1. 魚のかかるは甘餌による ( うおのかかるはかんじによる )
用心深い動物もうまい餌にだまされて捕らえられる。
人間も利欲に目がくらんで失敗するなの戒め。
2. 魚の釜中に遊ぶが若し ( うおのふちゅうにあそぶがごとし )
やがて煮られてしまう魚が釜の中で遊ぶということから、死の危険が目前に迫っていることをいう。
3. 魚の目に水見えず人の目に空見えず
( うおのめにみずみえずひとのめにそらみえず )
水の中で生活している魚は、水というものの存在に気がつかない。
それと同じように、人間は空気中で空気を吸って生きているが、空気の存在に注意しない。
このようになくてはならぬものでありながら、あまり近い存在なために目に入らないこと。
我が身に関することはかえって気がつかないこと。
4. 魚は江湖に相忘る ( うおはこうこにあいわする )
魚は川や湖水の中で満足していることから、その境遇にわずらうことなく、悠々自適することのたとえ。
5. 魚を争う者は濡る ( うおをあらそうものはぬる )
利を得ようとする者は、苦痛をさけることはできない。
6. 魚を得て筌を忘る ( うおをえてせんをわする )
「筌」は魚を取る竹製のかごのことで、魚を取ってしまえば、筌のことなどはけろりと忘れてしまう。
目的を達してしまえば、それまで手段にしていたものが不要となり、全く顧みられなくなるたとえ。
7. 魚心あれば水心 ( うおごころあればみずごころ )
そちらに魚になる心があれば、こちらもあなたが住みたいような水になる心を持ってもよい。
何事も先方の出方次第で、相手が好意を示してくれれば、こちらも好意を示そう、という意味。
「魚心あれば水心あり」ともいう。
【参考】 本来は、「魚、心あれば、水、心あり」である。
8. 魚腹に葬らる ( ぎょふくにほうむらる )
水死すること。水死して魚の餌となる意。
9. 魚の木に登る如し ( うおのきにのぼるごとし )
魚が木に登るように、とうてい不可能な無謀な試みをたとえていう。
10. 魚の真似する目高 ( ととのまねするめだか )
力量のない者が力量のある者の真似をすること。
11. 魚は殿様に焼かせよ餅は乞食に焼かせよ
( さかなはとのさまにやかせよもちはこじきにやかせよ )
魚を焼くときには、何度もいじると身がくずれるから、殿様のようなおおような人がよい。
餅はたえずひっくり返してこがさないようにしなければならないから、乞食のようにがつがつした人が適任である。
魚と餅の上手な焼き方と、何をするにも適任者をえらぶ必要があるということのたとえ。
【類句】 柿の皮は乞食に剥かせ瓜の皮は大名に剥かせよ
12. 水魚の交わり ( すいぎょのまじわり )
非常に親密な交際。魚は水がなければ生きてゆかれないように、離れることができない非常に親密な間柄。
元々は君臣の関係について言ったが、今では、夫婦・友人など一般に使う。
13. 池魚の殃 ( ちぎょのわざわい )
巻き添えで災難に遭うこと。思いがけない災難。
城の門が火事になった時、消火のために池の水をくみ干したので、池の魚が全部死んだという故事による。
一説に、宝珠を池に投げ込んで亡命した者があり、王が池の水をさらって珠を捜させたが珠は得られず、魚が死んだという。
14. 魯魚の誤り ( ろぎょのあやまり )
文字の誤り。書き誤り。「魯」と「魚」とは字の形が似ているところから、書き誤りやすいということ。
【参考】 「虎虚の誤り」と同じ。
【類句】 魯魚亥豕(がいし)の誤り / 魯魚帝虎(ていこ)の誤り / 焉馬(えんば)の誤り
15. 大魚は小池に棲まず ( たいぎょはしょうちにすまず )
大きな魚は、小さな池にはすまない。
同様に、大人物はつまらぬところで、あくせくとして働かない。
16. 海魚腹から川魚背から ( うみうおはらからかわうおせから )
海の魚は腹からさき、川の魚は背からさくという料理法をいったもの。
焼くときは海魚は身の面から、川魚は皮の面から焼くとよいとされている。
17. 淵に臨みて魚を羨むは退いて網を結ぶに如かず
( ふちにのぞみてうおをうらやむはしりぞいてあみをむすぶにしかず )
