57. 癖ある馬に能あり ( くせあるうまにのうあり )
一癖ある者には、また一面では、何らかの取り柄があるものである。
【参考】 「癖ある馬に乗りあり」ともいう。
58. 乞食が馬を貰う ( こじきがうまをもらう )
身分不相応な物をもらって有難(ありがた)迷惑をするたとえ。始末に困ること。
59. 南船北馬 ( なんせんほくば )
絶えず諸方を旅行すること。中国の南部は川や湖沼が多いから船が、北部は陸地続きだから馬が第一の交通機関であったところからいう。東奔西走。
60. 牛も千里馬も千里 ( うしもせんりうまもせんり )
巧いかまずいか、遅いか早いかの違いはあっても、行きつくところは結局同じである。
あわてることはないというたとえ。
61. 毛を見て馬を相す ( けをみてうまをそうす )
毛並みのよしあしを見て、馬のよしあしを判断する。
表面だけを見てその実力を見ないで判断することのたとえ。
62. 人喰らい馬にも合口 ( ひとくらいうまにもあいくち )
人にかみつくような荒馬にもなれた人があるように、乱暴で手におえないような人にも、よく気の合う人があるものである。
「ける馬も乗手次第」ということ。
63. 牛と呼び馬と呼ぶ ( うしとよびうまとよぶ )
牛と呼ばれれば牛と思い、馬と呼ばれれば馬と思うように、是非善悪は人にまかせて、自分は一切かかわらないこと。
64. 老いたる馬は道を忘れず ( おいたるうまはみちをわすれず )
年をとった馬は、長年通い慣れた道を忘れてはいない。代々主家に仕えて受けた恩恵を後々までも忘れない、という意味。
また、老婆はいろいろな道を通った経験があり、山道などで迷った時には、老馬を先に立てれば、必ず道に出る。
人生経験豊かな老人は物事の判断を誤らない、という教えにも言う。
65. 腐り縄に馬をつなぐ ( くさりなわにうまをつなぐ )
たよりにならないこと。あぶないこと。とうてい成功しないことなどにいう。
66. 鹿を指して馬となす ( しかをさしてうまとなす )
無理を押し通すこと。
秦(しん)の趙高(ちょうこう)が権力を握ろうとした時、群臣を自分に従わせようとして、鹿を二世皇帝に献上して馬ですと申し上げた。
皇帝は笑って、これは鹿ではないかと群臣に尋ねた。すると趙高にへつらって馬と答えた者が多かったが、中には正しく鹿と答えた者もあった。
趙高は鹿と答えた者を皆殺してしまったので、群臣たちは趙高をひどく恐れたという故事。
67. 牛は牛づれ馬は馬づれ ( うしはうしづれうまはうまづれ )
それ相応の似合わしい相手どうしが一緒になるのが一番よい、という意。
【類句】 似た者夫婦 / 破鍋に綴蓋
68. 闕所の門へ馬つなぐ ( けつしょのもんへうまつなぐ )
とばっちりのかかる危険のあるところへ、自分から近寄ること。
闕所は領地や官を没収されて追放以上の刑に処せられること。
69. 牛首を懸けて馬肉を売る ( ぎゅうしゅをかけてばにくをうる )
牛の頭を店先にかけて実際は馬肉を売ることで、名と実が伴わないこと。
言うことと行なうことが違うこと。命令と実行とが一致しないことのたとえ。
【類句】 羊頭を懸けて狗肉を売る
70. 鞍上人なく鞍下馬なし ( あんじょうひとなくあんかうまなし )
速く巧みに馬を乗り回すさま。乗り手と馬とが一つになり、区別がつかないようす。
乗馬だけに限らず、広く巧みな操作ぶりをたたえるのに用いる。
71. 人間万事塞翁が馬 ( にんげんばんじさいおうがうま )
人生の禍福・幸不幸は変転して定まりのないものである、というたとえ。
昔、国境の塞近くに住んでいた翁の馬が胡の国に逃げてしまった。その後、数ヶ月たって、その馬が胡国の名馬を連れて帰って来た。
ところが、翁の子が喜んで乗っていると、馬から落ちて足に負傷した。一年後に胡人が攻め込んで着た時、国中の若者は皆戦いに出て戦死したが、
翁の子は足を引きずっていたために、兵役を免れて無事であった、という故事による。
【参考】 「塞翁が馬」ともいう。
曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』に「いにしえの人いわずや、禍福は糾う縄の如し、人間万事往くとして塞翁が馬ならぬはなし」とある。」
【類句】 禍福は糾える縄の如し
72. 一匹狂えば千匹の馬も狂う
( いっぴきくるえばせんびきのうまもくるう )
群衆はわずかの暗示にもたやすく動かされること。付和雷同する群集心理をいう。
73. 将を射んとせば先ず馬を射よ ( しょうをいんとせばまずうまをいよ )
敵将を討ち取ろうとするならば、まずその乗っている馬を射て倒せ。
目的物を得るためには、その周囲にあるものから攻めて掛かるのが早道である、という意味。
【参考】 「人を射んとせば先ず馬を射よ」ともいう。
74. 王を擒にせんと思わばその馬を射よ
( おうをとりこにせんとおもわばそのうまをいよ )
王様をとりこにしようと思えば、その乗っている馬を射よ。
頼みにしているものをまず攻めおとすのが成功の道である。
75. 驎驎も老いては駑馬に劣る ( きりんもおいてはどばにおとる )
一日に千里も走るという駿馬も、年を取ると足の遅い駄馬にも負けるようになる、ということから、
優れた人でも、老衰するとその働きが人より劣り、愚鈍な人にも勝ちを譲るようになる、という意味。
【参考】 この「驎驎」は「麒麟」とは別で、一日に千里を走るという駿馬のこと。
76. 騏驥も一躍十歩なる能わず ( ききもいちやくじっぽなるあたわず )
駿馬も一とびが十歩ではない、一歩は一歩である。
賢者でも学問をするには順序を追って進まなければならない。
77. 人中の騏驥 ( じんちゅうのきろ )
多くの人にひいでた天才。ずば抜けた人。
「騏驥」は、一日に千里も走る名馬で、秀才のたとえ。
78. 白駒の隙を過ぐるが如し ( はっくのげきをすぐるがごとし )
年月のたつのが、非常に早いたとえ。
人の一生は、白い馬が隙間(すきま)をちらりと走り過ぎるのが見えるような、きわめて短いものである、という意味。
【類句】 光陰矢の如し / 烏兎匆匆
79. 駒の朝走り ( こまのあさばしり )
馬は朝出で立つときは元気がよいが、だんだん疲れて元気がなくなる。
初めはひどく威勢がよいが、最後まで続かないことのたとえ。
80. 駿馬痴漢を乗せて走る ( しゅんめちかんをのせてはしる )
せっかくの名馬が、つまらぬ男を乗せて走る。
美人が下らぬ男の言いなりになっていることなどに使われる。
とかくこの世はうまくいかないたとえ。
81. 朝には富児の門を扣き暮には肥馬の塵に随う
( あしたにはふじのもんをたたきゆうべにはひばのちりにしたがう )
朝はごきげん伺いに金持ちの家を訪ね、夕方は肥えた馬に乗って外出する権勢のある人の後ろからほこりをあびてお供をする。
富貴権門にとりいろうとお追従するさまをいう。