1. 形影相弔う ( けいえいあいとむらう )
よるべ(寄る辺・頼りにするところ)がなくあわれなようす。
我が身と影法師とが互いに慰め合うだけで、ほかに同情してくれる者が人もいない、という意味。
【類句】 形影自ら相哀れむ
2. 敬遠 ( けいえん )
表面はうやまっているような態度をして、近づくのを避けること。
一般に意識して避けることをいう。元は、尊敬はするけれども、あまり近寄らない、という意味。
【参考】 「敬して遠ざける」ともいう。
【例】 「敬遠の四球を投げる」
3. 螢火を以て須弥を焼く ( けいかをもってしゅみをやく )
ほたるの火で須弥山のような大きな山を焼いてしまおうということで、微力をもって大きな仕事を企てることのたとえ。
また、力が足りないのに大きな事を企てて骨折ってもそのかいのないことにもいう。
【参考】 須弥山は仏語で、世界の中心にそびえ立つ高山。
4. 桂冠 ( けいかん )
官職を辞めること。「桂」は掛、役人であった時にかぶっていた冠を、脱いで掛けて去るという意味。
5. 傾蓋旧の如し ( けいがいきゅうのごとし )
ちょっと会っただけで、古くからの友人のように打ち解けて語り合うこと。
「傾蓋」は、車の蓋(かさ)を傾けて寄りあって話しあうという意味。
6. 謦咳に接す ( けいがいにせっす )
尊敬する人や貴人に面会することを敬っていう語。
「謦」「咳」も咳払いのことで、その人の咳払いを聞くということで、親しく面会するという意味になる。
【例】 「師の謦咳に接することを無上の光栄に思う」
7. 芸が身を助くるほどの不仕合わせ
( げいがみをたすくるほどのふしあわせ )
道楽をして落ちぶれてしまい、道楽していたころ習い覚えた芸を売り物にして生活している不孝な境遇をいう。
「芸は身を助く」の皮肉の面をうたった句。
8. 鶏群の一鶴 ( けいぐんのいっかく )
沢山の鶏の中に一羽の鶴がいると目立つことから、凡人の中に傑出した人が混じって、きわだって見えるたとえ。
【参考】 「野鶴の鶏群に在るが如し」ともいう。
9. 経験は馬鹿をも賢くする ( けいけんはばかをもかしこくする )
どんな愚かな人間でも、経験を重ねることによってだんだんと賢くなる、ということから、
経験は貴重なものである、という意味。
10. 鶏口となる牛後となる勿れ ( けいこうとなるぎゅうごとなるなかれ )
大きな団体で、しりに付いているよりも、小さな団体でもその長となれという意味で、人に従属するよりも独立した方がよいというたとえ。
11. 傾国 ( けいこく )
絶世の美人の意。「傾国」は「国を傾ける」と読み、国を危うくし滅ぼす、とか、国中の人が残らず出て見るほどのもの、とかの意味もある。
12. けい蛄春秋を知らず ( けいこしゅんじゅうをしらず )
ひぐらしは夏の間だけ生きている短い命だから、春や秋の季節を知らないということから、
生命のきわめて短いことのたとえ。また、世間知らずのたとえ。けいこは夏ぜみ、むぎわらぜみ。ひぐらし。
13. 荊妻 ( けいさい )
自分の妻の謙称。愚妻。後漢の妻の孟光は、質素でいつも荊釵(いばらのかんざし)と布裙(布のもすそ)を用いていた、という故事による。
【例】 「荊妻からもよろしくとのことでございます」
14. 経師は遇い易く人師は遇い難し
( けいしはあいやすくじんしはあいがたし )
経書の字句を解釈して教えてくれる先生はいくらでもあるが、
人のふみ行なうべき道を教え導いてくれる真の先生は得がたいものであるということ。
15. 閨秀 ( けいしゅう )
学問や芸術に特に優れた女性のことをいう。
【参考】 「閨」は女性の部屋。
【例】 「閨秀作家(女流作家のこと)」「閨秀画家(女流画家のこと)」
16. 芸術は長く人生は短し ( げいじゅつはながくじんせいはみじかし )
芸術を完成するには長い年月がかかるが、それに耐えるのには人間の命はあまりにも短い。芸術は永久に残るが人間の命ははかないものだ。
【参考】 ヒポクラテスの言葉。
17. 傾城に誠なし ( けいせいにまことなし )
遊女は多くの客を相手にしなければ商売にならないので、客に言う事はうそばかりであるから注意が必要だ、という意味。
