいる人。在野の人。「草莽」は、草むら、民間の意味。
15. 草木皆兵 ( そうもくかいへい )
敵を恐れるあまり、全山の草木までが、みな敵兵に見えるということ。
また、軍隊の勢いの盛んなさまにもいう。
16. 桑楡まさに迫らんとす ( そうゆまさにせまらんとす )
死期が近づき迫ること。
【参考】 「桑楡」は、夕日が樹上にかかっていること。転じて暮れ方、夕日、晩年、老年などの意。
17. 蒼蠅驥尾に付して千里を致す
( そうようきびにふしてせんりをいたす )
アオバエが名馬の尾にとまって、千里の先まで行く。凡人が賢人や俊傑の後ろについて、功名をなすにたとえる。
【参考】 「蒼蠅」は、アオバエ。転じて君側のざん者、侫人のたとえ。
18. 草履はき際で仕損じる ( ぞうりはきぎわでしそんじる )
いざ仕事を終えて、帰ろうとするまぎわに、ぼろを出す。もう一息というところで失敗するたとえ。
19. 総領の十五は貧乏の世盛り
( そうりょうのじゅうごはびんぼうのよざかり )
長子が十五くらい、つまり一人前になる前は、暮らしが一番苦しいときであるということ。
20. 総領の甚六 ( そうりょうのじんろく )
長子は大事に育てられるので他の兄弟に比べておっとりとしていておとなしい。
「総領」は家の跡目を継ぐもの。「甚六」は順録のなまりで、総領むすこは愚鈍でも順序として父の世禄を継ぐという意味。
21. 倉廩実ちて礼節を知る ( そうりんみちてれいせつをしる )
生活が安定し余裕ができて初めて礼儀や節度のわきまえるべきを知る。
生活に困っていては、礼儀作法を守れない。
【参考】 「倉廩」は米倉。
22. 葬礼帰りの医者話 ( そうれいかえりのいしゃばなし )
言っても仕方のない、ぐちの話のたとえ。
葬式の帰りに、あの医者にかかればよかった、こういう手当をすればよかったなどと言ってみても、
それはしかたのない話で、すべては手遅れだ。
23. 甑を堕として顧みず ( そうをおとしてかえりみず )
あきらめのよいこと。
漢の孟敏が、こしきを落としたのを振り向きもせずに立ち去ったので、
郭林宗がそのわけを聞くと、すでにわれてしまったものを見て、なんの益があろうかと答えた故事。
【参考】 「甑」は、こしき、せいろう。
24. 束脩 ( そくしゅう )
月謝。授業料。もともとは、入門料。束にした脩(ほし肉)。
昔、入門の時に先生に持参する贈り物とした。
25. 即身成仏 ( そくしんじょうぶつ )
人間がこの肉身のままで、仏になるということ。
つまり、自分の心の外には、仏は存在しないという真言密教独特の教義。
26. 底に底あり ( そこにそこあり )
表向きのほかに深い事情がひそんでいること。裏には裏がある。
27. 俎上の魚 ( そじょうのうお )
俎(まないた)の上の魚。死ぬのを待つより他に道のない運命にあるもの。絶体絶命の境地にあること。
【類句】 俎の鯉
28. 俎上の魚江海に移る ( そじょうのうおこうかいにうつる )
死ぬ直前の危険からのがれて、安全の場所に移ること。
【参考】 「江海」は、川と海。
29. 俎上の肉 ( そじょうのにく )
相手の思い通りになるより仕方のない運命。
まな板の上に載せられた肉は、自由に料理される運命にある、という意味。
【参考】 「俎」は、まな板のこと。
【類句】 俎の鯉
30. 粗相が御意に叶う ( そそうがぎょいにかなう )
時にはしくじりも愛嬌があり、みなの緊張をほぐすことになる、という意味。
31. 育ちは育ち ( そだちはそだち )
育った境遇の影響は、何かにつけて自然に外に現れるものである、ということ。
【類句】 氏より育ち
32. 育ちははずかし ( そだちははずかし )
人の育ってきた素性は、いくら隠そうとしても、自然に言動にあらわれるものだ。