淵に面して魚を欲しいと思ってただみているよりは、帰って魚を取る網を編んだほうがよい、ということから、
他人の幸福をうらやむよりは、自分で幸福を得る工夫をすべきである、という教訓。
18. 池魚籠鳥 ( ちぎょろうちょう )
池に飼われている魚や、かごの中の鳥。転じて、不自由な身の上。
「池魚籠鳥に江湖山藪の思いあり」といえば、池の魚やかごの鳥は、大河や湖水、山や沢などの自由の天地にあこがれる。
宮仕えの者が、田園の閑日月にあこがれるにいう。
19. 沈魚落雁 ( ちんぎょらくがん )
美人の容貌(ようぼう)がすぐれてあでやかな形容。美人のあまりの美しさに魚が沈み、雁が見とれて落ちる、という意味。
『荘子(そうじ)』斉物論の語をもじったもので、本来は、魚鳥には美人の美しさはわからず逃げてしまうということ。
20. 雑魚の魚交じり ( ざこのととまじり )
名もない小魚が大きな魚の中に混じっている。地位の低い者が地位の高い人物の中に混じっていることから、
能力のある人たちが大勢いる中に、不相応な人間が混じっていることをいう。
【参考】 「雑魚」はつまらない小魚。「ごまめの魚まじり」ともいう。
21. 水と魚 ( みずとうお )
切っても切れない密接な間柄のたとえ。
【類句】 水魚の交わり
22. 釜中魚を生ず ( ふちゅううおをしょうず )
久しい間飯を炊かないで、釜の中に魚が生じるの意。つまりきわめて貧しいこと。
貧しくて、煮て食べるものが何もないこと。
23. 網代の魚 ( あじろのさかな )
自由を失うこと。捕らわれの身のたとえ。
網代は冬、川の瀬に竹や木を編んで立て、そのはしに簀をあてて下がってきた魚が簀の中に入るようにしたもの。
24. 俎上の魚 ( そじょうのうお )
俎(まないた)の上の魚。死ぬのを待つより他に道のない運命にあるもの。絶体絶命の境地にあること。
【類句】 俎の鯉
25. 俎上の魚江海に移る ( そじょうのうおこうかいにうつる )
死ぬ直前の危険からのがれて、安全の場所に移ること。
【参考】 「江海」は、川と海。
26. 淵中の魚を知る者は不祥なり
( えんちゅうのさかなをしるものはふしょうなり )
秘密を知ることは身のためにならないことがあること。
また、政治を行なうのに重箱のすみまでほじくるように、小さなことまで干渉するやり方はよくない、ということのたとえ。
27. 呑舟の魚 ( どんしゅうのうお )
大人物のたとえ。舟を丸呑(まるの)みにするほどの大きな魚。善悪ともに大人物・大物をいう。
28. 呑舟の魚は枝流に游がず ( どんしゅうのうおはしりゅうにおよがず )
舟を呑むような大魚は、細流には泳がない。大人物はつまらない者たちと交わらないことのたとえ。
高遠な志をいだいている人は小事にこだわらないこと。
29. 呑舟の魚蕩して水を失えば則ち螻蟻に制せらる
( どんしゅうのうおとうしてみずをうしなえばすなわちろうぎにせいせらる )
舟を呑むほどの大魚も水を失えば、けらやありのような微少なものにも自由をおさえられる。
賢者も地位を失えば、つまらぬ者にもはずかしめられること。
「蕩す」は、うごかす、はね出す。「螻蟻」は、けらとありのこと。
30. 釜中の魚 ( ふちゅうのうお )
危険が、目前に迫っている境遇にあるたとえ。
魚がやがて煮られるのも知らないで、釜の中で泳いでいるという意味。
31. 田作りも魚の中 ( たづくりもうおのうち )
小魚でも魚の仲間である。弱小の者でも味方に数えることができる、という意味。
【参考】 「田作り」はごまめともいい、ごく小さな鰯(いわし)を素干しにしたもの。
【類句】 蝙蝠も鳥のうち
32. めだかも魚のうち ( めだかもととのうち )
弱く小さくつまらないような物でも、仲間にはちがいないということ。
【参考】 「雑魚の魚交わり」ともいう。
33. 網呑舟の魚を漏らす ( あみどんしゅうのうおをもらす )
法律は、大罪人を取り逃がすことがあるたとえ。
舟を飲み込むような大きな魚は、網を飛び越えて逃げ出す。
大悪人は、なかなか法律の網にかからない、という意味。
【参考】 呑舟の魚
34. 猿の水練魚の木登り ( さるのすいれんうおのきのぼり )
やることが反対なのをいう。