35. 貧乏に花咲く ( びんぼうにはなさく )
いつまでも貧乏ではなく、そのうちには金持ちになって栄える時が来るものである。
36. 死んで花実が咲くものか ( しんではなみがさくものか )
「花実」は名声と実利のことで、生きているからこそいいこともあるので、死んでしまっては何にもならない。
無駄に命を捨ててはならないということ。
【参考】 「死んで花実がなるものか」ともいう。
37. 遠きは花の香 ( とおきははなのか )
身近なものは、なれてしまうとあまり立派に見えなくなり、遠くに離れたものは、
離れてにおう花の香がゆかしいように、立派に思われるものである。
38. 蕎麦の花も一盛り ( そばのはなもひとさかり )
さして美しいとは思えないソバの花も、その花盛りのころにはそれ相応に美しい。
39. 朝顔の花一時 ( あさがおのはなひととき )
「朝顔」の花は、むくげ(槿花)のこと。
【参考】 槿花一日の栄
40. 老い木に花 ( おいきにはな )
一度衰えたものが再び盛んになることをいう。
【類句】 枯れ木に花
41. 言わぬが花 ( いわぬがはな )
何から何まで口に出して言ってしまわないほうがよい。
露骨に言ってしまっては、実もふたもないので、言わないほうがよい、という意にも使う。
42. 月に叢雲花に風 ( つきにむらくもはなにかぜ )
名月には雲が、桜の花には風が、その観賞のじゃまをする。
この世の中のよいことにはとかく邪魔が入りやすく、思うにまかせないことが多い、という意。
【類句】 好事魔多し
43. 待つうちが花 ( まつうちがはな )
物事は結果を予想して待っているうちが楽しみであって、実際その場になってみるとそれほどでもない、という意味。
【参考】 「待つ間が花」ともいう。
【類句】 ならぬうちが楽しみ
44. 向こう岸の花は美しい ( むこうぎしのはなはうつくしい )
よその庭に咲いている花は美しく見えるものである。
45. 売り物には花を飾れ ( うりものにははなをかざれ )
商品はよく売れるように飾りたてよ。体裁をよくして売るのが商人。
商人には商売気が必要であること。嫁入り娘にもいう。
46. 埋もれ木に花が咲く ( うもれぎにはながさく )
土の中に埋もれてしまった木に、再び花が咲く。
世間から忘れられていた不遇な人が、意外な出世をしたり、幸運に巡り合うことをいう。
47. 根がなくとも花は咲く ( ねがなくともはなはさく )
事実無根であっても、うわさが乱れ飛ぶことをいう。
48. 実のなる木は花から知れる ( みのなるきははなからしれる )
その花を見れば、その木にどんな実がなるかがすぐわかる。
つまり、その人のなすところを見れば、その結果のよしあしがわかるということ。
49. 鬼も十八番茶も出花 ( おにもじゅうはちばんちゃもでばな )
番茶でも最初の一,二杯は香りがよいように、鬼のように醜い顔の娘も、年頃になれば女らしい魅力が出るものだ。
50. 男やもめに蛆がわき女やもめに花が咲く
( おとこやもめにうじがわきおんなやもめにはながさく )
妻に死別または生別した男のひとり者は、身の回りの世話をする人がいないので汚いが、
夫に死別した未亡人は、身ぎれいにしていて男たちにもてはやされる。
51. 親の意見と茄子の花は千に一つもむだはない
( おやのいけんとなすびのはなはせんにひとつもむだはない )
茄子にはむだ花がなく、花が咲くと必ず実がなるように、親が子にする意見には決してむだがない。
【類句】 冷や酒と親の意見は後できく
52. 蓮の台の半座を分かつ ( はすのうてなのはんざをわかつ )
死んでからも一緒に極楽に往生して、同じ蓮の花に仲良く身を託すこと。夫婦仲のよいことをいう。
【類句】 一蓮托生
53. 泥中の蓮 ( でいちゅうのはす )
泥沼の中に生えながら清らかに咲く蓮の花、ということから、
周囲のきたない環境に染まらずに、心の清らかさを保って正しく生きる、というたとえ。
