35. 鳴く虫は捕らる ( なくむしはとらる )
何か特技があるために、かえって身を誤ることがあるたとえ。
36. 仲人口は半分に聞け ( なこうどぐちははんぶんにきけ )
仲人さんは早く結婚話をまとめようとして、相手のよいことばかり話すので、こういう。
だから半分ぐらいに割引きして聞いて、ちょうどよいものだということ。
37. 仲人は宵の中 ( なこうどはよいのうち )
仲人は、結婚式が済んで務めが終わったら、若夫婦のじゃまにならないうちに帰ったほうがよい。
引き揚げ時を見計ることが必要なことをいう。
38. 仲人は草鞋千足 ( なこうどはわらじせんそく )
仲人の骨折りは大変なものだということ。
昔、仲人が縁談を一つまとめるためには、わらじをたくさん履き切ったといわれた。
39. 情けが仇 ( なさけがあだ )
相手のためを思って情けを掛けたことが、かえって悪い結果を招いてしまうこと。
【参考】 「恩が仇」ともいう。
40. 情けに刃向かう刃なし ( なさけにはむかうやいばなし )
情けの剣に立ち向かって行くことができる剣はない。慈愛を施されては反抗できない、の意。
【類句】 仁者は敵なし
41. 情けは質に置かれず ( なさけはしちにおかれず )
同情してもらっただけではしかたがないこと。
42. 情けは人の為ならず ( なさけはひとのためならず )
情けを人に掛けるのは、その人の為になるだけではない。栄枯盛衰は世の常、いつ他人から情けを受ける立場にならないとも限らない。
人に情けを掛けておけば、いつか巡り巡って自分によい報いが返って来る。
善行は結局は自分にも返って来るものだから、人には親切にせよ、という教え。
【参考】 [注意] 近ごろは、「人に情けを掛けることは、自分または相手の為にならない」と自己中心的に解釈している者がいるという。
伝承のことわざを誤って理解してはならない。
43. 梨の礫 ( なしのつぶて )
「梨」は「無し」にかけて語呂を合わせたもので、投げた礫は返ってこないことから、
便りを出しても返事のないこと。音沙汰のないことをいう。
【例】 「いくら手紙を出しても梨の礫だ」
44. 為せば成る ( なせばなる )
実現が不可能に見えることでも強い意志でやり通せば必ず成就できるものだということ。
米沢(よねざわ)藩主上杉鷹山(うえすぎようざん)が家臣に示した歌に「為せば成る為さねば成らぬ何事も成らぬは人の為さぬなりけり」とある。
45. 鉈を貸して山を伐られる ( なたをかしてやまをきられる )
好意をもってしてやったことがかえって身のためにならないでかえって害になる。
自分で盗人の手助けをしてやったのと同じことになる。
46. 名高い骨高 ( なだかいほねだか )
有名であるのに実際はつまらない物だということ。「骨高」とはごつごつしていること。
47. 夏歌う者は冬泣く ( なつうたうものはふゆなく )
働ける時に遊んでばかりいては、あとで生活にこまるということ。
48. 夏の小袖 ( なつのこそで )
小袖は冬着のこと。季節はずれの役にたたないもののたとえにいう。
49. 夏の虫氷を笑う ( なつのむしこおりをわらう )
夏の虫は氷を知らないからこれを見て笑うということから、
見識が狭く、知恵の足らないものが、自分の知らないことがらをあざけり笑うことのたとえにいう。
50. 夏は日向を行け冬は日陰を行け
( なつはひなたをいけふゆはひかげをいけ )
体を丈夫にするために夏は暖かいところに出るようにし、冬は寒いところにいるようにするのがよい。
51. 七重の膝を八重に折る ( ななえのひざをやえにおる )
下手に出て、できるだけ丁寧に頼んだり謝ったりすること。
【例】 「七重の膝を八重に折って頼んだが、聞き入れてもらえなかった」
52. 七転び八起き ( ななころびやおき )
七たび転んで八たび起きる。人生では成功失敗は激しいことゆえ、たびたびの失敗にも屈せずあくまで奮起して努力せよ。
最後には成功する、という意味。
53. 七度尋ねて人を疑え ( ななたびたずねてひとをうたがえ )
物がなくなった時は、自分で何度もよく捜してみよ。よく捜しもしないで人を疑ってはならない。
54. 七つ七里に憎まれる ( ななつななさとににくまれる )
男の子の七、八歳は腕白ざかりだから、近所近辺の人たちからにくまれ者になる。
55. 七度契りて親子となり三度結びて兄弟と生まる
( ななどちぎりておやことなりさんどむすびてきょうだいとうまる )
親子、兄弟の縁は遠く前世からの深い因縁によって成り立っているということ。
56. 何某より金貸し ( なにがしよりかねかし )
名や格式よりも実利を得るほうがよいというたとえ。何のなにがしなどという由緒ある家柄でも貧乏はしょうがなく、
むしろ金貸してあなどられてもこのほうがよいということ。
57. 何事も縁 ( なにごともえん )
すべては縁で、縁がなければどんな親しい仲でも結ばれない。
58. 何もせずにいる事は悪を為している事なり
( なにもせずにいることはあくをなしていることなり )
人はこの世に生まれてきた以上は自ら進んで善をなさねばならない。
何もしないでいることは人の道に反する悪行である。
59. 難波の葦は伊勢の浜荻 ( なにわのあしはいせのはまおぎ )
難波(今の大阪)で葦といわれる植物は、伊勢(今の三重)では浜荻という。
同じ物でも所によって呼び名がたいそう変わることを言ったもの。
【参考】 『菟玖波集(つくばしゅう)』に「草の名も所によりて変わるなり難波の葦は伊勢の浜荻」とある。
【類句】 所変われば品変わる
60. 名の勝つは恥なり ( なのかつははじなり )
名声が実際の値打ちよりまさっているのは恥ずべきである。
61. 七日通る漆も手に取らねばかぶれぬ
( なのかとおるうるしもてにとらねばかぶれぬ )
かかわりあわなければ害はないこと。
62. 名のない星は宵から出る ( なのないほしはよいからでる )
つまらない者ほど好んで人の先に立ち、目立とうとするものだ。
63. 名は体を表わす ( なはたいをあらわす )
人や物に付けられた名はそのものの実体をよく表わすものだということ。
64. 名は実の賓 ( なはみのひん )
名声は実質に伴ってあらわれるもので、むしろ大切なのは実質であり、名声はなくてもかまわないということ。
65. ナポリを見てから死ね ( なぽりをみてからしね )
風光明媚(ふうこうめいび)なナポリを見ないうちは死ぬのはもったいない。イタリアのナポリの風景の美しさをいう言葉。
【参考】 See Naples and then die. の訳語。
【類句】 日光を見ずして結構と言うな
66. なまくらの大荷物 ( なまくらのおおにもつ )
なまけ者が自分の力にも及ばない大きな仕事をしようとすること。
67. 怠け者の節供働き ( なまけもののせっくばたらき )
平素怠けている者に限って、ほかの人が仕事を休んで祝う節供の日になって、かえって働く。
また、働かなければならないことをいう。
【参考】 「節供働き」「野良の節供働き」ともいう。「節供」は「節句」とも書く。