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「て」からはじまる ことわざ 1

1. 手足を擂粉木にする ( てあしをすりこぎにする )

 手足をすり減らすほどに、一生懸命に奔走することの形容。

2. 庭訓 ( ていきん )

 家庭の教訓。家庭の教育。孔子の子の伯魚が、孔子がいる前の庭を通り過ぎた時、孔子から教えを受けた、という故事による。
 【参考】 室町時代に出来た、初学者の書簡文例集である『庭訓往来』は、書名をこれから取った。

3. 亭主の好きな赤烏帽子 ( ていしゅのすきなあかえぼし )

 烏帽子は黒塗りが普通であるが、亭主の好みとあれば、人から笑われるようなどんな変わったことでも、 家族はこれに調子を合わせねばならない。絶大な権力を握っているものには我意を曲げても従う、ということ。

4. 亭主を尻に敷く ( ていしゅをしりにしく )

 妻が夫をないがしろにして、気ままにふるまうことにいう。

5. 貞女は両夫に見えず ( ていじょはりょうふにまみえず )

 貞操の堅固な女性は、死ぬまで一人の夫しか持たない、という意味。
 【参考】 「貞女は二夫に見えず」ともいう。

6. 泥酔 ( でいすい )

 正体なく酒に酔うこと。「泥」は、どろではなく、骨のない虫の名であるという。

7. 泥中の蓮 ( でいちゅうのはす )

 泥沼の中に生えながら清らかに咲く蓮の花、ということから、 周囲のきたない環境に染まらずに、心の清らかさを保って正しく生きる、というたとえ。

8. 鼎沸 ( ていふつ )

 多くの人々がやかましく騒ぎ立てること。また、議論が沸き立つこと。 「鼎(かなえ)」は青銅で作った、物を煮る大きな釜のことで、鼎の中が煮えたぎるように沸き立つこと。
 【参考】 「鼎の沸くが如し」ともいう。

9. 鼎立 ( ていりつ )

 三つの勢力(三人)が互いに向き合って対立すること。 「鼎(かなえ)」は青銅で作った、物を煮る大きな釜のことで、鼎には、普通、足が三本あるから、三者の対立にたとえる。
 【参考】 三者会談のことを、「鼎談(ていだん)」という。

10. 手書きあれども文書きなし ( てかきあれどもふみかきなし )

 上手に文字を書く人は多いが、巧みに文章を書く人は少ない、という意味。

11. 手が明けば口が明く ( てがあけばくちがあく )

 仕事がなければ、暮らしが立たない。まったくのその日暮らしであること。

12. 手がはいれば足もはいる ( てがはいればあしもはいる )

 一度気を許せば、だんだん深入りされて、ついにはすべて侵されてしまうたとえ。

13. 出かかった小便は止まらない ( でかかったしょうべんはとまらない )

 いったんやり始めたことは、途中でやめようとしてもやめることは出来ない、という意味。

14. 敵国敗れて謀臣亡ぶ ( てきこくやぶれてぼうしんほろぶ )

 敵国のあるあいだは、はかりごとのうまい臣は重用されるが、敵国が滅んでしまうと、厄介な者として失脚する。 人の世の冷酷なことのたとえ。

15. 敵に塩を送る ( てきにしおをおくる )

 ふだんは相争っているライバルが、競合分野でない方面で困っている時、それに援助を与えること。 戦国時代、甲斐の武田信玄が遠江の今川と相模の北条両氏から経済封鎖をされて困っていた時、 戦場では敵対する仲であった越後の上杉謙信が、信玄に塩を送ってこれを助けた、という話に基づく。

16. 敵は本能寺にあり ( てきはほんのうじにあり )

 明智光秀が天正十年(1582年)に備中国の毛利勢を攻めに行くと見せかけて、 京都の本能寺に宿泊中の織田信長を襲ったことから、本当の目的は、別のところにあるということ。

17. 敵を見て矢を矧ぐ ( てきをみてやをはぐ )

 目の前の必要に迫られて、初めて準備に取りかかることをいう。
 【類句】 盗人を見て縄をなう / 戦を見て矢を矧ぐ

18. 手功より目功 ( てこうよりめこう )

 手先の熟練よりも経験によって鑑識眼を養うほうがいいということ。

19. 鉄心石腸 ( てっしんせきちょう )

 きわめて意志が堅いこと。鉄のように堅固な心と石のように堅いはらわた、という意味。
 【類句】 鉄腸石心 / 鉄石心腸

20. 鉄中の錚錚 ( てっちゅうのそうそう )

 普通の人よりは少し優れた人。 「錚錚」は鉄のやや堅く強いもの。鉄の中では少しは堅いものという意味。
 【参考】 注意点として、日本では「錚錚たる人物」と、優れた意に誤用している。

21. 徹頭徹尾 ( てっとうてつび )

 最初から最後まで。どこまでも。頭から尾まで突き通すという意味。
 【例】 「君とは徹頭徹尾意見が合わないようだ」

22. 轍鮒の急 ( てっぷのきゅう )

 危難が目前に迫っているたとえ。 車の轍(車輪が通った跡)に出来た水たまりにいる鮒が、今にも水がなくなって死にそう、という意味。
 【類句】 焦眉の急 / 遠水近火を救わず

23. 鉄砲玉の使い ( てっぽうだまのつかい )

 行ったり来たりで帰ってこない使い。復命しない使い。

24. 鉄は熱いうちに打て ( てつはあついうちにうて )

 人間は純真な精神を失わぬうちに十分に鍛えないと効果が上がらない。 物事は関係者の熱意が薄れないうちに対策を立てないと、あとで問題にされなくなる。 何事にも時期を逃してはならない、という意味。
 【参考】 Strike while the iron is hot. の訳語。

25. 鉄面皮 ( てつめんぴ )

 恥知らずで厚かましいこと。ずうずうしいこと。 面の皮がまるで鉄で出来ているように、恥を恥とも思わない厚かましい人、という意味。

26. 手鍋下げても ( てなべさげても )

 好きな男と夫婦になれるなら、自分で煮炊きをするような貧乏暮らしにも甘んじるという態度。
 【例】 「私は手鍋下げてもなんていう女性を捜している」

27. 手鍋を提げる ( てなべをさげる )

 召使いもおかず、自ら煮炊きをするほどの、質素な、また貧しい生活をする。

28. 手習いは坂に車を押す如し ( てならいはさかにくるまをおすごとし )

 少しでも油断をすると、すぐ後戻りをするから、絶えず努めなければならないということ。

29. 手に汗を握る ( てにあせをにぎる )

 緊張した事態で、一体どうなるのかと、はらはらして見ている様子。
 【参考】 「手に汗握る」とも。
 【例】 「今日のこの試合は、手に汗を握るほどの接戦だ」

30. てにをはが合わない ( てにをはがあわない )

 「てにをは」は助詞を表わし、それが正しく使われていない、という意味から、 話のつじつまが合わない様子。
 【参考】 「てにはが合わない」とも。
 【例】 「てにをはが合っていないから、彼の言っていることが理解できない」
 【類句】 平仄が合わぬ

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