54. 濁りに染まぬ蓮 ( にごりにそまぬはちす )
泥の中に生えても美しい花をつけるはすということで、周囲の汚れた境遇にそまらないで潔白な性格を保つことのたとえ。
55. 桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿 ( さくらきるばかうめきらぬばか )
桜と梅の剪定法を教える言葉。桜は枝や幹を切るとそこから腐りやすいので切ってはいけないが、
梅は切らないとむだな枝が伸びて翌年花が咲かなくなる。
56. 花は桜木人は武士 ( はなはさくらぎひとはぶし )
花の中では桜が最もすぐれているように、士農工商と言われる通り、人の中では武士が最もすぐれている。
【参考】 「花は三吉野人(みよしの)は武士」ともいう。
57. 三日見ぬ間の桜 ( みっかみぬまのさくら )
たった三日間見ない間に、つぼみであった桜は満開になってしまい、満開の桜は散ってしまう。
物事の状態がわずかな間にどんどん変化する。また、この世のはかないことをいう。
58. 明日ありと思う心の仇桜 ( あすありとおもうこころのあだざくら )
桜は明日もまだ美しく咲いているだろうと安心していると、その夜中に強い風が吹いて散ってしまうかもしれない。
人生もそれと同じで、明日にはどうなるかわからないから、頼みにしてはいけない、という世の無常を説いた戒め。
【参考】 下の句は「夜半(よわ)に嵐の吹かぬものかは」。親鸞上人(しんらんしょうにん)の作といわれる和歌。
59. 徒花に実は成らぬ ( あだばなにみはならぬ )
雄花に実は成らない。着実生を欠く計画は成功しない。
見掛けがよくても真の値打ちのないものは、立派な成果を上げることはできない、という意味。
60. 槿花一日の栄 ( きんかいちじつのえい )
人間の栄華のはかないことのたとえ。
「槿花」は、むくげの花。朝咲いて夕方にはしぼむので、はかないものにたとえる。
【参考】 「槿花一朝(いっちょう)の栄」ともいう。
61. 朝顔の花一時 ( あさがおのはなひととき )
「朝顔」の花は、むくげ(槿花)のこと。
【参考】 槿花一日の栄
62. 薔薇に刺あり ( ばらにとげあり )
きれいな花を咲かせる薔薇には、手を傷つける刺がある。
外見が美しいものは、隠れたところに、人を傷つけるものを持っているから用心せよ、という意味。
男性を悩殺する美人などにいう。
63. 薊の花も一盛り ( あざみのはなもひとさかり )
アザミのように人にすかれない花にも、花盛りがあって美しくなる。
容ぼうがよくなくても年ごろになれば魅力がでるもので、人間の運にも必ず盛りがあるものである。
64. 春蘭秋菊ともに廃すべからず
( しゅんらんしゅうきくともにはいすべからず )
両者ともにすぐれていて、どちらも捨てがたいことをいう。
春の蘭と、秋の菊とどちらも優劣をつけがたいことから。
65. 十日の菊六日の菖蒲 ( とおかのきくむいかのあやめ )
五月六日の菖蒲と九月十日の菊。五月五日の端午の節句に飾るべき菖蒲、九月九日重陽の節句に供えるべき菊、
いずれも、その翌日では時期に遅れて役に立たないことをいう。
【参考】 「六日の菖蒲十日の菊」「六菖十菊」ともいう。
66. 立てば芍薬座れば牡丹 ( たてばしゃくやくすわればぼたん )
美しい女性の容姿を形容する言葉。
【参考】 「歩く姿は百合の花」と続けて言う。
67. いずれ菖蒲か杜若 ( いずれあやめかかきつばた )
菖蒲と杜若とは、よく似た花で美しい。美しく並んだ花は、どれが菖蒲でどれが杜若か、区別がつかない。
どちらも良くて選択に迷うたとえ。
68. 倹約とけちは水仙と葱 ( けんやくとけちはすいせんとひともじ )
倹約とけちとはよく似ているが、まったく違ったものである。
それは水仙とねぎが似てはいるがまるで違うのと同じである。
【参考】 「ひともじ」は、ねぎの女房言葉。