18. 蛍雪 ( けいせつ )
苦労して学問に励む事。秦の車胤(しゃいん)は、貧乏で灯火の油が買えないので蛍を集めてその光で読書し、
孫康(そんこう)は貧しくて油がないので雪明かりで読書し、共に貧乏に負けずに勉強をした、という故事による。
【参考】 「蛍雪の功を積む」と使う。
19. 兄たり難く弟たり難し ( けいたりがたくていたりがたし )
兄とするのもむずかしく、弟とするのもむずかしく、優劣がつけられない、ということから、
どちらがすぐれているか優劣が決められない、という意味。
【類句】 伯仲の間
20. 経諾は必ず信寡し ( けいだくはかならずしんすくなし )
軽々しく引き受けるものは、違約が多いからあまりあてにならないということ。
調子よく承知するのは熟考しないのだから、信義が少ない。
21. 逕庭 ( けいてい )
非常な隔たり。大きな相違。
【参考】 「逕」は「径」とも書き、狭い小径を、「庭」は広い場を意味する。
【例】 「両者の価値には、はなはだしい逕庭がない」
22. 兄弟牆に鬩げども外その侮りを禦ぐ
( けいていかきにせめげどもそとそのあなどりをふせぐ )
兄弟は内輪げんかをしていても、外部から侮辱を受けると心を合わせて防ぎ守る。
【参考】 「牆」は垣根、「鬩」はいさかい争うこと。
23. 兄弟は手足たり ( けいていはてあしたり )
兄弟は自分の手足のようなものであって、かけがえがない。
一度失えば再び得ることができないものである、ということ。
24. 刑は刑無きを期す ( けいはけいなきをきす )
刑罰を定めて悪人を罰するのは、悪人をなくして、刑罰がいらなくなるようにするためである。
法律で刑罰を設けるのは、刑罰のいらない理想の社会を目的としているのだということ。
25. 啓発 ( けいはつ )
無知の人を教え導き、その目を開いて、物事を明らかにさせること。
【参考】 「啓」も「発」も、開いてやる、教える意。
【例】 「この書物からは、多くの事を啓発された」
26. 芸は道によって賢し ( げいはみちによってかしこし )
技芸はその道を専門に修めることによって詳しくなる。
技芸はそれぞれ専門の道にあるものがそのことに最も精通している。
27. 芸は身につく ( げいはみにつく )
財産や地位は身から離れることがあるが、身についた芸は身から離れることはないということ。
28. 芸は身の仇 ( げいはみのあだ )
習いおぼえた芸があるためにかえって身を誤ることがある。
芸事に熱中して仕事も忘れ、落ちぶれることがある。
29. 芸は身を助ける ( げいはみをたすける )
趣味で身につけた芸が、暮らしに困ったときには生活を支える手段となる、という意味。
【参考】 「芸が身を助ける」「芸が身を助けるほどの不幸せ」ともいう。
【例】 「彼女は仕事を辞めた後、芸は身を助けるで、趣味でやっていた陶芸で生計を立てることが出来た」
30. 桂馬の高上がり ( けいまのたかあがり )
将棋の駒の桂馬は、駒を一つ飛び越して斜め前に進む事ができ、独特な働きもするかわり、
真正面にも横や後ろへも動けないので、あまり前に出すぎると頭に歩を打たれてむざむざ死んでしまうことも多い。
身分不相応な地位に上がったために、もろくも失敗することがある、という意味。
【参考】 「桂馬の高飛び歩の餌食」ともいう。
31. 鶏鳴狗盗 ( けいめいくとう )
いやしくつまらない者。鶏の鳴きまねをする人と、犬のようにこそこそと人の物を盗む人。
戦国時代に斉の孟嘗君(もうしょうくん)が、秦の昭王のとりことなった時、
すでに王に贈ってあった狐の白裘(はくきゅう。狐の腋の白毛皮で作ったかわごろも)を、
狗のまねをする食客に盗み出させて、王の寵姫(ちょうき)に献じて釈放され、逃げて函谷関(かんこくかん)に来たが、
深夜のため関は閉ざされていて、鶏が鳴かねば門は開かれなかった。従者の中に鶏の鳴きまねの上手な者がおり、
鶏の鳴きまねをすると、あたりの鶏どもが鳴き出したので、関門が開かれ、通過して脱出することが出来た、という故事。
32. 鶏肋 ( けいろく )
大して役には立たないが、捨てるには惜しいもの。
鶏のあばらの骨は食べるほどの肉はないが、捨ててしまうには惜しい気がする、ということ。