31. 狐が下手の射る矢を恐る ( きつねがへたのいるやをおそる )
下手な者の射る矢はどこへ飛んでくるかわからないので、賢いキツネもどこに逃げてよいかこまる。
正常な人は相手にできるが、無茶な者は相手にしにくい。下手の射る矢は恐ろしい。
32. 狐その尾を濡らす ( きつねそのおをぬらす )
狐が川を渡るとき、はじめは尾を濡らすまいとして高く巻いているが、だんだん疲れてきて、
しまいには水に濡らしてしまうこと。はじめはやさしいが終わりはむずかしいことのたとえ。
終わりはうまくいかなくて失敗することのたとえ。
33. 狐七化け狸は八化け ( きつねななばけたぬきはやばけ )
狐は七種類に化けるが、狸はさらに化け方がうまい。
上手な上にも上手がある。
34. 狐につままれたよう ( きつねにつままれたよう )
「つままれる」は化かされる意で、どうしてそうなったのか全く事情が分らずに、ただぼんやりしている様子。
35. 狐の嫁入り ( きつねのよめいり )
日が照っているのに、雨がぱらぱら降っている、奇妙な状態をいう。
36. 狐を馬に乗せたよう ( きつねをうまにのせたよう )
いつも動揺していて落ち着かないようす。
また、言うことがとりとめなくて、信用のおけないこと。
37. 狐をもって狸となす ( きつねをもってたぬきとなす )
狐も狸も実際に知らないこと。知識のせまいことのたとえ。
また、見当ちがいをすることのたとえ。
38. 来て見ればさ程でもなし富士の山
( きてみればさほどでもなしふじのやま )
富士山に登ってみれば、下で見るほど荘厳(そうごん)でも美しくもない。
実際にはそれほどでもない、という意味。
39. 木で鼻を括る ( きではなをくくる )
つっけんどんで愛想のないこと。ひどく冷淡に扱う様子。
【例】 「彼に借金を頼んでみたが、木で鼻を括ったような返事だった」
40. 木縄に従えば則ち正し ( きなわにしたがえばすなわちただし )
曲った木でも、墨縄(すみなわ)をあてて削ればまっすぐになる。
人も学ぶことによって行いを正しくすることができる。
41. 木に竹を接ぐ ( きにたけをつぐ )
物事が調和しない。前後のつりあいが悪い。筋道が立たない。
木と竹は似ているが、種類が違うので、木に竹を接ぎ木することはできない、という意味。
42. 機に臨み変に応ず ( きにのぞみへんにおうず )
その場合に応じて適当な処置をとること。
【参考】 臨機応変
43. 木に餅がなる ( きにもちがなる )
非常にうまいこと。話がうますぎることのたとえ。
44. 木に縁りて魚を求む ( きによりてうおをもとむ )
木によじ登って魚を取ろうとすることから、手段を誤っては、求めようとしても得られない、という意味。
【類句】 畑にはまぐり
45. 機に因りて法を説け ( きによりてほうをとけ )
よい機会をとらえて道理を説け。いかにすぐれた道理でも、いつも人の心をとらえるとは限らない。
最も適した機会に話をすれば、受け入れられやすいものだ。
【類句】 人を見て法を説け
46. 杵で頭を剃る ( きねであたまをそる )
できないことのたとえ。
47. 杵であたり杓子であたる ( きねであたりしゃくしであたる )
あたりちらすこと。八つ当たりすること。
48. 昨日の襤褸今日の錦 ( きのうのつづれきょうのにしき )
昨日は襤褸(ぼろ)を身にまとっていた人が、今日は錦で身を包んでいる。
人の運命は変わりやすいものだ、という意味。
【参考】 「今日の襤褸は明日の錦」ともいう。
49. 昨日の友は今日の敵 ( きのうのともはきょうのてき )
今まで親しかった者がたちまち敵となる。
人の離合は変わりやすくあてにならないものだ、という意味。
【参考】 逆に「昨日の敵は今日の友」という語もある。
50. 昨日の花は今日の塵 ( きのうのはなはきょうのちり )
人の世の栄枯盛衰のはかなく変わりやすいこと。
51. 昨日は今日の昔 ( きのうはきょうのむかし )
ただ一日前でも昨日はもはや過去である。過ぎ去った日である。
52. 木登りは木で果てる ( きのぼりはきではてる )
木登りの上手な者は木で死ぬ。
得意な技能のある者は、そのために身を滅ぼすことになる、というたとえ。
【類句】 川だちは川で果てる
53. 木の股から生まれる ( きのまたからうまれる )
人情を解しないもの、男女の情がわからないものを、人の子ではないと言ったことば。
【類句】 木仏金仏石仏
54. 木の実は元へ ( きのみはもとへ )
なった木の実はその木の根元に落ちる。
物事はすべてその起こった元に返る、ということ。
55. 気は心 ( きはこころ )
物を贈る時などに、少しだが真心の一端を表わす意でいう。
56. 義は泰山より重く命は鴻毛より軽し
( ぎはたいざんよりおもくいのちはこうもうよりかるし )
人の守るべき道は泰山よりも重く、それにくらべて命は鴻(おおとり)の羽毛より軽い。
義のために命をすてることは少しもおしくないということ。
57. 驥尾に付す ( きびにふす )
「驥尾」は一日に千里を走るという名馬の尾のことで、自分自身の力では遠くまで飛べない青蠅(あおばえ)も駿馬の尾に取り付けば、
一日に千里を行くことができるという意から、才知のない人がすぐれた先輩のあとにつき従って、
自分だけではできないようなことを成し遂げる。後輩が、優れた先輩の引き立てで出世すること。
特に、自分の仕事などについて謙遜して言うのに用いる。
【参考】 『後漢書(ごかんじょ)』隗囂伝(かいごうでん)に「蒼蠅(そうよう)の飛ぶや、数歩に過ぎず。即(も)し驥尾に託すれば、以て群を絶するを得」とある。
58. 木仏金仏石仏 ( きぶつかなぶついしぼとけ )
心の冷たい人や、にぶい人、融通のきかない人をたとえていう。
【類句】 木の股から生まれる
59. 希望は悲しい時の最上の音楽
( きぼうはかなしいときのさいじょうのおんがく )
希望を持つことは、悲しい時の何よりの慰めである。
60. 君君たらずと雖も臣は臣たらざるべからず
( きみきみたらずといえどもしんはしんたらざるべからず )
主君がたとえ主君としての道理をわきまえなくても、臣下はあくまで臣下としての道を守って、
忠義を尽くさなければならない、という儒教道徳の教え。