1. 牛に馬を乗り換える ( うしにうまをのりかえる )
速い馬をやめて遅い牛に乗り換える。優れているものを捨てて、それよりも劣っているものをとること。
その反対を「牛を馬に乗り換える」という。
2. 牛に引かれて善光寺詣り ( うしにひかれてぜんこうじまいり )
善光寺(長野市にある寺)の近くに住んでいた老婆が、さらしていた布を、隣家の牛が角に引っかけて走っていくのを追って行くうちに、
善光寺に達し、日頃は不信心であったが、それが縁で信仰するようになったという話から、
本心からではなく、他のものに誘われてたまたま善いことをする、という意味。
3. 牛の小便と親の意見 ( うしのしょうべんとおやのいけん )
牛の小便はだらだらと長い。そのくせ肥料としては効き目がない。親の小言も同じで、長いだけで効果はないという意味。
4. 牛の角を蜂がさす ( うしのつのをはちがさす )
蜂が牛の角を刺しても、牛は痛くもなんともない、ということから、なんとも感じないことのたとえ。
【参考】 「鹿の角を蜂がさす」ともいう。
5. 牛も千里馬も千里 ( うしもせんりうまもせんり )
巧いかまずいか、遅いか早いかの違いはあっても、行きつくところは結局同じである。
あわてることはないというたとえ。
6. 牛耳を執る ( ぎゅうじをとる )
団体や党派などの頭となる。仲間の上に立って思うままに指図する。昔、中国の諸侯が集まって同盟を結んだとき、
その同盟の中心となるものが、刀で牛の耳を切り、皆でその血をすすって誓った、という故事による。
【参考】 「牛耳る」とも使う。
【例】 「彼は新しいクラブを作り、そこを牛耳っている」
7. 牛は牛づれ馬は馬づれ ( うしはうしづれうまはうまづれ )
それ相応の似合わしい相手どうしが一緒になるのが一番よい、という意。
【類句】 似た者夫婦 / 破鍋に綴蓋
8. 牛売って牛にならず ( うしうってうしにならず )
牛を売った代金で、代わりの牛を買おうとしても金が足らない。
だれでも自分の物は高く評価しがちで、売りは安く買いは高く、人にもうけられるだけだ。
9. 牛と呼び馬と呼ぶ ( うしとよびうまとよぶ )
牛と呼ばれれば牛と思い、馬と呼ばれれば馬と思うように、是非善悪は人にまかせて、自分は一切かかわらないこと。
10. 牛に対して琴を弾ず ( うしにたいしてことをだんず )
いくら説ききかせてもだめなこと。
愚かなものに立派なよい道理を説いたところでわからない、無益であること。
魯の賢者、公明儀は牛に対して清角の操という琴の名曲を弾いて聞かせたが、牛は草を食って知らぬ顔。
聞かないのではない耳に合わないのである、という故事から出た語。
【類句】 馬の耳に念仏
11. 牛の歩み ( うしのあゆみ )
牛ののろのろした歩きぶりから、進歩・進展のおそいことのたとえ。牛歩。
12. 牛の一散 ( うしのいっさん )
歩みの遅い牛でも、いっさん(一目散)に走り出すことがあるように、常に鈍い愚人が考えもせずにはやり進むこと。
先のことも考えずに、むやみにはやりたつこと。
13. 牛を馬に乗り換える ( うしをうまにのりかえる )
遅い牛をやめて速い馬に乗り換える。都合のよい、すぐれたほうに換える意。
【参考】 「馬を牛に乗り換える」の対。
14. 牛を食らうの気 ( うしをくらうのき )
幼い時からすぐれた気性があること。
虎や豹の子は、小さいうちから大きな牛を食おうとするほどの気概がある。
【参考】 「食牛(しょくぎゅう)の気」ともいう。
15. 牛首を懸けて馬肉を売る ( ぎゅうしゅをかけてばにくをうる )
牛の頭を店先にかけて実際は馬肉を売ることで、名と実が伴わないこと。
言うことと行なうことが違うこと。命令と実行とが一致しないことのたとえ。
【類句】 羊頭を懸けて狗肉を売る
16. 牛驥同早 ( ぎゅうきどうそう )
足の遅い牛と千里を走る駿馬とを同じ飼い葉桶で飼うことで、人間を牛馬なみにそまつに扱うこと。
また、才能のある者を愚かな者と同じに扱うことのたとえ。「早」は飼い葉桶。
17. 呉牛月に喘ぐ ( ごぎゅうつきにあえぐ )
過度に恐れること。極端な恐怖症。「呉牛」は水牛のこと。
南方は暑さがひどいので、そこにいる水牛は暑さを非常に恐れ、月を見ても太陽かと思ってあえぐという。
18. 黄牛に突かれる ( あめうしにつかれる )
温順な牛に突かれる。油断して失敗することをいう。
19. 早牛も淀遅牛も淀 ( はやうしもよどおそうしもよど )
歩みの速い遅いのちがいはあっても行く先は同じだということで、ものごとはあわててもしかたがないということ。
20. 弱牛の尻押し ( よわうしのしりおし )
つまらぬ者に力をかしてもむだだということ。
21. 火牛の計 ( かぎゅうのけい )
牛の角に刃物をつけ、牛の尾に油をそそいだ葦の束を結び、火をつけて敵陣に放つ戦術。
戦国時代に斉の田単(でんたん)が用いて燕軍(えんぐん)に大勝し、わが木曾義仲(きそよしなか)もこれによって、平家の大群を破った。