88. 万悪淫を首とし百行考を先とす
( ばんあくいんをはじめとしひゃっこうこうをさきとす )
すべての悪事のもとは、何といっても女色にふけることからはじまり、
よい行いは孝行がまず第一で、それから次第に善行が伸びていくものである。
89. 万死一生を顧みず ( ばんしいっしょうをかえりみず )
決死の覚悟をかためること。
90. 万死に一生を得る ( ばんしにいっしょうをうる )
とても助かる見込みのなかったところを、かろうじて助かることをいう。
万が一にも生きられないような危機を、やっとのことで逃れた。
91. 万卒は得易く一将は得難し
( ばんそつはえやすくいっしょうはえがたし )
兵卒はいくらでも集めることができるが、すぐれた一人の大将は、なかなか得がたい。平凡な人間の多いことをいう。
92. 万能足りて一心足らず ( ばんのうたりていっしんたらず )
あらゆる事に精通しているが、ただ一つ真心が足りない。
93. 万歳の後 ( ばんざいののち )
貴人の死を忌んでいう語。
【参考】 「百歳の後」ともいう。
94. 万事休す ( ばんじきゅうす )
すべて終わりである。転じて、何とも手の施しようがない。
もはやだめである、という意に用いる。
95. 万乗の君 ( ばんじょうのきみ )
天子のこと。「乗」は、兵車一台をいう語。
昔、天子の領内には一万台の兵車を常備したのでいう。後には大諸侯も万乗の兵車を保有するようになった。
96. 千万人と雖も我往かん ( せんまんにんといえどもわれゆかん )
自分自身を反省してやましいことがなければ、たとえ敵が千万人いたとしても、わたしは自分の意見を主張し向かって行こう。
97. 一粒万倍 ( いちりゅうまんばい )
一粒の種をまいておくと、やがて一万倍もの収穫がある。わずかな元手から多くの利益を生じることをいう。
もともと仏教で一つの善根から多くの仏の報いが得られる意。
98. 雲泥万里 ( うんでいばんり )
雲と泥、つまり天と地との間のように非常にかけ離れていること。
【参考】 なまって「うんでんばんてん」という。
【類句】 雲泥の差 / 天地霄壌の差 / 月とスッポン
99. 家書万金に抵る ( かしょばんきんにあたる )
旅先で受け取る家書(わが家からの手紙)は、万金にもまさる値うちがある。
100. 森羅万象 ( しんらばんしょう )
宇宙空間に存在するありとあらゆるもの。
「森羅」は、限りなく並びつらなる、「象」は、形のあるものという意味。
101. 千石万石も米五合 ( せんごくまんごくもこめごごう )
千石万石の知行とりでも、食べる米は一日五合で、普通の人と変わりはない。
欲張っていくら金をためてみても、死んでしまえば、行く先は同じだ。
102. 人間万事金の世の中 ( にんげんばんじかねのよのなか )
人間は金のためにあくせくし、追いつかわれる。
何といっても、この世の中では結局金が物を言うのだ。
103. 人間万事塞翁が馬 ( にんげんばんじさいおうがうま )
人生の禍福・幸不幸は変転して定まりのないものである、というたとえ。
昔、国境の塞近くに住んでいた翁の馬が胡の国に逃げてしまった。その後、数ヶ月たって、その馬が胡国の名馬を連れて帰って来た。
ところが、翁の子が喜んで乗っていると、馬から落ちて足に負傷した。一年後に胡人が攻め込んで着た時、国中の若者は皆戦いに出て戦死したが、
翁の子は足を引きずっていたために、兵役を免れて無事であった、という故事による。
【参考】 「塞翁が馬」ともいう。
曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』に「いにしえの人いわずや、禍福は糾う縄の如し、人間万事往くとして塞翁が馬ならぬはなし」とある。」
【類句】 禍福は糾える縄の如し
104. 知恵は万全の宝 ( ちえはばんぜんのたから )
知恵はその人の一代の宝ではなく、万代までの不朽の宝である。
105. 長者の万灯より貧者の一灯
( ちょうじゃのまんとうよりひんじゃのいっとう )
長者のささげる万の灯明(とうみょう)よりも、貧乏人が精一杯にささげる、たった一つの灯明のほうを仏様はお喜びになる。
金持ちの儀礼的なたくさんのささげ物よりも、貧しい人の真心のこもったささげ物は、たとえわずかでも価値がある、という意味。
【参考】 「貧者の一灯」ともいう。
106. 天地は万物の逆旅 ( てんちはばんぶつのげきりょ )
人生の、短くはかなく憂いの多いことを嘆いた語。「逆旅」は旅人を逆(むか)える所、宿屋。
天地は万物が仮に宿る宿屋のようなもので、人間をはじめ万物は忽(たちま)ちに通り過ぎて行く。
107. 先手は万手 ( せんてはまんて )
機先を制することが、どんな手よりも効果があるということ。出鼻をくじけば天狗も降参する。
108. 人の命は万宝の第一 ( ひとのいのちはばんぽうのだいいち )
人の命より貴いものはない。
109. 鼻糞丸めて万金丹 ( はなくそまるめてまんきんたん )
売薬の効き目のないのを冷やかしたことば。
「万金丹」は胃腸病・解毒その他諸病に効くとされている薬。
また、薬の原料には、案外つまらないものが多いという意味。
110. 千石取れば万石羨む ( せんごくとればまんごくうらやむ )
千石取りになれば、万石取りになりたいというように、人の欲望には限りがないたとえ。
111. 一将功成って万骨枯る ( いっしょうこうなってばんこつかる )
功績は上層の幹部だけのものとなり、その下で働いた多くの人たちの労苦は、顧みられないことを嘆く語。
一人の将軍が功名を立てるかげには、一万人もの兵卒の生命の犠牲があるという意。
112. 一犬虚に吠え万犬これに和す
( いっけんきょにほえばんけんこれにわす )
一匹の犬が何かの影を見てほえると、あたりのたくさんの犬が、その声につられてほえたてる、ということから、
誰かがいい加減なことを言い出すと、多くの人がよく確かめずにそれを言いふらす、ことをいう。
【参考】 「一犬影に吠ゆれば百犬声に吠ゆ」「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」ともいう。
113. 目元千両口元万両 ( めもとせんりょうくちもとまんりょう )
美人の形容で美人は目元が美しく口元が可愛いらしい。
114. 一事が成れば万事成る ( いちじがなればばんじなる )
よいことにはよいことが重なり続くという意味。
115. 鶴は千年亀は万年 ( つるはせんねんかめはまんねん )
鶴と亀とは寿命が長くめでたいものとされ、縁起を祝う言葉に用いられる。
116. 誉人千人悪口万人 ( ほめてせんにんわるくちまんにん )
世の中には、人をほめる者は少なく、悪口をいう者が多いということ。
117. 一夫関に当たれば万夫も開くなし
( いっぷかんにあたればばんぷもひらくなし )
要害堅固な地。険しい地勢のところに関所があるので、一人の男が関所を守れば、
万人の兵が攻めても陥落させることができない。守るにやすく攻めるに難い、極めて険しい地形、という意味。
118. 富は一生の宝智は万代の宝
( とみはいっしょうのたからちはばんだいのたから )
富はその人一代だけの宝で、その人が死ねばそれまでだが、知恵は自分だけにとどまるものではなく、後々の人のためにも長く役立つものである。